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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第37話

 
前書き
今回の話のほとんどが原作と変わりありません。

駄目駄目な作者をどうか許してやってください。 

 
午後五時二〇分。
一方通行(アクセラレータ)はとある研究所に来ていた。
その研究所とは「実験」の為に二万人もの妹達(シスターズ)を用意するために建てられた培養施設だ。
なぜ、一方通行(アクセラレータ)がもう「実験」が凍結している今の状況でこんな所に来たのかと言うと、それは今日の深夜0時の時間まで遡る。
あの時、一方通行(アクセラレータ)と麻生が偶然出会い話をした後、一方通行(アクセラレータ)は自分の違和感について考えながら家に向かって歩いていた。
その後ろから誰かがついて来ていた。
一方通行(アクセラレータ)はまた自分を狙いに来た能力者あるいは無能力者だと思ったが違った。
頭から汚い毛布を被っていて身長は大柄でない一方通行(アクセラレータ)の腹ぐらいの高さしかない。
声を聞いた限りでは少女の声で自分の事をミサカと言っていた。
一方通行(アクセラレータ)はミサカという名前を聞いてピクリと反応する。
そして彼女が被っている毛布を引っ張り顔を見ようとする。
顔はあの量産型電撃使い(レディオノイズ)妹達(シスターズ)」と同じものだが「妹達(シスターズ)」の年齢設定は一四歳だが目の前の少女は一〇歳前後でしかない。
しかし彼女は毛布の下には何も着ていなかった、詰まる所、完全無欠の素っ裸の少女だった。
毛布を返してと涙目で言う少女に一方通行(アクセラレータ)は毛布を投げつけ少女はそれを受け取ると、モソモソと自分の全身を包み込み、一方通行(アクセラレータ)が求めてもいないのに自分の説明をする。

「ミサカは検体番号(シリアルナンバー)は二〇〇〇一号で「妹達(シスターズ)」の最終ロットとして製造された、ってミサカはミサカは事情の説明を始めるけど。
 コードもまんま「打ち止め(ラストオーダー)」で本来は「実験」で使用されるはずだったんだけど、ってミサカはミサカは愚痴ってみたり。
 でもところがどっこい見ての通り「実験」が途中で終わっちゃったからミサカはまだ身体の調整が終わってないのね、ってミサカはミサカはさらに説明を続けたり。
 それでアナタは「実験」のカナメであるはずなので研究者さんとの繋がりもあるかと思うから、できうる事なら研究者さんとコンタクトを取ってもらいたいかな、ってミサカはミサカは考えてる訳。」

「他ァ当たれ。」

そう言って一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)のお願いを無視して先に進む。

「いえーい即答速攻大否定、ってミサカはミサカはヤケクソ気味に叫んでみたり。
 でも他に行くアテもないのでミサカはミサカは諦めないんだから。」

一方通行(アクセラレータ)は「妹達(シスターズ)」を一万人以上殺してきた人間だ。
脳波リンクによって「妹達(シスターズ)」は記憶を共有させているので、その事をこの打ち止め(ラストオーダー)は知っている筈だ。
何なンだコイツは、と一方通行(アクセラレータ)はため息を吐きながらそう思った。
それが一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)との出会いだった。





五階建ての学生寮の前に着いても打ち止め(ラストオーダー)はついて来ていた。
一方通行(アクセラレータ)の部屋は不良達が襲撃に来たらしいが、標的がいないと知ったからか腹いせに部屋がメチャクチャに荒らされていた。
ドアもなく、テレビも真っ二つになり、ベットもひっくり返され、ソファの中の綿が飛び出たりともはや部屋とは呼べないくらいにボロボロに荒らされている。
こんないつ死ぬかもしれない状況でも、打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)から離れる事はなかった。
部屋と呼べるかどうかの部屋で二人は一夜を過ごす。
二時になって一方通行(アクセラレータ)は空腹で目が覚めた。
打ち止め(ラストオーダー)はテーブルクロスを身につけてがっくりと項垂れていた。
どうも一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)の毛布を無意識に引ったくり毛布代わりにして被っていた。
打ち止め(ラストオーダー)はどうにかして取り戻そうとしたが、睡眠中でも一方通行(アクセラレータ)の反射は適応されてるので、どんなに打ち止め(ラストオーダー)が頑張っても起こす事は絶対に不可能なのである。
一方通行(アクセラレータ)は被っている毛布を打ち止め(ラストオーダー)に投げ渡し何か食べようかと思ったが、台所の入り口を眺めた一方通行(アクセラレータ)はふてくされたようにソファの上に寝転がる。
夜の不良達の襲撃のせいで冷蔵庫は横倒しにされ、冷凍食品がビニール包装が飛び出ていた。
一方通行(アクセラレータ)は料理などはしないので冷凍食品を食べるようにしている。
しかし冷凍食品があの状態なので食べる事は出来ない。

「おはよーございますってもうこんにちはの時間なんだけど、ってミサカはミサカはペコリと頭を下げてみたり。
 お腹がすいたので何かご飯をご飯を作ってくれたりするとミサカはミサカは幸せ指数が三〇ほどアップしてみたり・・・」

「寝ろ。」

「うわーいサービス精神カロリー摂取量とも完璧なるゼロ、ってミサカはミサカはバンザイしてみたり。
 というかもう朝だよあさあさあさー、ってミサカはミサカはお腹を空かせながら今にも二度寝しそうなアナタに呼びかけてみる。」

「クソったれが、午後二時で朝かよ。」

寝起き最悪な一方通行(アクセラレータ)は目を開ける。
このまま「声」を反射して寝ることも出来るが打ち止め(ラストオーダー)はしつこく無駄だと分かっていても一方通行(アクセラレータ)を起こしに来るだろう。
さっさとこのガキを捨てにこよう、と考えついでに空腹を満たそうと思い玄関に向かう。
後ろで打ち止め(ラストオーダー)は後ろで何か言っているが一方通行(アクセラレータ)は無視して玄関に向かう。
打ち止め(ラストオーダー)は何かブツブツ言いながら一方通行(アクセラレータ)の背中を追いかける。
二人は大手外食店系列のファミレスで食事をとる事になった。
そこに着くまでの間、一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)は会話をしていた。
打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)の事で疑問に思った事を聞きそれを答えると言ったモノだ。
会話をしていて一方通行(アクセラレータ)は首を傾げた。
「実験」の最中で「妹達(シスターズ)」とはまともに会話が成立する事なんて一度もなかった。
なのに今は会話が成立している。
あの一戦で「何が」変わったんだろか、何が変わったか分からないが見えない「何か」が変わりつつあるようだ。
ファミレス店の入り口で緑のジャージをきて髪は後ろで纏めている女性がいつまで待たせるじゃん、と呟きながら傍から怒ってますオーラが感じ取れる。
一方通行(アクセラレータ)はそんな女性なんぞ気にもせずに中に入る。
ウェイトレスは打ち止め(ラストオーダー)の毛布一枚の姿を見て顔を若干引きつりながらも笑顔で迎え入れた。
窓際の席に誘導され適当に注文をとり運ばれてくるのを待つ。
レストランに入ってから随分と時間が経過してからようやく二人は食事を始める。
打ち止め(ラストオーダー)の料理は一方通行(アクセラレータ)が頼んだ料理よりも先に運ばれていたのだが、打ち止め(ラストオーダー)は一切手を付けなかった。
何故かというと。

「誰かとご飯を食べるのも初めてだったり、ってミサカはミサカは答えてみたり。
 いただきまーす、って聞いた事ある、ってミサカはミサカは思い出してみる。
 あれやってみたい、ってミサカはミサカはにこにこ希望を言ってみたり。」

打ち止め(ラストオーダー)は嬉しそうに笑いながら言った。
二人が食事をしていると打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)に話しかけてくる、それを聞いた一方通行(アクセラレータ)は呆れたような表情をして打ち止め(ラストオーダー)に言った。

「ホントなら昨日の時点で訊いておくべきだったと思うけどよォ、オマエどォいう神経してンだよ。
 俺がオマエ達にナニやったか覚えてねェのか?
 痛かったし苦しかったし辛かったし悔しかったンじゃねェのかよ。」

「うーん、ミサカはミサカは九九六九人全てのミサカと脳波リンクで精神的に接続した状態なんだけど。」

「あァ?それが何だってンだ?」

「その脳波リンクが作る精神ネットワークってものがあるの、ってミサカはミサカは説明してみる。」

「人間でいう集合的無意識とかってェヤツか?」

「うーぬちょっと違う、ってミサカはミサカは否定してみたり。
 脳波リンクと個体「ミサカ」の関係はシナプスと脳細胞みたいなものなの、ってミサカはミサカは例を述べてみる。
 「ミサカネットワーク」という一つの巨大な脳があるというのが正解で、それが全「ミサカ」を操っているというのが正しい見方、ってミサカはミサカは言ってみる。」

一方通行(アクセラレータ)は少し黙って打ち止め(ラストオーダー)の説明を聞く。

「「ミサカ」単体が死亡した所でミサカネットワークそのものが消滅する事はない、ってミサカはミサカは説明してみる。
 人間の脳で例えるなら「ミサカ」は脳細胞で、脳波リンクは各脳細胞の情報を伝達するシナプスのようなもの。
 脳細胞が消滅すると経験値としての「思い出(データ)」が消えるのでもちろん痛い、けどミサカネットワークそのものが完全に消滅する事はありえない、「ミサカ」が最後の一人まで消滅するまでは・・・・」

一方通行(アクセラレータ)は目の前で食器皿の上の料理と格闘している少女が、人間とは全く異なる構造した宇宙人のようなものに見えてしまった。

「ってミサカはミサカは考えていたんだけど、気が変わったみたい。」

その言葉を聞いた一方通行(アクセラレータ)は首を傾げる。

「ミサカは教えて貰った、ミサカはミサカの価値を教えて貰ったって断言してみる。
「ミサカ」全体ではなく、「ミサカ」単体の命にも価値があるんだって、この「ミサカ」が他の誰でもないこの「ミサカ」が死ぬ事で涙を流す人もいるんだって事を教えて貰ったから、ってミサカはミサカは胸を張って宣言する。
 だからもうミサカは死なない、これ以上は一人だって死んでやる事はできない、ってミサカはミサカは考えてみる。」

少女は言った、人間のように、人間のような、人間の瞳で真っ直ぐに一方通行(アクセラレータ)の顔を見て。
それは一つの宣言。
一方通行(アクセラレータ)の行ってきたことを決して許さないという、打ち止め(ラストオーダー)は一生あの時の事を忘れないという、恨みの宣言。
それを聞いた一方通行(アクセラレータ)は言葉が出なかった。
そういった感情を抱かれる事に気づいていても目の前で面と向かって本人の口から糾弾された事がなかったからだ。

「でもミサカはアナタに感謝している、ってミサカはミサカは言ってみたり。
 アナタがいなければ「実験」は立案されなかったらミサカ達は生まれてこなかったから、ってミサカはミサカは感謝してみる。」

打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)を迎え入れるような柔らかい声で言った。
それを聞いた一方通行(アクセラレータ)はとてもイライラした。

「何だよそりゃァ?
 全っ然、論理的じゃねェだろ。
 人を産んで人を殺して、ってそれじゃあプラスマイナスゼロじゃねェか。
 どォいう神経したらそれで納得できんだよ。
 どっちにしたって俺がオマエ達を楽しんで喜んで望み願って殺しまくった事に変わりねェだろォが。」

「それは嘘、ってミサカはミサカは断じてみたり。
 アナタは本当は「実験」なんてしたくなかったと思う、ってミサカはミサカは推測してみる。」

その言葉に一方通行(アクセラレータ)の頭はますます混乱した。
そんな一方通行(アクセラレータ)をよそに打ち止め(ラストオーダー)は言葉を続ける。

「あの時を思い出して、あの時の事を回想して、ってミサカはミサカはお願いしてみる。
 アナタはミサカに何度か話しかけている、でその目的は何?ってミサカはミサカは分かりきった質問をしてみる。」

一方通行(アクセラレータ)は実験中に何度か「妹達(シスターズ)」に話しかけている。
しかしなぜ話しかけた理由は一方通行(アクセラレータ)にも分からない事だ。
それにその内容は全部「妹達(シスターズ)」を罵倒するような言葉ばかりだった。
そんな罵倒するような会話に何の意味があるのか一方通行(アクセラレータ)は考えた時、打ち止め(ラストオーダー)一方通行(アクセラレータ)の見えない変化を分かっているかのように説明する。

「それらが仮に否定してほしくて言ったいた言葉だとしたら?
 アナタの言葉はまるでミサカを脅えさせるように、ミサカにもう戦うのは嫌だって言わせたいように、ってミサカはミサカは述べてみる。
 もしあの時にミサカが戦いたくないって言ったら?ってミサカはミサカは終わった選択肢について語ってみる。」

妹達(シスターズ)」がみんなそろってそんな事をしたくないと脅えた目で頼み込んでいたら。
彼はどんな行動に出ていただろう?
きっと彼はそれを望んでいた。
だからこそ彼は問いを発した、何度も何度も、それでも答えは返ってこないから少しずつ問いはエスカレートしていきいつしか目を覆うほどの暴虐の嵐となってしまった。
自分を止めてくれる誰かが欲しかった。
彼は思い出す、その操車場で戦った二人の無能力者の事を。
一人は何度でも何度でも立ち上がった、一人は一方通行(アクセラレータ)よりも強力な能力を持っていてもそれを誰かの為にその力を使うといった。
最後の最後、あの少年に拳に打ち倒されるその瞬間、一方通行(アクセラレータ)は何かを考えていただろうか?

「ちくしょうが。」

そうして、彼は目を閉じて天井を見上げて一言だけ言った。
打ち止め(ラストオーダー)からの声はない、彼女は今どんな顔をしているのだろうか、と一方通行(アクセラレータ)は思った所で違和感を感じた。
いつまで経っても打ち止め(ラストオーダー)からの声がない。
次の瞬間、ごとんと鈍い音が聞こえた。
打ち止め(ラストオーダー)が目の前のテーブルに突っ伏している。
眠いとか疲れたとかそういった単純な理由で突っ伏しているのではない事は一目でわかった。
まるで熱病にでもうなされているような感じがした。

「あ、はは、こうなる前に研究者さんとコンタクトを取りたかったんだけど、ってミサカはミサカはくらくらしながら苦笑いしてみたり。
 ミサカは検体番号(シリアルナンバー)は二〇〇〇一、一番最後でね、ってミサカはミサカは説明してみたり。
 ミサカはまだ肉体的に未完成な状態だから、本来なら培養器の中から出ちゃいけない筈だったんだけど、ってミサカはミサカはため息をついてみる。」

それでも彼女は笑っていた。
熱病に浮かされたような大量の汗を噴き出していてもそれでも笑っていた。
それを見た一方通行(アクセラレータ)の顔から感情が欠落していくように表情が失われていく。
彼にあるのは学園都市最強のチカラだがそんなチカラでは誰も守れない。
一方通行(アクセラレータ)は黙って席を立つ。

「あれ、どっか行っちゃうの、ってミサカはミサカは尋ねてみる。
 まだご飯余っているのに。」

「あァ、食欲なくなっちまったわ。」

「そっか・・・ごちそうさまっていうのも言ってみたかった、ってミサカはミサカはため息をついてみる。」

「そォかよ、そりゃ残念だったな。」

その場に打ち止め(ラストオーダー)を残して一方通行(アクセラレータ)は伝票を掴んでレジに向かった。





そして彼は今、研究所の前にいる。
あの時、あの場で彼が出来る事は何もない、だから何もしないで立ち去った。
だから彼はここに来た。
こんな人間が今さらそんな事を願うなど筋違いだと分かっていてもそれでもたった一人の少女を助ける為に。 
 

 
後書き
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