とある星の力を使いし者
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第49話
どこにでもいる平凡な高校生、麻生恭介はいつもの様に窓の外を見ながら授業を受けていた。
最近は魔術師がらみの事件に科学側の事件に頻繁に巻き込まれるなど、普通の高校生ならまず体験しない経験をしながら生活を送っている。
「はぁ~~~~・・・・・」
盛大に疲れたような溜息を吐く、麻生。
前に地下街の事件の後、愛穂から電話がかかりちょっと家に来い、と殺気の籠った声で呼び出しを受けた。
そこから約三時間かけて説教をされるなど散々な目に遭った。
その事を思い出し、もう一度大きなため息を吐く。
「こら、麻生恭介!!
大覇星祭の事について色々話さなければならないのに何だその溜息は!!」
聞き覚えのある声がしたと思い視線を前に向けると、明らかに怒っていますよオーラを出しながら教壇に立っているのは吹寄制理だ。
麻生はいつの間にか授業は終わり、ホームルームになっている事に気がついた。
「大体、貴様は参加する競技は最低限しか参加しないし、こういった話し合いも全く参加しない。
お前にやる気はあるのか、やる気は!!」
「全くないです。」
「即答するな!!」
「ああ~、お前は怒りすぎだ。
ほら、牛乳持っているからこれ飲んでカルシウムでも摂取しろ。
何ならじゃこもあるが、こっちにするか?」
ぶちぶち、と明らかに聞こえてはいけない音が周りの生徒達の耳に聞こえるが麻生は気にしない。
このクラスで制理を平気で本気で怒らせるのは上条、青髪、土御門、麻生、この四人くらいだ。
次の瞬間、制理の怒りの叫びが教室中に響き渡った。
「あ~・・・疲れた・・・」
疲れた表情を浮かべながら麻生と上条は二人で寮に帰っていた。
「いや、さっきのは確実に恭介が悪いだろ。」
「あそこまで怒るとは思ってもみなかったけどな。
それとだ、疲れているのはお前の不幸に巻き込まれたというのもあるがな。」
うっ、上条は疲れたような顔をしながら頭をかきながらあはは、と苦笑いを浮かべている。
あの後、クラスの全員(麻生を除く)が麻生に襲いかからんとする制理を、何とかなだめる事が出来たが麻生はその後、小萌先生に軽くお説教を受けたのだ。
その後は大覇星祭の準備をする事になっている。
準備と言っても見物人用のテントを組み立てるだけなのだが、組み立てた所で愛穂がやってきて。
「ごっめーん♪
やっぱテントいらないじゃん。」
と苦笑いで両手を合わせられて謝られ、テントを片付けた所で小萌先生がやってきて。
「あーっ!何やっているんですか麻生ちゃん、上条ちゃん!
テントはやっぱりいるって連絡入りませんでしたかー?」
と麻生は二度目の小萌先生のお怒りを受け、能力を使って大覇星祭を無くしてやろうかと本気で考えたいしていた。
「何より、大覇星祭といった祭りみたいな馬鹿騒ぎは嫌いなんだよ。」
歩きながら麻生は言う。
大覇星祭とは学園都市に所属する全学校が合同で行う超大規模な体育祭。
要は異能者が繰り広げる大運動会のようなものだ。
その為、燃える魔球や凍る魔球、消える魔球はザラであり、外部からの注目度も高い。
生徒の関係者やただの一般客も開催中は学園都市に入る事ができ、応援・観戦等で開放区域を自由に移動する事ができる。
前に久しぶりに麻生の親から電話がかかってきて大覇星祭の日にちに合わせて休みを取ってあるからな、と電話を貰った。
親が見に来るので自分の種目は必ず出ないといけなくなる。
さぼる事もできなくなり今から大覇星祭の事を考え軽く憂鬱になる麻生。
「俺も能力者同士が本気でやり合うイベントに何てできれば参加したくないよ。」
上条も大覇星祭の事を考えていたのかさらに疲れた表情を浮かべる。
上条の右手、幻想殺しはあらゆる異能を打ち消す事が出来る。
だが、これ一つで何十人もの能力者が入り乱れる激戦区へ突撃したいとは思えない。
二人揃って同じ表情を浮かべながら学生寮の入り口辺りにきた時、不意に頭上から女の子の声が聞こえた。
「あー。
かっ、上条当麻、あ、麻生恭介ー」
「「ん?」」
二人が顔を上げると七階通路のある金属の手すりから、土御門舞夏が上半身を乗り出して右手を振っていた。
いつもは清掃ロボットの上に正座した状態なので、ものすごくバランスが危うく見える。
左手はモップを握り、それで床を突いて前進しようとしている清掃ロボットの動きを封じているらしい。
「よ、よよ用事があったの急用があったの。
というかお前は携帯電話の電源切ってるだろー。」
上条は言われてポケットの中の携帯電話を取り出すと、確かに電源が切れている。
電源を入れて、画面を確かめると土御門舞夏からばんばんメールが送られてきていた。
ちなみに舞夏は麻生の携帯番号は知らない。
というより麻生が教えていないだけだ。
舞夏の顔を見ると、少しだけ青ざめているようにも見える。
上条は急いでエレベーターに乗り込み、対する麻生はいつも通り、歩きながらエレベーターに乗り込む。
七階に到着すると、舞夏はモップの戒めを開放した。
清掃ロボットはのろのろした動きでエレベーターへと近づいてくる。
いつもインデックスと一緒にいるはずの三毛猫が、何故か通路に座っていて、その口にはインデックスの持ち物である0円携帯電話が咥えられていた。
舞夏は二人の前に到着すると再びモップを前方に突き入れて固定する。
「緊急事態だ緊急事態だぞ。
銀髪シスターが何者かにさらわれちゃったー。」
「は?」
上条は思わず声をだし、麻生はまたか、と呟いた。
しかし、インデックスは一〇万三〇〇〇冊を記憶している魔道書図書館だ。
麻生は知らないが八月三一日に誘拐騒ぎが起きている。
「ちょっと待て。
何がどうなったか、順番に説明してくんないか?」
舞夏の話によると学生寮に「研修」にやってきたのは二時間前。
そこで掃除をしていた所を、七階通路で暇そうにしていたインデックスと出会い、世間話をしていたらしい。
その世間話に割り込むように、突然インデックスの背後から誰かが彼女の口を塞いで、連れ去ってしまったとか。
「去り際に、誘拐犯が封筒を渡してきたのー。
そこに色々書いてあって・・・・」
ダイレクトメールに使われたような、横に細長い封筒を舞夏は手渡してきた。
彼女の声は震えており、それは単なる恐怖だけではなく、自分が何もできなかった事に対しての負い目があるのだろう。
「いや、闇雲に動いて下手に状況悪化させるよりずっとマシだよ。」
その言葉は舞夏を安心させるものだったが、彼女は余計に困ったような表情を浮かべる。
「そんで、その馬鹿野郎はどんな感じのヤツだった?」
舞夏はちょっと考えるように頭上を見上げてから言う。
「まず身長は一八〇センチを超えててなー、白人さんっぽかったぞ。
でも、日本語は上手だったし、見た目だけでどこの国の人かまでは分からなかった。」
「ふんふん。」
「それで神父さんみたいな格好でなー」
「ふん?」
「神父のくせに香水臭くて、肩まである髪が真っ赤に染まってて、両手の十本指には銀の指輪がごてごて付いてて、右目の下にバーコードの刺青が入ってて、くわえ煙草で耳にはピアスが満載だったー。」
「おい、すっごい見覚えあるぞ、その腐れイギリス神父。」
舞夏は首を傾げ、麻生は強で何回ついたか分からないため息を吐く。
上条は封筒を調べると、中には一枚の便箋が入っている。
そこには、定規を使って書いたようなシャーペンの字でこう書かれていた。
『上条当麻 麻生恭介 彼女の命が惜しくば 学園都市の外にある 廃劇場「薄明座」跡地まで やってこい』
「今時、定規で筆跡隠しかよ。」
「あいつにはこれくらいの事しか思い浮かばなかったんだろう。
でも、ステイルが定規を使ってこれを書いている所を想像するとかなり笑えるな。」
麻生はそう言っていたがこの学園都市にはこの程度ではすぐに身元が割れてしまう。
上条は笑いを通り越して少し呆れてしまう。
舞夏の話をまとめると、インデックスを連れ去ったのはステイル=マグヌスだ。
彼がインデックスの命を脅かす事など絶対にない筈だ。
むしろ、彼女の為なら敵地だろうが要塞だろうが迷わず突撃するような人間だ。
上条の緊張感が一気に削ぎ落とされた。
「あー、大丈夫だぞ舞夏。
多分この犯人は俺やインデックスや恭介の知り合いだ。
だから、心配しなくても良いぞ。」
封筒の中には学園都市の外出許可書と関連書類だった。
これがあれば堂々と正面から学園都市の外へ出られる。
「全くあの神父は一体何を考えているんだろうな、恭介。」
「さぁな、それでお前は行くのか?」
「まぁな、便箋とは違い妙に手の込んだ準備だし、インデックスもいる事だしな。」
「そうか、なら一人で頑張ってくれ。」
「は?」
上条は本日二度目となる声を出した。
「便箋には必ず二人で来いとか、時間指定されている訳でもない。
これはあいつのミスなのか、それとも意図的にしたのか分からないが合流するのは遅れてからでも大丈夫だろ。」
麻生は眠たそうな表情を浮かべながら欠伸をする。
あまりに呑気な声で話すので上条は少し慌てながら説得する。
「でもよ、これにはお前の名前も書いてあっただし行かないとまずいだろ。」
「だったらその要件が終わった辺りに顔を出すからそれでいいだろう。」
「全然良くねぇよ!!」
「ああ~眠いんだから叫ぶな。
そんな訳だから後は任せたぞ。」
そう言ってもう一度欠伸をしながら部屋へと向かう。
後ろで上条が何か言っていたが気にせずに自分の部屋に入りベットに寝転がった。
エレベーターの前で上条は呆然と立ち尽くしていた。
「だ、大丈夫なのかー?」
舞夏が心配したような表情を浮かべながら聞いてくる。
上条は何とか笑おうとしたがうまく笑えず結果、苦笑いのような笑みを浮かべながら言った。
「だ、大丈夫・・・・じゃないかもしれない。」
上条から出た言葉は酷く不安な言葉だった。
ピンポーン、と麻生の部屋のインターホンが鳴った。
その音で麻生は目が覚める。
麻生はどうせ上条だろうと思い無視するが何度もインターホンが鳴り響き、うっとおしそうな表情を浮かべ扉へと向かう。
そして、扉を開けるとそこに上条はいなかった。
「あの、少しよろしいですか?」
そこには長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズ、 腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をした女性、神裂火織が立っていた。
後書き
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