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剣の世界の銃使い

作者:疾輝
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中層プレイヤーのアイドル

俺はシリカを連れて、35層主街区まで戻ってきていた。
この層自体はほのぼの・ゆったり等といった雰囲気が感じられるが、中層プレイヤー達の狩り場となっているため街は人で溢れていた。
俺よりもこの層に詳しいシリカに連れられて、大通りを通り転移門のある街の広場を抜ける。すると、数人のプレイヤーがこちらに話しかけてきた。当然、俺に対してではなく、シリカにだ。
どうやら、シリカをパーティに誘いたいらしい。このSAOの中では、女性プレイヤーの比率は圧倒的に低い。それに、現実の方の顔なわけだから、ネカマとかいないしね。
そんな女性プレイヤーがパーティにいれば、士気も大幅にあがるだろう。目の前のプレイヤーたちは、多少熱狂的すぎる気がしないでもないが。

「あ、あの・・・お話はありがたいんですけど・・・」

シリカの方も丁寧に断ってはいるものの、若干辟易しているようだ。

「・・・しばらくはこの人とパーティを組むことになったので・・・」

そこで俺に振りますか!と内心で叫びつつ、とりあえず呼ばれたので横に行く。すると、もうすっかりシリカの取り巻きと化していたプレイヤー達の視線が、一斉に俺に集中する。それらの視線には、全く好意的な物はない。いやはや、怖いねぇ。

「おい、あんた」

「ん?何さ」

両手剣を装備した青年プレイヤーが高圧的な態度で話しかけてくる。まあ、見下してるんだろうが・・・。

「見ない顔だけど、抜け駆けはやめてもらいたいな。俺らはずっとこの子に声をかけてるんだぜ」

俺の装備を見てたいしたことないと感じたのか、見下すように言ってきたその物言いにイラッときた。敬語を使えとまでは言わんが、人を見かけだけで判断するのは具の骨頂だ。

「まあ、抜けがけが悪くないとは思わんが、それは全部彼女が決めることであって、お前らが決めることでもない。彼女の意思をもう少し尊重しなよ」

まあ、俺もこんなこと言われたらイラつくだろうがね・・。ある程度は言っておかないと彼女が心配だ。
場が険悪なムードになりかけたところで、シリカが助け舟を出してくれた。

「あの、あたしから頼んだんです。すいませんっ」

シリカは最後にもう一度頭を下げて、俺のコートを引っ張ってメインストリートまで俺ごと引っ張っていった。俺はひらひらと手を振りながらプレイヤーたちから離れる。プレイヤーたちの姿が見えなくなったところで、シリカが俺のほうに向き直る。

「・・・す、すいません、迷惑かけちゃって」

「いや、俺は大丈夫。にしても、毎回ああなのか?少し度が過ぎると思うんだが・・・」

「ただマスコット代わりに誘われえるだけなんです、きっと。それで、調子に乗っちゃって・・・」

「大丈夫だって。ピナも絶対生き返るから」

頭をポンポンと軽く叩いてやる。

「おっと、すまん。知り合いによくやってたことだからつい・・・」

「いえ・・・」

あー、やっぱり染み付いた動作って抜けないものなんだよな。気持ちが落ち着いたのか、シリカも笑顔に戻った。
しばらく歩いていると、《風見鶏亭》と名のついている宿屋に着いた。多分シリカが泊まっている宿なのだろう。

「あ、レイトさん。ホームはどこに・・・」

「大体いつもは50層のアルゲード。まあ、今日はここにするか」

「そうですか!」

シリカがうれしそうに笑う。うん、女の子は笑っているのが一番だ。注意しておくが、ロリコンではない!!

「ここのチーズケーキが結構いけるんですよ」

「へぇ、後で詳しく教えてくれ。ここに寄った目的もそんな感じだからな」

ケーキの話題で盛り上がりながらシリカが俺を引っ張る様な形で宿に近づくと、宿の隣にある道具屋から、五、六人の集団がぞろぞろと出て来た。その最後尾に居た女が、こちらに気づくと、シリカが顔を伏せる。知り合いか?と思いもう一度見ると、あちらの方から声をかけてきた。

「あら、シリカじゃない」

声をかけられ、無視するのもなんなので立ち止まる。
見た瞬間、シリカが顔を伏せたことから2人の関係は余りいいものではないのだろう。ああ、さっき話してくれた口論ってコイツが原因か?

「・・・どうも」

「へぇーえ、森から脱出できたんだ。よかったわね」

名前はロザリア。彼女はは口の端を歪める様な、皮肉げな笑い方をしながら話を続ける。

「でも、今更帰ってきても遅いわよ。ついさっきアイテムの分配は終わっちゃったわ」

「要らないって言ったはずです! ──急ぎますから」

シリカは早く話を切り上げたいのだろうが、彼女はそれを許さないようだ。シリカの肩を見て、また同じ笑みを浮かべる。

「あら?あのトカゲ、どうしちゃったの?」
 
シリカの使い魔、ピナのことだろう。この世界で使い魔がテイマーの近くに居ないことはそうそうない。というかシリカから話を聞いていると、結構大切にしていたらしいので離れさせるようなことなどしないだろう。つまり、死んでしまったことを知っていてわざと言っている、と。
面倒くさいなぁ・・俺にとってはさっきのチーズケーキの方がよっぽど興味があるんだが。

「あらら、もしかしてぇ・・・?」

「死にました・・・。でも!」
 
シリカがロザリアをにらみつける。

「ピナは、絶対に生き返らせます!」

そう断言した彼女の瞳には強い意思がこもっていた。これなら精神的にも大丈夫だろう。うんうん、もうちょいシリカは自分の意思を主張したほうがいい。

「へぇ、てことは《思い出の丘》に行く気なんだ。でも、あんたのレベルで攻略できるの?」

「そこだ!そうだそうだ、思い出の丘だった」

ここで割り込む。いや、別に主街区につく前に名前なんて思い出してたけどさ。そろそろめんどくさくなって来た。少し露骨だったか?ついでに、シリカの前に出てシリカを後ろのほうに隠す事も忘れない。

「彼女にはきちんと意思があるし、俺もついていくから危険はかなり低いと思うが」

すると、ロザリアは俺の体をじろじろ眺めてからまた笑みを浮かべた。まあ、じろじろ見られんのはもう慣れた。そういや、あいつも結構人の事凝視するけど、悪意があるかないかでは大違いだな。

「あんたもその子にたらしこまれた口?見たトコそんなに強そうじゃないけど」

「そう見えたんならそれで結構。あの層レベルなら大したこと無いし、俺一人で十分さ」

「ははっ。ホラを吹くのもいい加減にしたほうがいいよ」

「ホラねぇ・・・ま、もうあんたには関係無いことさ」

ロザリアとの会話を切り上げて、シリカを宿に先に入れて、その後に続いて宿に入る。

「ま、せいぜい頑張ってね」

そんな言葉が後ろからかけられた。  
 

 
後書き
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