スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第十一話 炸裂!!ライジング=メテオ
第十一話 炸裂!!ライジング=メテオ
トウマは命に別状はなかった。怪我も酷くはなかった。だが念の為一日は安静にしていた。
そんな彼のところにミナキが来た。そうしてまず彼に謝罪するのだった。
「あの、私・・・・・・」
「いいさ」
だがトウマはそんな彼女を許した。
「俺が未熟なだけだしな」
「いえ、それは違うわ」
ミナキはそれをすぐに否定した。
「貴方が悪いんじゃないの。全ては私が」
「ミナキがって」
「お父様を。盲信していたわ」
トウマから一旦目を背けて言った。
「それでシステムLIOHを」
「あれは一体何なんだ?」
トウマは以前から気になっていることを問うた。
「話は聞いたけれど使ったら駄目なのか」
「ええ、絶対に」
話がわかっているなら早かった。ミナキはすぐにそうトウマに告げた。
「これ以上使えば貴方を」
「殺してしまうのか」
「そう。だからもうあれは封印するわ」
俯いていたが毅然とした顔と声であった。
「もう。だから雷鳳も」
「いや」
しかしここでトウマは言うのだった。
「ミナキ、待ってくれ」
「えっ!?」
「雷鳳を封印するのは待ってくれ」
そう彼女に告げるのだった。
「えっ、けれど」
「俺はあれを使いこなしてみせる」
「駄目よ、システムLIOHは」
もう彼女にそれを使えと言うことはできなかった。そのせいで大変なことになりかねなかったからだ。自分のそれまでの思いやりのなさも含めて激しい後悔の中にあったからだ。
「もう絶対に」
「違うさ」
トウマはそれは否定した。
「俺はシステムLIOHに頼らない」
「使わないの!?」
「そうさ、あれなしで戦ってみせる」
毅然として言うのだった。
「絶対に」
「本気なのね」
「俺は嘘なんか言わないっ」
その言葉こそが偽らざる彼の本音であった。
「例え何があっても」
「そう。決意は強いのね」
ミナキも彼の決意を知った。そしてそれが止められないことも。
「ああ。それでいいな?」
「わかったわ」
ミナキはトウマのその言葉にこくりと頷いた。そうするしかなかった。
「それじゃあ。けれど」
それでも引き下がれない一点はあった。
「システムLIOHは」
「封印するのか」
「あれだけはもう」
俯いたまままた言った。
「使ってはいけないわ。あれは悪魔のシステムだから」
「悪魔のか」
「お父様は悪魔を作り出してしまったのよ」
悲しみと共に言うのだった。
「自分を認めさせる為に。それがシステムLIOHだったから」
「ミナキ・・・・・・」
「私は何もわかっていなかったわ。何もわかっていなくて貴方に酷いことも言ったし」
「それはいいさ」
そんなことを気にするトウマではなかった。うっすらと笑ってさえみせた。
「俺は気にしていないから」
「有り難う・・・・・・」
「それよりミナキ」
トウマはまた彼女に告げた。
「何?」
「俺はまた雷鳳に乗る」
それをまた言うのだった。
「その時に俺はやってみせるから。見ていてくれよ」
「貴方をなのね」
「ああ」
声がはっきりと明るくなっていた。
「絶対にな。頼むぜ」
「ええ」
微かに微笑んでトウマの言葉に応えた。まだ俯いているが。
「わかったわ。それじゃあ」
「やってやるからな」
トウマは復活した。そうして次の戦いに向けてまた特訓に入った。それは以前のものよりもさらに激しく厳しいものだった。だが彼は音を上げはしなかった。
「頑張るよな」
ジュドー達はそんな彼を見て言うのだった。自室で酒を飲みながら。
「トウマさんも。あんなことがあってすぐにな」
「そうよね」
ジュドーのその言葉にまずルーが頷いた。
「それがミナキさんにも伝わったみたいだし」
「あれでわからないとどうかしてるよ」
モンドはそう言うのだった。
「あの時だって酷いと思ったよ」
「まったくだぜ」
ビーチャはモンドのその言葉に頷いた。
「正直何様だってな」
「それはちょっと言い過ぎじゃないかな」
イーノはビール缶片手に首を捻る。
「幾ら何でも」
「あたしはそうは思わないけれどね」
しかしエルは彼とは違う意見であった。
「あの時は殴ってやろうと思ったし」
「ああ、そっちもかよ」
ディアッカがエルの言葉を聞いて言う。彼等も同席しているのだ。
「実は俺もな」
「あれは正直あんまりでしたから」
ニコルも顔を顰めさせていた。
「僕も止めるつもりはありませんでした、はい」
「って御前もかよ」
「厳しいねそりゃ」
「どうにもこうにも」
ケーン、タップ、ライトの三人はニコルのその言葉に突っ込みを入れる。
「これはなあ」
「イザークとかならな」
「不思議じゃないんだが」
「無論俺もそのつもりだった」
イザークもそれを隠すつもりはなかった。
「実際に飛び出ようとした」
「で、何でそれができなかったの?」
プルがそのイザークに問う。
「イザークは」
「私達が止めました」
「流石にそれはまずいですから」
フィリスとエルフィが出て来た。二人は干し肉とビールを楽しんでいる。
「他にもジャックさんも」
「大変でしたよ」
「だってさあ」
ジャックは自分の名前が出て来たところで言う。
「あそこまで思いやりのない言葉聞いたら俺だって」
「気持ちはわかる」
プルツーは彼と同じ意見であった。
「酷過ぎたからな」
「全くだ」
ミゲルは缶のカクテルを飲みながらプルツーのその言葉に頷く。
「あそこまで言うこともすることもなかった」
「そうだな」
それにハイネが同意する。
「あのままトウマが降りていれば非常に後味の悪いことになっていた」
「そうよねえ」
アムはそれを聞いて真剣に顔を曇らせた。
「本当にトウマさん残ってよかったわ」
「トウマさんがいないとやっぱり何か違うんだよな」
キャオの言葉は真理であった。
「戦力的にもそうだけれど何か雰囲気がな」
「その通りだ」
レッシィはそのキャオの言葉に同意する。
「一人いないと全然違う」
「ミナキさんの為にもならなかった」
ダバはやはりかなり冷静であった。
「だから。あれでよかったんだ」
「それでもあれよ」
エマが一言入れる。
「システムLIOHは封印されることになったわ」
「えっ、それじゃあ」
「雷鳳は」
「トウマさんはそのまま戦うつもりよ」
ファが一同に告げる。タイツなので三角に座っていても見えない。
「雷鳳でね」
「けれどそれじゃあ」
「ねえ」
皆それで戦えるのか不安になっていた。
「無理なんじゃ」
「それでもトウマさんはそれを選んだのよ」
今度はフォウが皆に告げた。
「あえてね」
「そうか」
カガリはそれを聞いて俯いた。
「トウマは私が思ったよりずっと強いんだな」
「ひょっとしたらカガリ様と同じ位?」
「そうかも」
「そうよねえ」
アサギとマユリ、ジュリはカガリの横で言う。
「カガリ様も色々あったけれど」
「何だかんだで」
「元気に今もやっておられるし」
「そういえばあれだよな」
バーニィがここで言う。
「カガリはトウマが好きだよね」
「正直嫌いじゃない」
自分でもそれを認めるのだった。
「あの真っ正直さと熱さがな」
「似てるわよね」
不意にクリスがカガリに告げた。
「貴女とトウマ君」
「そうかな」
「そういえばそうよね」
それにセシリーが頷く。
「性格がかなり」
「いい意味でね」
シーブックも恋人の言葉に同意する。
「似てるよな、確かに」
「そうか。ならいいが」
「そこでシン」
ルナマリアはすかさずシンに釘を刺す。
「ここで余計なことは言わないのよ」
「俺かよ」
名指しされてビール片手に不満な顔を見せる。
「ったくよお、俺だってトウマさん好きだしそんなことは言わねえよ」
「好きなんだ」
メイリンはそれを聞いて意外といった顔を見せた。
「それはまた」
「いや、驚くところじゃない」
レイがメイリンに突っ込みを入れた。
「それはシンとカガリを見ればわかる」
「おいっ」
「ちょっと待てっ」
これにはすぐに当人達から速攻で突込みが入った。
「俺はこいつだけはな」
「私だってこいつだけはな」
「はいはい、離れて」
そんな二人をフレイが宥める。
「全く。仲がいいんだから」
「仲がいいだと!?」
「おいフレイ、私とこいつはだな」
「仲いいじゃない」
「そうだな」
それにヒメとヒギンスが頷く。
「どう見たってねえ」
「喧嘩する程だな」
「くっ、誰がこいつと!」
「こいつなんかと!」
「いいから二人共」
勇も二人の間に入る。
「今は大人しくしてくれ。いいな」
「・・・・・・わかった」
「それじゃあ」
「とにかくだ」
今度はカミーユが口を開いた。
「これからトウマさんがどうするかだな」
「そうね」
それにカナンが頷く。
「トウマ君なら大丈夫でしょうけれど」
「俺もそう思うがね。けれどな」
ビルギットがここで難しい顔を見せた。
「何か?」
「いや、どうするのかってな」
そこまでは彼にもわからなかったのだ。
「そこがわからねえだろ」
「そうね」
それにアンナマリーが応える。
「きっと何とかするでしょうけれど」
「努力と根性かね」
トッドは幾分シニカルでクールに言うのだった。
「ここは」
「何か引っ掛かる言い方だけれどそれしかないんじゃない?」
キースの意見はこうであった。
「やっぱりここは」
「その通りだ。けれどトウマさんなら」
「やってくれるって?」
「俺はそう思う」
ショウはチャムにそう答えた。
「きっとな」
「ここは信じるしかないみたいね」
マーベルは大人の意見だった。
「彼を」
「そうですね」
リムルがマーベルのその言葉に頷いた。
「トウマさんを」
「俺達ができることはバックアップだけだ」
ニーは冷静に全てを見て述べた。
「彼をな」
「それしかないな」
ギャブレーがそれを聞いて述べる。
「やはり彼自身がな」
「うむ。では我々は」
バーンも続く。
「彼を見守るとするか」
結論が出た。彼等はこうしてトウマを見守りいざとなればフォローすることにした。こうして次の戦いに備え剣を研ぐのであった。
戦いはすぐにやって来た。場所は仙台、敵は百鬼帝国と邪魔大王国の連合軍であった。
「おいおい、またか」
ヒューゴはその報告を聞いて言うのだった。
「同じ顔触れか」
「まあ仕方ないじゃない」
アクアは彼にそう言葉を返す。
「彼等の行動は今活発だし」
「よく戦力が続くな」
ヒューゴはアクアの言葉を聞いて言った。
「あれだけ派手に負け続けているのにな」
「そうね。そろそろかしら」
アクアの目が冷静なものになる。戦略家の目になっていた。
「戦力が切れるのも」
「そうなのか?」
「ええ。彼等の戦力だって無限じゃないし」
これは自明の理であった。そんな勢力なぞ存在し得ない。
「かなり敗北が続いているのは事実だしね。そろそろ」
「そうか」
「そうよ。だからそろそろ」
「じゃあ次の戦いは大きいか」
「そう思うわ」
アクアはまた冷静に述べるのだった。
「今度負ければ彼等は暫く派手な軍事行動はできないわね」
「わかった。じゃあこっちは派手にやるか」
「あんたはいつもじゃない」
アクアはくすりと笑ってヒューゴに告げた。
「いつも大暴れしてるんじゃないの?」
「それが俺のやり方だ」
ヒューゴもそれを否定しない。
「戦うからにはな。徹底的にやる」
「そう。じゃあ後ろは任せて」
「ああ、頼む」
関係がかなり親密になっている二人であった。今までの激しい戦いの中でそうなっていったのである。
ロンド=ベルは仙台に進む。シーラとエレはその中で互いに話をしていた。
「感じますね」
「はい」
二人は何かを感じて怪訝な顔になっていた。
「オーラが」
「迷うオーラです」
エレがシーラに答える。
「それも中から」
「ですがシーラ様」
「はい」
「感じませんか?」
またエレは言う。
「このオーラは決して弱いものではなく」
「感じます。強いものです」
シーラもエレに答える。
「強く。何かを掴み取ろうとするオーラ」
「迷いの中でも」
「しかもその悩みを見せようとはしていません」
シーラはまた言うのだった。
「ですからきっと」
「今回の戦いで見出すでしょう」
エレもそれをはっきりと見ていた。
「彼ならば」
「左様ですか」
エイブがそれを聞いて言うのだった。
「彼はやりますか」
「はい、必ず」
エレは強い声でそのエイブに答えた。
「私は信じています」
「私もです」
シーラはカワッセに言うのだった。
「彼はきっと果たすでしょう」
「成程。それでは彼もまた」
エイブは自身の女王から話を聞いて言うのだった。
「一人の立派な戦士であると」
「その通りです。今は小さな光ですが」
シーラは光に例えてきた。
「やがて大きな光になるでしょう。ショウ=ザマと同じく」
「左様ですか」
「今は光が必要なのです」
シーラはこうも言う。
「多くの光が」
「光、ですか」
「これまでにない戦いが迫っています」
シーラはまた言った。
「恐ろしい戦いが。それに勝利を収める為には」
「より多くの光がですか」
「そうです。多くの光が」
シーラの目は今見えているものを見てはいなかった。遠くを見ている目であった。
「未来の為に」
「わかりました。それでは」
「彼を見守りましょう」
皆と同じ言葉であった。
「その光の輝きを」
「わかりました。それでは」
「はい」
シーラ達も光を見ていた。その光はまだ小さい。しかし確実にその輝きを増そうとしていた。それが少しずつ見えようともしていた。
仙台に着いた。するとすぐに敵が現われた。
「出たな」
グローバルは彼等の姿を認めて声をあげた。
「それもかなりの数が」
「はい」
クローディアがそれに応える。
「敵の数、およそ三千です」
「何っ!?」
それを聞いてイサムが思わず声をあげた。
「そんなにいるのかよ」
「何を驚く」
だがそんな彼にガルドが言う。
「今までこの程度の数は何度もあった」
「それはそうだけれどよ」
一応は彼の言葉に応える。
「それでも。ここで三千か」
「予想通りだ」
ガルドはあくまで冷静なままであった。
「予想通りですか」
「そうだ。これが今の奴等の全力だ」
ガルドはまた言った。
「これを倒せば」
「当分百鬼帝国も邪魔大王国も大人しくなるってか」
「だから今ここにこれだけ出してきたんですか」
レトラーデもガルドに問うてきた。
「仙台に」
「だとするとかなりの精鋭か」
霧生はそう見てきた。
「ここにいるのは」
「そうみたいね」
ミスティが答えた。
「エネルギー反応も大きいし。これは」
「市外に出よう」
グローバルはそう判断を下してきた。
「この数を相手に戦えば市街、市民への損害は馬鹿にならない」
「そうですね」
その言葉に未沙が応える。
「ここはそれが妥当かと」
「よし。じゃあやるか」
ヒビキがまず動いた。
「市外に出て」
「そこで派手に暴れるぜ」
ネックスも言う。
「いいな、シルビー」
「ええ」
シルビーも頷く。まずはバルキリーが敵を戦場に誘導する。そうしてロンド=ベルと百鬼帝国、邪魔大王国の軍は仙台郊外で激突したのだった。
まずは両軍は激しい戦闘に入った。それも正面からであった。
「そらよっ!」
カムジンはグラージの機動力を活かして左右に舞いながら攻撃を浴びせる。
「どれだけ来てもなあっ!質が違うんだよ!」
頭部と左右の手からの砲撃がかなり強力だった。一機また一機と敵を屠っていく。
「それをわからせてやるぜ!」
「おのれ!」
指揮官はフローラであった。ロンド=ベルの猛攻にまずは歯噛みする。
「またしても。しかし」
彼女はここで歯噛みしながらも笑うのだった。
「こちらとて策がある。出でよ!」
不意に叫んだ。
「今が機だ。左右から押し潰せ!」
「むっ!」
ロンド=ベルの左右から新手が出た。それは正面の戦力と同程度あった。
「左右からか!」
「安心しろ!」
動揺しかけたところでピートが叫ぶ。
「ピート!?」
「円陣を組め!」
ピートが言うのはそれであった。
「円陣だと、ここでか」
「そうだ」
リーに対して答える。
「囲まれたならそれが一番だからな」
「わかった」
「けれどピートさん」
ブンタがピートに問う。
「何だ、ブンタ」
「街はどうしますか?若しかすると敵は」
「そうだ、それだよ」
ヤマガタケもそれを聞いて気付く。
「俺達はいいとして街は」
「大丈夫だ」
しかしピートはその言葉にも自信を持って答えるのだった。
「敵の狙いは俺達だ。街じゃない」
「そうなのか?」
「見ろ」
今度はサンシローに対しての言葉だった。
「敵は全ての戦力を俺達に向けているな」
「ああ」
確かにその通りだった。包囲殲滅せんとしているのがすぐにわかる。ピートはあえてこのことに言及してみせたのだ。
「まずは俺達だ。つまり」
「そうか」
一矢が頷く。
「街の破壊や占領は俺達を倒してからか」
「そういうことだ。だからわかるな」
「よし!ならやってやる!」
一矢は全てを理解して叫ぶのだった。
「ここで踏み止まってな!」
「いいか一矢」
「京四郎」
「敵に囲まれているということは忘れるな」
「ああ」
親友の言葉に頷く。
「何処からでも来る。後ろは俺達に任せろ」
「だから正面は御願いね」
「ああ!」
ナナの言葉にも応える。
「やってやる!何があってもな!」
「皆そのまま円陣だ!」
ピートがまた言う。
「敵を凌ぎきるんだ!いいな!」
「了解!」
全軍ピートの言葉を受けて円陣になる。そうして十重二十重になりそこから外へ向けて遮二無二派手な攻撃を浴びせるのであった。
「ほらほらほら!」
ベッキーが派手に砲撃を浴びせる。
「それだけ集まっていたら逃げられないよ!」
トーテムキャノンが炎を噴く。その攻撃で敵が次々と吹き飛んでいく。
「ちょっとは考えるんだね!」
「ベッキー、波に乗ってるじゃない」
横からシモーヌが言ってきた。彼女は近寄って来る敵を撫で斬りにしている。
「あたし向きだからね。こうした戦いは」
ウィンクをしてそのシモーヌに応える。
「動かないとね」
「それはフェンターもだね」
シモーヌはこう言って今度はエリスのフェンターを見た。コクピットにいる時のエリスはまさに別人だった。
「遅いっ!」
ワルキューレの様に荒れ狂いながら攻撃を浴びせている。それによって彼女もまた一機また一機と敵を倒しているのであった。
「数をものとしないよ」
「そうだね。けれどこうした時に一番頼りになるのは」
「あいつだね」
「そっ、あいつ」
ここでサイバスターを見る。
「やっぱり密集している相手には強いねえ」
「全くだよ」
見ればサイバスターは空から敵に攻撃を浴びせていた。あの攻撃であった。
「マサキ!」
「あれを使うんだニャ!」
「あったり前だ!」
そうシロとクロに答える。
「ここであれ使わないと意味ねえだろ!」
「よし!それじゃあ!」
「やるニャ!」
「よっし!いっけえええええーーーーーーーーっ!」
サイバスターの身体が緑色に輝いた。
「サイフラァーーーーーーーーーーーーッシュ!!」
その緑色の光が周囲に放たれる。敵のマシン達はその光の中で激しいダメージを受けるのだった。中にはそのまま爆発するものまであった。
「よっし!」
マサキは攻撃を決めてガッツポーズをする。
「これでかなり違うぜ!」
「やってくれたぜマサキ!」
甲児がそのサイフラッシュを見て声をあげる。
「今だ甲児君鉄也君!」
そして大介が言う。
「総攻撃だ!」
「わかったぜ大介さん!」
「やりましょう、今こそ!」
三機のマジンガーが派手に周りに向けて炎や雷を放つ。これでまた敵はその数を大きく減らしたのだった。
包囲されてもなおロンド=ベルは戦力で敵を圧倒していた。それはフローラもよくわかっており彼女も歯噛みするしかなかったのであった。
「おのれ、このままでは」
「フローラ様、こちらの戦力が四割を切りました」
「もうか」
「はい、既に左右の軍は壊滅」
見ればその通りだった。満を持して送り出した軍はもうその体を為してはいなかった。
「そして主力もまた」
「これ以上の戦闘は無理か」
「残念ですが」
部下は苦い顔で報告する。
「最早。適わぬかと」
「くっ」
フローラはそれを聞いてあらためて歯噛みした。
「今動員できる戦力の全てを出したというのにな」
「はっ」
「百鬼帝国のそれも」
この戦いには邪魔大王国も百鬼帝国もその戦力の全てを動員していたのである。だがそれでも今のロンド=ベルを倒すことは適わなかったのである。これが無念だったのだ。
「敗北か」
「如何為されますか?」
部下はそうフローラに問うた。
「まだ戦われますか、それとも」
「まだだ」
フローラはまだ諦めてはいなかった。
「せめて」
「せめて?」
「あのマシンだけでも」
目の前の雷鳳を見据えていた。
「倒しておく。いいな」
「わかりました。それでは」
「前に出る!」
自身の乗る移動要塞を前に出させる。
「あのマシンだけでも手土産にするぞ!」
「はっ!」
そのまま雷鳳に突っ込む。それはロンド=ベルにもわかった。
「トウマ!」
宙がトウマに声をかけた。
「来たぞ!フローラだ!」
「ああ!」
トウマもそれに応える。
「狙いは俺か!」
「いいかトウマ!」
ここで鉄也に彼に声をかける。
「今こそ特訓の成果を見せる時だ!」
「わかった!」
それに応えて何かを外した。
「あれは」
「パワーリストとパワーアングルね」
ミサトがミナキに言う。ミナキはミサト、リツコと共にグラン=ガランの艦橋にいるのだ。
「どうやら」
「そんなものを身に着けて戦っていたんですか」
「全ては力を引き出す為よ」
ミサトは腕を組んだ姿勢でそうミナキに説明した。
「雷鳳の力をね」
「そうだったんですか。それで」
「見ておきなさい」
あらためてミナキに対して言う。
「彼の頑張り、そして真の力を」
「真実の力・・・・・・」
「言い換えるなら人間の力よ」
ミサトはこうも言うのだった。
「貴女もね」
「トウマが見せてくれるんですね、私に」
「ええ」
その言葉にこくりと頷いてみせた。真剣な顔で。
「貴女に。そして」
「そして?」
「私達にもね」
「ミナキちゃん」
リツコもミナキに声をかけてきた。
「人間の力はね、馬鹿にはできないわ」
「そうなのですか」
「それが今からわかるから」
そう告げるのだった。
「私達がロンド=ベルで学んだこと」
ミサトはモニターに映る雷鳳を見ながらまた言った。
「それは人間の持っている力の素晴らしさよ」
「人間の持っている、ですか」
「それが今からわかるのよ」
またリツコが言った。
「今からね。さあ」
「はい」
ミナキも腹を括った。そのうえで頷く。
「それを今から」
「さあトウマ君」
リツコがモニターのトウマに声をかける。本人に聞こえていないのを承知で。
「見せてもらうわ。貴方の、そして」
「人の力を!」
ミナキの言葉だった。今トウマは己の全ての力を引き出すのだった。
「決めてやる・・・・・・」
構えを取る。その中で力を溜める。
「行くぞフローラ!」
その力を今解放した。
「ライジングメテオ!」
突進する。光となってフローラの移動要塞に向けて突き進む。
「ムッ!?」
「せいせいせいせいっ!!」
派手な攻撃を繰り出しはじめた。
「これで・・・・・・」
「何っ!?」
フローラですら捉えきれない動きだった。一方的な攻撃を受けダメージを浴びながらもどうすることもできなかった。トウマはその間にさらに攻撃に移ってきた。
「終わりだーーーーーーーっ!せいやーーーーーーーーーーっ!」
光が貫いた。移動要塞は虚しくその動きを止めたのだった。
「何だとっ!?」
「フローラ様!」
部下が報告する。
「要塞は最早移動不可能です!」
「何だと!?」
「早くお逃げ下さい。このままでは」
「しかしだ!」
「ですが!」
部下はそれでも退こうとしないフローラにまた言った。
「このままでは」
「くっ、致し方あるまい」
フローラも遂に認めた。敗北を。
「全軍撤退だ。戦力の回復に務める」
「はっ」
こうして彼等は撤退した。百鬼帝国、邪魔大王国の大攻勢はロンド=ベルの堅固な防御の前に空しく敗れ去ったのであった。
戦いは終わった。ミナキはすぐにトウマのところに来た。
「トウマ!」
「ミナキ」
「まさか本当に」
彼女は驚きを隠せなかった。まさか本当に成功するとは思わなかったからだ。
「貴方が雷鳳を」
「ああ、システムLIOHがなくても俺はやれる」
トウマは強い声で応える。
「絶対にだ。あのライジングメテオで」
「ええ。それに」
「それに?」
「システムLIOHだけれど」
ミナキはシステムLIOHについてまた言及するのだった。
「やっぱり完全に封印するわ」
「そうなのか」
「御免なさい、貴方に酷いことばかり言って」
「いや、いいさ」
そんなことにこだわるトウマではなかった。
「そんなこと。それより」
「それより?」
「俺はもっと強くなる」
彼はこう言うのだった。
「雷鳳も。だからきっと」
「きっと?」
「地球を守る力になる」
強い決意の言葉であった。
「だから俺は違うんだ。皆に」
「皆に」
「人々を守る為に散った多くの人達に。雷鳳と共に戦うってな」
「それでいいのね?」
ミナキはトウマを見上げて問うた。
「雷鳳で。お父様の歪んだ心が作り出したあのマシンで」
「雷鳳は歪んじゃいない」
トウマははっきりとこう告げた。
「あの力は正しいことの為にある力だから」
「そう思ってくれるのね」
ミナキの顔が僅かだが軽くなった。
「だったら」
「だったら?」
「いえ、何でもないわ」
ミナキはそれ以上は言おうとしなかった。そしてトウマに対して言うのだった。
「何でもないから。それじゃあ」
「あっ、ミナキ」
ミナキは何処かに行ってしまった。残ったのはトウマだけであった。
「どうしたんだ、一体」
「彼女にも色々とあるんだ」
「今はそっとしておくべきだ」
そこにレーツェルとゼンガーが来た。
「レーツェルさん、ゼンガーさん」
「だがトウマ君」
レーツェルは彼に声をかける。
「はい」
「戦士として歩むのだな、君は」
「そのつもりです」
トウマは強い声で答えた。
「俺は。そうして」
「そうか。なら歩むがいい」
レーツェルはトウマのその強い言葉ににこりと笑ってみせた。
「君自身の足でな」
「わかりました」
「そしてその道は」
今度はゼンガーが言う。
「俺と同じ道だ」
「そうなんですか」
「そうだ」
ゼンガーはトウマに頷いてみせる。
「戦士として。悪を断つ道だ」
「俺のこの力が悪を断つ」
「やれるか」
強い目と声でトウマに問う。
「この道を歩むことを」
「やります」
トウマの決意は変わらない。
「絶対に。そして」
「そして」
「今はゼンガーさんがかなり先にいますけれど」
「それはどうかな」
だがゼンガーはその言葉にはあえて疑問を呈するのだった。
「えっ!?」
「俺の歩みも微々たるものだ」
「そうですか?」
「そうだ。道は長い」
「そしてだ」
レーツェルも言う。
「道を歩むのは簡単ではない。その歩みは遅くなる」
「遅く・・・・・・」
「俺も御前もそれは変わらないのだ」
またトウマに告げる。
「だからだ。追いつける」
そうトウマに言う。
「御前もきっと。追いついて来い」
「ああ、やってやる」
トウマはまた決意した。それが声に出る。
「きっとゼンガーさんに追いついてみせる。それでいいんだな」
「そうだ」
その顔が微かに笑った。
「その時を楽しみに待っている」
「ああ、やってやるぜ!」
トウマは叫ぶ。
「俺と雷鳳は今日よりも明日、明日よりも明後日にさらに強くなる!」
彼は誓った。戦士になることを。戦いはさらに激しくなるが今ここに新たな戦士が誕生したのであった。
第十一話完
2007・9・24
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