DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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別世界より⑨
<グランバニア>
「一体何なのポピーちゃんは?私達だけを集めておいて、結構な時間待たせるなんて!?」
会議室へ集められて1時間が経過した頃、スノウが我慢できなくなり文句を言い出した。
「ポピーにも考えがあるのだから、少しは我慢して文句を言うのを控えろ!」
若き頃よりリュカと共に死線を潜り抜け(本人談)たスライムナイトのピエールが、まだ衰える事のない鋭い眼光でスノウを押さえ付ける。
グランバニアの会議室には、リュリュを中心にフレア・フレイ・ピエール・リューラ・スノウ・リューノ・ピピン・ドリス・オジロン・マーサと…リュカと縁のある者達が集められ、ポピーの帰りを待っている。
沈黙が室内を制する中、程なくポピーがある人物を伴い入ってきた。
「あ、ヒゲメガネだ!」
その人物を見るなり、指を指して驚いたのはスノウ…
勝手に付けた愛称でその人物を呼ぶ。
「馬鹿者、マスタードラゴン様だ!勝手な呼び方をするんじゃない!」
そう…ポピーと共に入ってきたのはマスタードラゴン…
今は人間の姿に変化しており、プサンと呼ぶ方が正しいのだが…
礼儀正しいピエールが、無礼な女を叱り付ける。
「あぁ…いえ、構いませんよ…」
だがプサンはバツが悪そうにスノウを許し、咎めない様に落ち着かせる。
「そんな事はどうでもいいから、みんな座って聞いてほしいの。この国の現状を再確認の意味も含めて説明するから!」
スノウの無礼な態度を…
ピエールの神に対する恭しい態度を…
プサンの寛大(?)な態度を…
『どうでもいい』の一言で片付け、自分たちの置かれている現状を説明するポピー。
現在、リュカのお陰で大量の物資輸送が可能になったグランバニアは、最終輸送手段が馬車という点で流通に滞りが生じ、人々の生活に影響が出始めようとしている。
その問題を解決する為に、ポピーが連れてきた人物(?)がプサンで、彼の持つ天空人の偉大なる知識を、国の発展へと生かそうというのが彼女の考えた提案だ。
「でもポピーちゃん…神様と呼ばれる様な方が、一国に肩入れしても良いのかしら?私達人間の問題事ですから、神様の手を煩わせるのはどうかと…」
「いや~流石は聡明なる女王陛下です。私も恩があるとは言え、グランバニアだけに肩入れする訳にも参りません。どうかポピーさん…そこのところをご配慮ください」
リュリュの至ってまともな発言に、少し申し訳なさそうに同調し協力を断ろうとするプサン。
「…ちょっと座れヒゲメガネ」
すると空いている席を指差し、とても神相手とは思えない口調で着席を指示するポピー。
皆が唖然とする中、まるでリュカが乗り移った様な態度で話し始めた。
「お前…この責任を取るべきだろう!?」
「せ、責任って…どういう事ポピーちゃん!?」
一瞬の沈黙後、堪らず問いかけたのはシスター・フレアだ。
「考えても見てよ…一体誰がお父さんを異世界へと送り出せるの?人間には到底無理な事よ。お祖母様ですら、元からこの世界と繋がりのある魔界への扉しか開けられないのに、私達の住む世界とは別の異世界へと、無理矢理追いやる事なんて出来やしないわ!でも………」
最初は皆がポピーを見ていたのだが、彼女の説明が終わると同時に、視線はプサンへと移り、疑いの気持ちが膨れてきた。
「ま、まさか…マスタードラゴン様がリュカを異世界へと送ったのですか!?」
騎士として最も礼儀を重んじるピエール…
しかし愛するリュカと逢えなくなり、その原因がプサンにあるとの言に、敬語ながらも怒りが篭もるのが分かる…
「あ…いや~…あの~…」
神などと崇められていても、この状況にはタジタジで、リュカを愛する愛人や娘等から睨まれて、大量に冷や汗をかく天空城の主…マスタードラゴン。
「ふぅ…ヒゲメガネからは説明しづらいだろうから、私から説明するから聞いてちょうだい…とは言え、推測だけどね」
推測と断りを入れてから説明するポピー…その内容は以下の通り…
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異世界に悪しき力を持つ大魔王が現れ、その世界の創造主たる女神が囚われの身へ…
何らかの精神的な繋がりを持つ神仲間のマスタードラゴンは、異世界の女神を助ける為に自身が最も能力を信じる人間を、本人の意志を無視して送り出す事に…
勿論、こちらから送り出す事が出来ても、受け入れる側の準備も必要で、いきなり大魔王の下へ送り込んでしまい、訳の分からぬうちに殺されない様に、異世界の女神が導いたと思われる。
つまり2つの世界の神々が、共謀して無理矢理世界を救う旅へと向かわせたのだ。
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「最低なヒゲメガネね…」
変わらず無礼なスノウ…
しかも今度は咎める者は居なかった。
「あぁ…確かに最低だが、1つだけ納得いかない事がある…」
「えぇ…私もピエールと同じで、何故勇者アルルと共に旅立たせたのか、納得がいかないわ!…知らないとは言わせないわよ、父の女癖の悪さを…幼気な少女と共に旅立たせれば、どんなに恐ろしい事になるか…ちょっとは配慮がほしいわね!」
ほぼ全員から殺意の篭もった瞳で睨まれる中、配慮の無さを指摘され慌てて言い訳をするプサン…
「わ、私だってリュカの事を分かってますよ!本当は勇者アルルの父…オルテガと共に旅立たせようと画策していたのですが、我ら神々は精神世界で通話をしており、ルビスが封印された事により、タイムラグが発生してリュカを送るのが10年ずれてしまったのです…うら若い少女をリュカの毒牙にかけるなど、考えただけでも恐ろしい…」
本人の意志に反し、勝手に異世界へと送り出しておいて言える台詞では無いのだが…
「その辺の良識は持ち合わせていたのね…」
と、ポピー以下みんなが納得するリュカの人格。
「で、でも…もう1つ納得がいかない事があります!」
皆がリュカを心配する中、1人だけリュカ以上に心配する人物が異世界に言ってしまっているフレイが、声を荒げてプサンに申し立てる。
「何でティミーさんまでも、あっちの世界へ送ってしまったのですか!?お父さんが偉大なのは分かりますし、ティミーさんも凄いのは分かりますが…お父さんを送ったのだから、ティミーさんまで送らなくても…」
リュリュの妹フレイが、半ば泣きながら大好きなティミーを異世界へ送った事に抗議する。
さて、唯一ファザコンではない娘の涙ながらの抗議に、プサンは何と答えるのか…?
後書き
誤解の無い様に言っておきますが、唯一ファザコンではないだけで、ノーマルなワケではございません。
次話も『別世界より』をお送りします。
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