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久遠の神話

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第三十七話 人との闘いその一

                     久遠の神話
                 第三十七話  人との闘い
 中田は上城と対峙していた。上城もだ。 
 その二人を見てだ。聡美が樹里に囁いた。
「この闘いが初陣になるわ」
「上城君のですね」
「ええ。実質的なね」
 それになるというのだ。
「はじまったのよ」
「剣士同士の戦いは怪物を倒すことは入らないんですか」
「あれは言うならおつまみよ」
「おつまみ?」
「ええ。主なお料理の添え物よ」
 例えるならハンバーグセットに付いているパスタ、それだというのだ。
「それになるわ」
「それ位のものだったんですか」
「怪物との戦いはね」
「あの戦いも必死にするものだったのに」
「それでもなのよ」
 だが、だとだ。聡美は樹里に話すのだった。
「剣士の戦いの本分はあくまで」
「剣士同士の戦いですか」
「そう。それが本分になるのよ」
「じゃあ上城君は今までそのことは」
「わかっていたと思うわ」
 心の何処かでだ。そうだったというのだ。
「けれどそれでもね」
「それでもですか」
「認めたくはなかったのよ」 
 わかっている、そのことをだというのだ。人は理解するだけでは動けない、その理解したことを認める、このこともなければ動けないのだ。
 上城は今認めた、彼が理解したことを。それでだというのだ。
「そうだったからね」
「ううん、そうなんですか」
「戦いを止める為に戦うということはね」
「教科書で習いました」 
 それはどういうことかをだ。樹里は答えることができた。
「矛盾ですね」
「中国の古典の言葉ね」
「はい、漢文の授業で習いました」 
 まさにだ。その授業で知ったというのだ。
「そこでは最強の矛と盾でしたけれど」
「それでもよね」
「はい、戦いを止めないといけないのに戦うということは」
「互いに相反するわ」
「けれどそれでもなんですね」
「戦わないといけないのよ」
 そうしたものだというのだ。剣士の戦いは。
「戦いを止めたてもね」
「戦ってそして勝って」
「最後の一人まで生き残ってそうして」
「願うものなのよ」
 こう言ってだ。そのうえでだった。
 二人は戦いを見守るのだった。上城と中田の戦いを。まずは中田から仕掛けてきた。
 右手に持つ剣を下から上に一閃させた。そこからだ。
 赤い炎が出てそれが地走りに上城に向かう。その炎をだ。
 放ち続ける。しかも左右に激しく動きながら。
 炎達は下から上城を襲う。その炎達に対して。
 上城は地面に刀を突き刺した。その先から。そのうえで。
 地面に間欠泉を出させた。その吹き出る水で炎に対しようとする。そして実際にだった。
 その水柱を幾つも出して水のカーテンを地面に作った。そのカーテンで以て。
 中田の地を走る炎を打ち消した。炎と水がぶつかり蒸気が出る。その蒸気を見て中田は言った。
「水はやっぱりあれだよな」
「火には強いっていうんですね」
「ああ。水は火を消すんだよ」 
 このことをだ。彼は上城に言うのだった。
「そうなるんだよ。ただな」
「ただ、ですか」
「ものには限度があってな」
「火が強いとですね」
「水にも消されないんだよ」
 こう言ってだ。今度はだった。
 一度にだった。両手の刀を下から上に何度も一閃させてそれで巨大な、中田の背丈程もある巨大な炎の柱を作った。そしてその柱を。
 上城に向けて放たせた。中田はその炎の柱を見ながら上城に問うた。
「これはどうだろうな」
「この柱はですか」
「君に消せるか?」
 上城の今の水の力、それではだというのだ。 
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