Fate/stay night -the last fencer-
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第一部
出会いし運命の少女
マスター、サーヴァント、そして聖杯戦争
魔術師の気配を探知した場所。
赴いてみればそこには士郎と凛、蒼と赤のサーヴァントが存在した。
三つあったはずのサーヴァントの気配。
内の一つは俺たちがここに辿り着く少し前に、急速離脱したらしい。
戦闘の気配はなかったので近づいてみたのだが、やはり向こうもこちらには気付いたらしく、仕方なく姿を見せるハメに。
その後、数分。
何が何だかわからないといった顔の士郎。
士郎が魔術師だったという事実に驚く俺。
俺たちをジト目で睨み続ける遠坂凛さん。
正直、困惑どころじゃない。
そんな俺たちの傍でも、同じような状況が続いていた。
「………………」
「………………」
「………………」
蒼碧、赤銅、紫紺をイメージさせる格好をしたサーヴァントたち。
己のマスターを守るように互いを警戒する。
こちらに関しては知り合いじゃないどころか敵対関係にあるようなので、自発的な事態の解決は望めない。
解決するとしたら、戦闘が始まる前提だ。
傍目からすれば異様な三つ巴状態。
俺は事情もよく知らないため、下手なことを口走れない。
「衛宮くんが魔術師だったのには驚いたけど……貴方がマスターだったことのほうが驚きよ」
「え? いや、俺としては不本意な契約だったというかなんというか……」
でも契約できなきゃさっき死んでたんだけども。
未だに概念解放の魔術が召喚儀法になったことは理解不能のままだ。
「望んだクラスじゃなかったってこと? いえ、それより昼間のアレは演技? 令呪もどうやって隠してたのかしら?」
「いや、結界は俺が仕掛けたものじゃないし、令呪なんてものも知らないぞ」
「とぼける気?」
「お、おい、遠坂……」
「衛宮くんは今は黙ってて!」
「あ、はい……」
即座に黙らされる士郎。
いかん、凛と致命的なまでに話が噛み合わない。
このままでは勘違いが勘違いを呼ぶ壮大なスペクタクルが始まってしまう。
信じてもらえるかはわからんが、素直に事情がわかりませんといったほうがいいだろうか?
この普通じゃない状況で、自身の不利を明確に話すことには抵抗がある。
無知を晒せば利用されるのが世の常であり、更に言えば相手は魔術師だ。
故にここは、ただ相手を信じられるかということに尽きる。
魔術師として遠坂か、人としての凛か。
相手が彼女であるならば、俺の答えは明確だった。
「凛。俺は今ここで何が起こっているのか、よく解っていない」
「は?」
「これまでに俺が知り得た情報は、サーヴァントの存在、サーヴァントと契約する魔術師の存在。
この町で何かが起こっている、もしくは起きようとしている。それくらいだ」
「それを、信じろとでも?」
「……ちょっと、いいかしら?」
平行線を辿る俺と凛の話に、銀の少女が割って入る。
二人のサーヴァントに対する警戒はそのままに、目線だけをこちらに向ける。
まさかの助け舟である。
「マスターが言っていることは本当よ。私は私自身の役割を理解しているけど、彼は何故私が、私達が呼ばれたのかなんてわかっていない」
「聖杯戦争を知っていて、自主的に参加したわけじゃないってこと?」
「ええ、召喚された経緯から考えてもそう。そして彼は令呪も持ってない。現に今の私は契約関係にはあっても、令呪に縛られてはいないもの」
「え……!?」
驚愕は何に対してか。
彼女が言い放ったことに対して驚いたのは凛だけでなく、二人のサーヴァントもだ。
全体の反応を見るに、現状では俺と士郎だけが置いてけぼりを食らっているらしい。
「黎慈。貴方、令呪がないって本当なの?」
「いや、だからそもそも令呪が何なのか知らなくてだな……」
「これ」
凛が袖を少したくし上げ、手の甲をこちらに見せる。
そこには薄ぼんやりと、赤い刻印が光を湛えていた。
合計して三画の魔術刻印。
「衛宮くん、貴方も令呪はあるでしょう。出して見せて」
「え?」
突然話を振られた士郎が、思わず両手を確認する。
左手の甲に、剣を模したような刻印が光っていた。
なるほど。その令呪が何かしらの証になっているわけか。
先ほどの令呪に縛られるという言葉から推測すると、あれは魔術師がサーヴァントを律するためのもので、そのままマスターの証であるのだろう。
……! 屋上で凛が俺に上着脱いで袖捲れって言ってたのはそういうことか!
ああ、ようやく頭が回ってきたぞ!
「これが令呪。聖杯戦争に参加したマスターに与えられる、サーヴァントに対する絶対命令権」
「ふむ。凛の刻印の一画が光っていないのは、何か意味があるのか?」
「それは…………いいわ、何かもう腹立ってきたし。アーチャー、しばらく霊体になっててもらえる?」
「私は構わないが。君はどういうつもりなのかね」
「この何もわかってないバカ二人に、現状を思い知らせてあげるのよ。
それまで貴方の出番はないから消えていて。いつまでも膠着状態でにらめっこしてても仕方ないでしょ」
「それはそうだが……難儀なものだな。一つ忠告すると、君は余分なことをしようとしているぞ」
そう言ってアーチャーと呼ばれた男は陽炎のように消え去った。
今ので少しだが理解した。
サーヴァントはそういう存在なのか。
マスターの命令を聞いて霊体化したのは、この場は主命に従い武器を収めるという意思表示。
となると、凛との交渉の余地が生まれたのに、俺のサーヴァントらしい彼女に武器を持たせたままではダメだろう。
「なあ銀髪っ子。おまえも霊体になれるのか?」
「ええ、出来るわよ」
「なら霊体になっていてくれないか。凛が話を聞いてくれる気になったみたいだし、このままだと埒が明かないだろ」
「そうねぇ……」
少し思案する素振りを見せ、ふと蒼の少女を見やる。
「ねぇ。あなたも一時休戦ってことでいいの?」
「なに?」
「お互いマスターが知識不足で困っているみたいだし、ここはそこの魔術師に話を聞かせてもらったほういいでしょう?」
「セイバー、俺からも頼む。ここは退いてくれないか」
「……あなた方がどういうつもりかは知りませんが、私のマスターに危害を加えない間は剣を納めましょう」
セイバーと呼ばれた少女は、武装していた何がしかの武器を納める。
それを見てこちらのサーヴァントも、持っていた何かを消したようだ。
とりあえずは、状況が前に進みつつあることに安堵した。
「…………いや、早く霊体化しろよ」
ようやく話が出来そうな空気なのに、霊体化してくれない彼女に目を向ける。
「え、だってセイバーも武器は納めても、実体化したままじゃない。私もマスターの万事に備えて、一応傍に控えてるわ」
「……とのことなんだが、それでもいいか?」
凛、士郎、セイバーの順に、窺うように目を向ける。
セイバーは元より反論できる立場でもないからか、無言で士郎の意に従う姿勢を見せている。
「いいわよ、別に。セイバーもそうみたいだし、アーチャーだって別に霊体化しただけで傍に控えてるもの」
「ああ、俺も構わない。というか、俺も今の状況が良く解ってな……ちょ、遠坂どこ行くんだ!?」
「こんなところで話しててもしょうがないでしょ。無知なあなたたちに現状を叩き込んであげるから、早く中に入りましょ」
すぐそこにある武家屋敷の門へと歩を進める凛。
反応からすると、そこが士郎の家なのか。
初めて士郎の家を見たが、中々いい処に住んでいるらしい。
しかし人の家にズカズカと入っていけるあたり、凛の神経の太さを物語っている。
「ほら士郎、中に入ろうや。戸惑うのも解るが、時には素直に事態を受け入れないと寿命を縮めるぞ」
「う────それはそうだけど」
「今夜はお互い大変だったみたいだが、ようやく一息つけるんだ。説明してくれるってんだから、ありがたくご拝聴しようぜ」
「……そうだな」
おぅ、存外に状況適応は早いな。
俺にしても、これが今の状況を知る唯一の機会になるかもしれない。
何やら魔術師同士の厄介ごとに巻き込まれてる、というか首突っ込んじまったみたいだが、魔術師であるなら疾うに覚悟は出来ていよう。
先頭に凛、続く俺と士郎。そしてその後ろには金髪少女と銀髪少女。
ふと、仲間が列成して歩く某RPGゲームの画面を思い出した。
今の状態は第三者視点というか、そのゲームのプレイヤー視点から見た感じになってるのかもとかさ。
何か異次元に迷い込んだような様相を呈しているが、五人連れ立って居間に入る。
士郎は考え込む仕草を見せたり、後ろのセイバーを覗き見たりと挙動不審だが、これは彼なりに状況を飲み込もうと必死なのだろう。
そして電気をつけながら、居間に入った瞬間────
「うわ寒っ! なによ、窓ガラス全壊してるじゃない」
「うお寒ッ! なんだよ、窓ガラスぶっ壊れてんじゃん」
見事に凛と反応が被りました。
お互い顔を見合わせ、微妙な表情をしている。
にらめっこしている俺たちを見かねた……わけでもないだろうが、士郎がポツポツと話し出す。
「仕方ないだろ、ランサーってヤツに襲われたんだ。形振りかまってられなかったんだよ」
「あ、そういうこと。じゃあセイバーを呼び出すまで、一人でアイツとやりあってたの?」
「やりあってなんかない。ただ一方的にやられただけだ」
無言で士郎に手を差し出す俺。
今夜全く同じような目に遭っている友を見つけたが故の握手だった。
訳もわからないだろうに、士郎はおずおずと手を握り返してくれた。
なんだろう、この複雑な感情。
凛はといえば、士郎の反応を嬉しそうに見ながら窓ガラスの方へと近寄っていく。
恐らくこのままでは屋内に入った意味がないので、ガラスの修復をするのだろう。
俺も昔、硝子の扱いはやらされたことがある。
と言っても、硝子は魔力が通りやすいので、扱うことは簡単だ。
「────Minitun vor SchweiБen」
ザラザラと擦れる音をたてながら、窓ガラスは数秒掛からず元通り。
この程度の魔術、彼女にとっては呼吸をするに等しいだろう。
いや。凛に限らず、魔術師にとってコレは初級テストみたいなもの。
だからこそ続いて出た士郎の発言は、俺からすればドン引きもんだった。
「すごいぞ遠坂。俺はそんな事できないからな。直してくれて感謝してる」
「……ちょっと待って。じゃあなに、衛宮くんは自分の工房の管理も出来ない半人前ってこと?」
「……? いや、工房なんて持ってないぞ俺」
「は? オイ待て士郎。おまえまさか五大元素の扱いとかパスの作り方を知らないとか言わないよな。な?」
「五大元素とパスがなんなのかは知ってるけど、扱うとか作るとかは出来ないかな」
「────────」
俺、絶句。
言いたくはないがあえて言おう。
コイツ、マジか。
「なに。じゃあ貴方、素人?」
「そんなことないぞ。一応、強化の魔術ぐらいは使える」
素直すぎる回答に思わず涙が出そうになる……が。
「わかった。わかったからそれ以上墓穴掘る前にやめるんだ士郎」
「え?」
「………………」
「あ」
ようやく気付いたのだろう。
遠坂凛が衛宮士郎を見る目の冷たさに。
別段見下しているということではなく、呆れ返り果てたという意味で。
「────はあ。なんだってこんなヤツにセイバーが呼び出されるのよ、まったく」
「む」
不満そうに口を噤む。
そりゃ士郎だって今まで遊んできたわけじゃないだろうし、魔術師として凄く、ものすごーく未熟だとしても、それとこれとは話が別だ。
とは言っても、魔術師人生エリートコースまっしぐらな凛からすれば、珍生物でも見たような心境だろう。
「あ、はい質問。そのセイバーとかアーチャーとかって、サーヴァントの名称……なのか?」
「そうね。そのあたりも踏まえて話しましょうか」
凛が腰を下ろす。
そうしてやっと始まる状況説明。
ここまで来るのに紆余曲折、さらに山あり谷ありだったが、ようやく今自身が置かれている状態を把握できる。
「まず。貴方たち、自分がどんな立場にあるかわかってないでしょ」
「「──────」」
コクン、と同時に頷く。
「率直に言うと、貴方たちはマスターに選ばれたの。衛宮くんは左手に聖痕があるでしょ。黎慈にはないみたいだけど、一応はそれがマスターである証」
「マスターの証がないんだったら、俺がマスターだって証明できないんじゃないのか?」
「普通はそうね。でも貴方のサーヴァントが貴方をマスターとみなしているなら、貴方はマスターであるはずよ。
……そうか、聞いておかなきゃね。黎慈、貴方のサーヴァントはいつ召喚した何のクラスのサーヴァント?」
「え、っと……ついさっき召喚した、謎のサーヴァントです」
「────何ですって?」
うわ怖っ。
いや、だってロクに会話してねぇし情報交換してねぇし、そういや名前さえ聞いてねぇよ。
この銀の少女について解ってることと言えば、俺と契約関係にあって、不可視の武装(たぶん剣?)を持ってる、てことぐらいだ。
ああ、本人に聞けば早いんじゃないのか?
「なあ、おまえ何のクラス?」
「さあね。セイバーでもアーチャーでもランサーでも、好きに呼んでくれて構わないわ」
「いや、その三人は既にいらっしゃるらしいんで…………わかった。仮にフェンサー、ってことにしとこう」
「違うわ黎慈、問題はそこじゃない。この聖杯戦争で呼び出されるサーヴァントは七騎のはずなの」
「はい?」
今巻き込まれてるらしい聖杯戦争。
魔術師が聖杯を求めて殺し合う儀式。俺と士郎はそれに巻き込まれたらしい。
その戦争とやらに召喚されるサーヴァントは七騎。ならば必然的にマスターも七人。
ここで凛がその呼び出される最大数を告げたということは、俺のサーヴァントは八騎目に該当するということか。
規則や規律が厳しい魔術のルールに漏れるなら、気になるのも当然だ。
魔術に例外はないが、魔術自体が例外だとは曾祖父さんの言葉だったか。
「私は貴方が初期の段階で既に召喚してたものだと思ってたんだけど……なるほど、だからあなたには令呪がないのね」
「令呪もきっかり七人分しかないってことか?」
「ええ、そうよ。聖杯戦争に選ばれるマスターは七人、その七人にはマスターの証として聖痕が現れ、七騎のサーヴァントが召喚される。
一度の聖杯戦争に現れる令呪は計二十一画。三画ずつがそれぞれマスターに割り振られ、サーヴァントを律することが出来る」
「待てよ遠坂。黎慈に令呪はないしマスターでもないとしても、ここに八騎目のサーヴァントがいるのは事実だぞ」
そう、どうあってもその事実は覆らない。
サーヴァントが聖杯戦争によって呼び出されるモノなのだとしたら、彼女────フェンサーは間違いなく聖杯戦争に関係している。
加えて、俺をマスターと認識し、実際に俺たちの間にはパスが形成されている。
二人が契約関係にあることは明確で、ならばサーヴァントに主人と認識されている俺は、必然的にマスターであることになってしまう。
正に逆説的証明、鵜が先か卵が先かという状態だ。
「確かに聖杯戦争には例外がある。定められたクラスが毎回ちゃんと呼び出されるわけでもないし、魔術師でないものがマスターになったりもする…………
それでも原則のルールとして、八騎目のサーヴァントが存在したなんて例は、過去4回に渡る聖杯戦争において一度もない」
「過去に一度もないからって起きないわけじゃないかもしれないだろ? 俺のが初めての例だって可能性もある」
「そんな簡単な話じゃないわ。サーヴァントは聖杯が与えてくれるもの。英霊を呼び出すまでがマスターの役割で、後の実体化やらは聖杯がやってくれる。
つまりマスターを選ぶのが聖杯なら、サーヴァントを選ぶのも聖杯よ。なら、そんな不手際があるはずもない」
「うーん…………セイバーはどう思う?」
考えが行き詰まったためか、いきなりセイバーに話題を振る士郎。
突然意見を求められた蒼の少女は、少し俯きながら思案し言葉を紡ぐ。
「私の召喚は正規の手順で行われなかった。シロウには私を実体化させる魔力もないため霊体になることができず、また魔力の回復も難しい状況です。
私とシロウとの契約に、何らかの不備か不具合が生じたせいである可能性も考えられます」
「……驚いた。そこまで酷い状況だったこともだけど、貴方がそんな不利なことを正直に話してくれるとも思わなかった」
「私の状態を貴方に伝えることで、シロウには現状を深く理解してもらったほうがいい。それに八騎目のサーヴァントの存在について、原因を究明する手がかりになるのならよいでしょう」
「おい、フェンサーの意見は?」
お喋りなイメージがあったのだが、必要がなければだんまりのフェンサー。
俺が聞かなければずっと黙ったままでいそうだったので、意見を求めることにした。
「そうね……私のほうも正規の召喚方法ではなかったみたいだけど、セイバーのような不都合はないわ。
時間的に私とセイバーが召喚されたのはほぼ同時みたいだったけど、そのあたりでなにか不具合が起きたんじゃないかしら」
「ふぅむ……正規手順ではない召喚で二体同時に呼び出されたから、二体とも実体化させちゃいました、みたいな?」
「聖杯ってそんな適当な代物なのか?」
「──────あ~もうっ、埒が明かない! あんたたち、いくわよ!」
突如立ち上がったかと思うと、出発進行宣言をする凛。
聖杯とかマスターとかサーヴァントとか、俺と士郎は凛に比べて理解度に差があるのだからそんな簡単に諦めてもらっても困るのだが…………
というか、こんな真夜中に一体どこへ行こうというのか?
「聖杯戦争をよく知ってるヤツに会いに行くのよ。聖杯戦争がなんなのか、その理由も教えてくれるし、今回の八騎目のサーヴァントについても何かわかるかもしれない」
「知りたいのは山々だけど、何処だよそれ。こんな時間なんだし、あんまり遅いのは」
「大丈夫、隣町だから急げば夜明けまでには帰ってこられるわよ」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「なに、行かないの? ……まあ衛宮くんがそう言うんならいいけど、セイバーは?」
隣町ということは、まさか言峰教会か?
聖杯があの聖杯だとしたら聖堂教会が関わってくるのは当然だろうし、魔術協会にも片足突っ込んでるあの神父さんならありえる。
初めて会ったのはこの地に移住するときに凛の後見人として手続きを取ってもらった時だが、それを含めても数回程度しか面識はない。
ここ数年は教会に行く用事なんてなかったしな。
「シロウ、私は彼女に賛成です。貴方はマスターとしての知識がなさすぎる。貴方と契約したサーヴァントとして、シロウには強くなってもらわねば困ります」
士郎は凛とセイバーに言い包められている。
まあ元々行かないという選択肢はなかったが、何やら俺にとっても耳の痛い言葉が聞こえてきた。
思うところはセイバーと同じなのか、フェンサーは半眼で俺を見つめている。
「わかったわかった。ほら士郎、グダグダ言ってても仕方ねぇんだ。行くならさっさと行って帰って来ようぜ」
「……そうだな。わかった、案内してくれ、遠坂」
隣町まで一時間、教会までで約一時間強か。
何事もなければ三時間ほどで帰ってこれるが……さて、どうなることやら。
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