スーパーヒーロー戦記
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第49話 飛べ!グレンダイザー
日本でも一番綺麗と呼び名の高い山。富士山。その富士山上空を一基の円盤が飛行していた。
黄色と青のツートンカラーの小型円盤である。
「こんにちわ。マウント富士」
上空から見下ろす富士山に向かいその円盤のパイロットはそう言う。そして、その視線を富士山の麓に設けられた施設へと向ける。
「光子力研究所も相変わらずみたいだな。半年も此処に帰って来てないから心配してたけど、あんまり変わってないみたいで安心したよ」
一人そう呟き進路を変える。どうやら此処に来たのは只見に来ただけのようだ。
「さてと、そんじゃ次は海鳴市だな。あいつの驚く顔が目に浮かぶぜ」
そう呟きそれの操縦者である兜甲児は嬉しそうに笑っていた。
***
此処八神家の庭において、なのはは一人縁側に座りながらレイジングハートを見つめていた。
「ねぇレイジングハート。今の私の魔力ってどの位なの?」
【バリアジャケットは纏えるようになりましたが魔力値はとても低い状態です。今の状態ではディバインバスターもスターライトブレイカーも撃てないのが現状です】
「あうぅ…それじゃ以前の弱い私に逆戻りしちゃったんだぁ」
一人ガックリと項垂れる。レイジングハートが言っていたその武器はなのはの中でも特に強い武器だ。その二つが使えなくなったのは正直かなり痛い。
特にスターライトブレイカーを使えないとなるといざ怪獣が攻めて来た際に倒す事が出来ないのである。
ふと、なのはは空を見上げる。
「ハヤタさん達…今頃どうしてるかなぁ?」
そう呟いていた。ハヤタ、即ちウルトラマンが地球を離れてからと言うもの、奇跡的に怪獣の出現は確認されていない。それは有り難い事だ。
だが、また何時怪獣が出てきて町を破壊するかも知れない。油断は出来ない状況でもあった。
「何一人で黄昏てんだよちびっ子」
「んにゃっ!」
突如、なのはのデコに手を当ててグリグリしてくる感覚を感じた。やっていたのはヴィータであった。
「いたっ、痛いよヴィータちゃん!」
「そんな所で黄昏てるお前が悪い。お前みたいなちびっ子には似合わない仕草なんだよ」
「あぁ! ちびっ子って言ったなぁ! そう言うヴィータちゃんだってちびっ子じゃない!」
「残念でしたぁ。あたしはこう見えてもお前よりずぅっと年上なのさ。だからあたしには敬語使えよなぁ」
「え~~~」
縁側で早速ヴィータとなのはがじゃれあっている。守護騎士ことヴォルケンリッター達が家に来てからこれで3日目になる。初めは皆とても堅苦しく「主」だの「命令」だのとやかましかった。
其処ではやてが…
「私はもうあんたらに命令せぇへんよ。皆は家族みたいなもんやもん。これからは家族として接してなぁ」
と、言って来たものだから守護騎士達全員が戸惑ってしまっていた。恐らく今までそんな事を言われた経験はなかったのだろう。
が、それも2~3日したら慣れるものだ。今では皆すっかり此処八神家に馴染んでいた。
「はやてちゃん、そろそろご飯の支度しましょう」
「分かったでぇシャマル。手伝いお願いなぁ」
すっかりエプロン姿が似合う様になったシャマルと共に料理を作る。そして庭ではシグナムが自己鍛錬に精を出し、ザフィーラと光太郎の二人は組み手を行っていた。
「突きが甘いな。もう少し体重を乗せて殴るようにしてみろ」
「こうですか?」
お互い良い組み手相手が見つかって嬉しいのだろう。結構盛んに行っている。それから食事も大変賑やかになった。
何せいきなり家族が増えたものだから、今まで一人寂しかった食卓が一気に華やかになったのだ。
はやてにとってそれはとても微笑ましい光景でもあった。失った筈の家族がこうして得られた。孤独の寂しさを知っていた彼女にとってそれはとても嬉しい事でもあった。
***
翌日、此処海鳴市上空を一基の円盤が飛来していた。
「相変わらず此処の海は綺麗だなぁ…半年前と何も変わってない」
上空から海鳴市を見ながら甲児は呟いていた。そして徐々に高度を落としていく。
「どぉれ、久しぶりになのはの奴をからかってやるとするか」
意地悪な笑みを浮かべながら甲児の操る円盤が高町家前に着陸する。円盤から飛び降りた甲児が玄関前に立ちインターホンを鳴らす。
だが、全く反応がない。
「ありゃ? 留守なのか…残念だなぁ。折角会いに来てやったってのに…」
半ば手持ち無沙汰気味な気持ちになりながらも甲児は再び円盤に乗り出し空へと舞い上がる。そして、海鳴市を低空で飛行していく。
町では空飛ぶ円盤を見て驚く人々や指差す人々が殆どであった。
「いっしっしぃっ。まさかこれを操縦しているのが同じ地球人とは夢にも思わないようなぁ」
そんな風に笑いながら飛んでいる時であった。突如円盤の動きが止まったのだ。
まるで見えない何かに掴まれたようである。
「な、何だ?」
故障? それはおかしい。出発前にちゃんと点検したし、その際問題はなかった。では一体何故?
疑問に思う甲児を乗せた円盤が今度は突如地面に無理やり不時着させられた。飛び立とうにもやはり動かない。
「参ったなぁ、何処か故障でもしたのかぁ?」
愚痴りながら円盤から出ようとハッチを開ける甲児。その直後、甲児の目の前に一人の女性が現れ持っていた剣を振り下ろしてきた。
「異星人め! 覚悟ぉ!」
「うおわぁっ!」
***
時は少しだけ遡る。その日も空は快晴、絶好の洗濯日和であった。
そして、此処八神家でも皆揃って洗濯をしている。皆自分の下着や上着、それにタオルや布団カバーなどを洗って干している。
この天気なら数時間で乾くだろう。お日様様様であった。
そんな時、とても慌てた形相でシャマルが駆けて来た。
「は、はやてちゃん大変よ! 空の上に変なのが飛んでるのよ!」
「変なの?」
首を傾げながらはやては空を見上げる。其処には確かに一基の円盤が飛んでいた。やがて円盤は高度を落とし、地面に着地した。
「あそこって…私の家だ!」
「何! それじゃもしかして…なのはちゃんを狙って…」
「あれが以前高町の言っていた異星人とか言う奴等なのか?」
途端に全員に緊張が走る。もしそうだとしたら此処八神家にも来るかも知れない。
そうなればなのはだけじゃなくはやても危ない。
「二人はすぐ家の中に隠れて!」
「シャマル。クラールヴィントで奴が上空に来たら地上に降ろせ! 出てきた所を私のレヴァンティンで叩き切る!」
「分かったわ、でも気をつけてね!」
各自持ち場についた。なのはとはやての二人は家の中に隠し、一同が庭で陣取る。丁度其処へ円盤が低空飛行で飛んできた。
「今だ、シャマル!」
「えぇ!」
直ちにシャマルが手から細い糸を放ち円盤の動きを止める。そのまま地面へと不時着させる。
一同に緊張が走った。あの円盤にはどんな武器が内臓されているか分からないのだ。
と、円盤のハッチが開くと中から青い服を着て赤いフルフェイスヘルメットを被った男性が現れた。顔立ちが見えないので地球人と判別出来ない。其処へシグナムが飛び掛りレヴァンティンを取り出す。
***
時間は最初の頃に戻る。甲児目掛けて飛んでくるレヴァンティン。
「危ねぇっ!」
咄嗟にそれを白歯取りで受け止める甲児。だが、それは二段構えの攻撃であった。
「くたばりやがれ異星人!」
「なにぃ!」
今度は横からヴィータが自身のデバイス【グラーフアイゼン】を振るって襲い掛かってきた。咄嗟にそれをかわして円盤から逃げる甲児。
庭に降り立った後其処で待っていたのはザフィーラのヘッドロックであった。
「捕えたぞ!」
「んぎゃぁぁぁぁ! 何すんだ離せテメェ!」
「往生際が悪いぞ異星人! 主をどうするつもりだ? 事と次第によっては…」
目の前でシグナムの目が据わっている。かなり不味い状況だと言う事は理解出来た。
「た、タンマタンマ! 俺異星人じゃねぇよ。列記とした地球人だって!」
「嘘付け、主から聞いたぞ。あれはUFOと言って異星人が乗る円盤と言う者だろう。それを使う貴様が地球人な筈がない!」
「それは俺が作ったTFOだ! 頼むからヘッドロック外してくれ! ヘルメット取れないからさぁ!」
未だにザフィーラのヘッドロックを食らってる状態な為甲児がジタバタしている。どうやらそれほど脅威ではないようだ。一同が緊張する中、ザフィーラが静かにヘッドロックを解いた。
「ふぃ~、酷い目にあったぜ…今証拠を見せるよ」
そう言って甲児がヘルメットを脱ぐ。其処には黒い髪の日本系の青年の姿があった。
「あぁ、甲児さん!」
「よっ、元気にしてたかぁなのは?」
甲児と分かるなりなのはは庭に飛び出す。そして互いに再会を喜び合うのであった。
「高町、その男はお前の知り合いなのか?」
「うん、兜甲児さんって言って私の知り合いなんです」
「そ、俺は兜甲児。日本じゃちょいとばかし名が知れてるかな?」
若干自慢げに呟く甲児。だが、それに対して守護騎士達は皆首を傾げた。
「は? お前なんか知らないぞ」
「なぬっ! どう言うこった!?」
「こ、甲児さん…私から事情を説明します」
その後、なのはは甲児に今まであった事を話した。新たな組織ゴルゴムの出現、南光太郎の存在、そして此処に居る守護騎士達の事を。
守護騎士達の事を話せば、甲児は驚くかと思っていた面々だったが、案外その手の事で驚く様子は見られず、寧ろ光太郎の素性に対し甲児はある種の驚きを受けていた。
「つまり、あんたは新しい仮面ライダーって事なのか?」
「そうだよ。僕は南光太郎。又の名を仮面ライダーBLACKと言うよ」
「兜甲児だ。前はマジンガーZってロボットに乗ってたけど今はこの自作型円盤のTFOのパイロットをしてるんだ」
「うっひゃ~、凄いなぁ甲児兄ちゃんって。これ自分で作ったんかぁ?」
「おう、俺もうスッカリインテリ派でさぁ、こんな凄い物も発明できちまうんだよ」
すっかり天狗になってる甲児である。心なしか鼻が伸びてる気がする。
「凄いですね。これでもう皆から馬鹿にされませんね」
「ハッハッハッ、もう誰にも俺の事を脳筋なんて言わせねぇぜ!」
「でも性格は変わってないですよね」
「うっ…其処を言う?」
なのはの鋭い目線と言葉が突き刺さる。甲児の内面を一番良く知ってるのは彼女だ。故に彼女の対応も厳しい。
「なぁなのはちゃん、甲児兄ちゃんってどんな性格やの?」
「う~ん、スケベ」
「ド直球に言うなよ!」
正しくド直球であった。そんな事を言われたら普通誰だって避けようとする。が、はやては違った。
「そっかぁ、それなら甲児兄ちゃんに聞いてもええかな? 実はなぁ、今シグナム達のバリアジャケットを考えとる最中なんよ」
「バリアジャケットって、なのはが何時も戦闘の際に来てるアレだろ?」
「うん、そうだけど…」
言いながらなのはは気づいていた。甲児の目が怪しく光る事を。
「フフフ、俺は何て絶好のタイミングで帰ってきたんだ。正しく俺にピッタリの仕事じゃねぇか! この俺にドンと任しておけぃ!」
「頼もしいなぁ、ほなら早速上がってぇな」
何の迷いもなく甲児を家に上げる。其処は丁度リビングであった。そしてその机の上には何枚も衣装の書かれた紙が置かれてある。どれも年頃の女の子が思いつきそうな服装ばかりである。
「何かパッとしねぇなぁ…よし、俺の自慢の一品を執筆してやるよ」
そう言うと早速紙とペンを持ち出す。が、その前に甲児はある事に気づいた。
「っと、その前に…服のサイズが分からんと書けないなぁ…ってな訳で採寸させてくれぃ!(勿論シグナムさんとシャマルさん限定でな」
()内は小声である。明らかに目元が卑しい輝きを放っているのに気づく一同。
「あ~、採寸ならも済んどるからもう必要あらへんよぉ」
「ガ~~ン!」
はやての言葉に大層ショックを受ける甲児。その場に崩れ落ち激しく落胆する。
「畜生。採寸するついでに(ピー)とか(ピー)とかしたかったのに…」
「やっぱり中身は変わってませんね。甲児さん」
半ば安心したようなガッカリしたような感じがするなのはであった。とにかく、早速はやてから詳細なデータを聞き出した甲児は早速執筆に入った。それから5分後。
「ほい、まずはシグナムさん専用の奴だ!」
と言ってまず本人に見せる。
「……!!!!!!!」
それを見た途端、皆から見ても明らかに分かる位にシグナムが赤面しだした。
「か、兜…私にこの姿で戦えと言うのか?」
「勿論! 絶対に似合ってると思うぜ!」
「ふぇ~、どんな格好なん?」
気になったのかはやてとなのはがその絵を見る。
其処に書かれていたのは赤と黒のツートップの柄のぴっちりスーツであり、しかも胸元がパックリと開いたかなりきわどいスーツであった。
「どうでぃ、絶対に似合うだろう!」
「さ、流石や甲児兄ちゃん! こないな発想私等にはなかったわ!」
「私も入ってるの!?」
何故か自分も入れられた事に驚くなのは。
「ってな訳でどうやシグナム。この格好でえぇか?」
「主の命令であったとしても、そんな姿で戦うのは死んでも嫌です!」
「え~、似合ってると思ったのになぁ~」
非常に残念がる甲児。なのはの言った通りであった。兜甲児はとんでもないドスケベであった。
「んじゃ次はシャマルさんかな」
「えぇ! わ、私のもあるの?」
先ほどのあれの影響か若干引き気味にその絵を見る。そして、シャマルの場合は目を点にして凍りついた。
再びシャマルから絵を受け取り二人がそれを見る。
其処に書かれていたのは頭に鳥の様な翼を生やしビキニスーツに身を包んだ絵であった。
「やっぱシャマルさんはこう神秘的な風が似合うと思ってさぁ」
「う~ん、頭に羽なんて斬新なアイディア無かったわぁ」
「斬新過ぎると思うんだけど…」
最早なのはにはついていけないレベルであった。当然この後シャマルに聞いたが当の本人も首を横に振る始末であった。
「ちぇっ、それじゃ後は手抜きで書いたこれしかねぇじゃん」
そう言ってその場に絵を置く、其処に書いてあったのは顔に赤い頭巾を被りマフラーを巻いただけ。即ちほぼマッパの姿であった。
流石にそれを見た途端全員が凍りついたのは言うまでもない。
「こ、甲児君…これは一体…」
「いんやぁ、顔隠してるから後は曝け出してても問題ねぇかなぁ…て思ってさ」
「問題大有りだぁ!」
後ろから鞘に収めた状態のレヴァンティンの一撃が放たれる。その一撃を諸に脳天に食らった甲児はその場に倒れこみ机の上に赤い水溜りが出来上がる。
「うわわぁ! 大変やぁ! 甲児兄ちゃんが死んでもうたぁ!」
「大丈夫だよはやてちゃん。甲児さんこれ位じゃ死なないから。それよりちゃんと綺麗にして下さいよぉ甲児さん。机の上が鉄臭くなっちゃうじゃないですかぁ」
「ちったぁ心配しろよお前…」
額からドロドロ血を流しながら愚痴る甲児。自業自得とはこの事だろう。
さて、残るのはザフィーラとヴィータだけなのだが、どうも甲児はその二人になると余り乗り気じゃないようだ。
「う~~ん、お前等の場合結構適当に考えたからなぁ」
「何だよそれ! つまりお前はシグナムやシャマルの時だけ真剣に考えたってのかよ?」
「ご名答! 正にその通r…」
いい終わる前に甲児の顔面にアイゼンが叩きつけられた。叩きつけられた甲児の顔が梅干みたいにしわくちゃになってる。
「ふぉ、ふぉりあふぇぶふぉれふぉふぃふぉよ(と、とりあえずこれを見ろよ」
そう言ってザフィーラとヴィータの二人に絵を見せる。
まず、ザフィーラの絵だが…虎柄の布を体に巻いただけであり、ヴィータに至ってはどこぞにでも居るようなヒーローを思わせる格好なのだが、何故かそのデザインは何処か卑猥さが感じられた。
「おい、兜…」
「何だよこれ…」
「だから言っただろう。お前等のは結構手抜きだったって」
手抜きにも程があった。結局甲児は何の役にも立たないと言う事が判明した為、その後なのはとはやての二人で思考錯誤した結果、今のバリアジャケットが完成したと言われている。
因みに甲児が仕切りに「もっと肌を露出」だとか「もっと色っぽく」だとか言っていたのが五月蝿かったのか最終的にはザフィーラと光太郎の手により強制退出させられたのは記憶に新しい。
そんなこんなで、粗方デザインが完成し、一息つこうとした頃、甲児の乗ってきたTFOから音が鳴り出していた。
「いけねっ、今日は宇門博士の宇宙科学研究所に顔だす約束してたんだっけ!」
「宇宙科学研究所? 何ですかそれ」
聞いた事の無い名前であった。
「要するに宇宙について研究している場所なんだ。時代はもう宇宙へ向けて進出する時代だからな。そんで俺の円盤を一目見たいってんで其処の宇門博士が俺の事を呼んだんだよ」
甲児が説明する。が、その直後はやてとなのはの二人の目が盛大に輝いたのを知る。
「宇宙! それ本当ですか!?」
「宇宙キターーーーーーーー!」
「うわっ! 何だお前等変にテンション高いぞ!」
そりゃ驚く。いきなりテンション高くされても困る。
「だって宇宙ですよ宇宙。私一生の内に宇宙行けるなんて夢にも思ってませんでしたよ」
「私も私も、一度で良いから無重力ってのを体感してみたかったんや!」
やはりお子様である。どうやらついていきたい様子だ。しょうがないなとばかりに甲児は苦笑いを浮かべながら頬を搔く。
「しゃぁねぇなぁ。連れてってやるからTFOに乗れよ」
「やったぁぁ!」
「流石甲児兄ちゃんやぁ」
「調子良いなぁてめぇらは」
先ほどまで散々好き放題言ってたのにこれである。相変わらず子供は都合が良い。が、其処で不穏な空気を出していたのが例の守護騎士達であった。
(シグナム。これは不味いわよ。はやてちゃんだけを行かせるなんて危ないわ)
(私もそう思う。あの兜とか言う男まだ信用する訳にはいかんからなぁ)
(だがどうする。見るからにあのTFOとかに乗れる者といったらせいぜい一人位だぞ)
(となるとこの中で一番小さい奴が行くべきって事だな)
最後にヴィータがそう言う。すると皆の視線が一斉にヴィータに向けられる。それを見たヴィータが嫌な予感を察する。
***
月の裏側に位置する場所。其処にはある人工物が出来上がっていた。その出来栄えは地球の技術では考えられない代物であった。
それもその筈。あれこそベガ星連合軍の地球拠点基地【スカルムーン基地】なのだ。
そして、その基地の全指揮を任されているガンダル指令とその側近であるブラッキーが地球の映像を見ていた。
「これが地球か、文明レベルの低さは目を見張るな」
「我々の星がまだ古代時代の技術を使ってるとは時代遅れも此処までくると凄まじいですな」
ガンダルとブラッキーの二人が見ていたのは地球の文明レベルであった。どの文明も彼等の星のレベルに比べると著しく劣る。
取るに足らない存在であった。
「この程度の防衛力ならば侵略は容易いな。早速攻撃を開始するぞ! 円盤獣を差し向けろ! ブラッキー、前線での指揮は任せるぞ」
「お任せ下さいガンダル指令。必ずや勝利の吉報を持って帰って参ります」
***
甲児の操縦するTFO内ではヴィータが一人不満そうな顔をして座っていた。その両端にはなのはとはやてがTFOから映る光景を楽しんでいた。
「どうしたヴィータ。何時までもしかめっ面してたら疲れるだろう」
「別に良いだろう? お前には関係ない事だよ」
そう言って未だにしかめっ面になる。実際の所TFO内は本来一人乗りな為少女とは言え三人も乗っては流石に狭い。
その為乗れるのと言えばヴィータだけであった。即ち自分が一番小さいと言う事実を認められずヴィータは未だにしかめっ面を決め込むのであった。
「どうしたのヴィータちゃん、外の景色綺麗だよぉ」
「うがあぁぁぁぁ! 人が悩んでるのにてめぇはよぉぉぉ!」
突然切れだしたかと思うと突然なのはの両頬を思い切り掴み引っ張り出す。
「いふぁいいふぁい! いふぁいよヴィーファふぁん!」
「こらヴィータ! なのはちゃんに何しとるんや! 早ぅ離ぃや!」
「おいコラお前等! 狭いんだから暴れるんじゃねぇ!」
只でさえ狭いTFO内で暴れられたら溜まったものじゃない。忽ちフラフラ飛行となりだす。そんな状態のまま一同は宇宙科学研究所近くの牧場の上空を飛行していた。
「ん? あそこは牧野牧場じゃねぇか! 丁度良いや。此処で一旦着陸するとすっか…お前等いい加減大人しくしろ! 俺のTFOぶっ壊す気か?」
後ろに向かい怒鳴る甲児。後ろでは未だに三人のお子様が暴れまわっていた。元気があるのは良い事だがあり過ぎても困り者である。
丁度その頃、牧野牧場の牧場主である団兵衛は望遠鏡で降り立つTFOを見つけた。
「うほほぉい! 円盤じゃ円盤じゃぁ!」
「ちょっとお爺ちゃん! 牧場の仕事ほっぽって何処行くつもりよ! 全部大介さんに押し付けてるじゃない!」
「何を言う取るかひかる! ワシは宇宙人と仲良くなろうの会の会長なんじゃぞ! これをほっぽって行けるかぃ!」
娘のひかるにそう言ってTFOに向かい走り出す。ハッチが開き、中から甲児が現れだす。
「あ、あり? 何だ甲児君かぁ…」
「ハハッ、ガッカリさせちゃいましたかね。団兵衛さん」
「何々、君も立派な宇宙人と仲良くなろうの会の会員じゃしな。ところで後ろの子達は誰じゃ?」
後ろで大人しくなってる三人を団兵衛が見つける。
「あぁ、俺の知り合いですよ。ちょっとこれから宇宙科学研究所へ行く予定でしたからね」
「こんにちは」
なのはとはやてが揃って挨拶をする。その中、ヴィータが一人不貞腐れてたのではやてに「挨拶しなさい」と言われたので渋々するのであり。
「そうかそうか、君達も宇宙人と仲良くなろうの会に入りたいんじゃな? わしはその会の会長を務めておる牧野団兵衛じゃ」
「宇宙人と仲良くなろうの会?」
「要するに宇宙人と対話したり実際に仲良くなろうとする会のことさ。因みに俺もその会員なんだぜ」
自慢げに甲児が語る。
「なぁ、何で宇宙人なんかと仲良くなろうとしてんだ? 面倒臭いじゃん」
そんな中、ヴィータが面倒くさそうに尋ねる。それに対し甲児が指を鳴らす。
「分かってねぇなぁヴィータ。良いか? 今のまま行ったら人類はいずれエネルギーを使い果たしちまう。それを回避するには宇宙に進出して外宇宙の人達との貿易をするのが良いんだよ。だから俺はこの会に入ったんだ」
甲児が説明を入れた。するとそれを聞いていたヴィータが呆けた顔をしている。
「んだよ、そんな変な顔で人の事見やがって」
「嫌、お前案外頭良かったんだな…てっきりスケベの馬鹿かと思ったけど」
「ったりめぇだ! 伊達にミッドチルダに留学してた訳じゃねぇんだぞ!」
心外だとばかりに言う。すると、こちらに向かい車の走ってくる音が響いた。それは一台のジープであった。それに乗っているのは半ば白髪が混じった髪に整ったヒゲを持った男性であった。
「此処に居たのか甲児君。君のTFOが見えたからもしやと思って来てみたんだ」
「すみません宇門博士。こちらからお伺いするつもりでしたが」
「嫌々、ところで其処のお嬢さん方は?」
「紹介します」
甲児が宇門博士にも三人を紹介する。それを聞いた宇門博士は淡々と頷く。
「なるほど、いやぁ君達の年代で宇宙に興味を持ってくれるとは嬉しい限りだよ。私もね、人間は近い将来宇宙に活動を広げるべきだと思っているんだよ」
「ホンマですか? そりゃ凄いわ。宇宙時代の到来って奴ですねぇ」
「そうさ、何時までも人間は地球に留まるべきじゃないんだ。人間はいずれ宇宙に進出して外宇宙の仲間入りをすべきなんだ。その為の第一歩を俺が考えてる宇宙ステーションなんだ」
「宇宙ステーション? 何だそりゃ」
甲児から言われたその言葉にヴィータは首を傾げる。
「簡単に言えば宇宙に浮かぶ居住区みたいなもんさ。と言ってもまだ設計図すら完成してないんだけどな」
頭を搔きながら言う甲児。だが、それだけでも凄い事である。近い将来人類は宇宙に進出し宇宙時代に突入すると言うのだ。夢物語が現実になると言うのはこの事であろう。
「そう言えば、大介には会ったかい?」
「大介? いえまだですけど」
「そうか、おい大介!」
宇門博士が近くで作業をしている青年に向かい叫ぶ。それを聞いた青年が汗をタオルで拭いながらこちらにやってきた。
「何です? 父さん。今作業中で忙しいんですけど」
「こちらが兜甲児君。アメリカのNASA円盤研究の生徒なんだ」
「宜しく」
「……」
甲児が握手を求める。大介は静かにそれに応じるとすぐに宇門博士の方を向いた。
「父さん、僕は作業があるからこれで」
「待ち給え、せめてもう少し話でもしたらどうだい?」
「冬は駆け足で迫ってきます。まごまごしてたら動物達が寒がってしまいますよ」
そう言って大介は再び作業に戻ってしまった。甲児は半ば不満そうな顔で青年を見つめる。
「何だよあいつ。俺の作ったTFOに見向きもしなかったなんて…」
甲児としてはそれは不満の種だ。このTFOは彼にとって自慢の品なのだ。それを無視されるのは以外に腹が立つ。
「まぁ仕方ないか。ともかくまずは宇宙科学研究所内に案内するとしよう」
「お願いしま…ん!?」
ふと、甲児は上空を飛来する何かを見つけた。それは球状の飛行物体であった。紛れも無い。あれは間違いなく円盤でもあった。
甲児は見覚えが有る。つい半年前には頻繁に異星人が侵略に来ていたからだ。
今までは円盤を見る度撃墜しようとしていたが今は違う。来るべき宇宙時代の後輩として先輩に接する気持ちを持たねばならないのだ。
「願っても無いタイミングだぜ! 早速TFOでコンタクトだ!」
「あぁ、私達も私達もぉ!」
「なぁに言ってんだよ。ガキンチョが一緒じゃ纏まる話も纏まらなくなるだろうが。オチビちゃん達は其処に居なさい」
なのは達をその場に置き甲児は一人TFOに乗り込む。
「止せ!」
だが、それを止めるかの様に先ほどの男、宇門大介が甲児の肩を掴む。
「離せよ! 円盤が行っちまうじゃねぇか!」
「あの円盤に近づくな! 殺されるような物だ!」
「何だと? お前あれだろ。半年前に侵略しに来た異星人の類だと思ってるんだろうが!」
「それは一部の異星人が考えた末の行為だ。だが奴等は違う!」
「お節介は御免だぜ!」
大介の手を払い除けてTFOに乗り込む。それに対し尚も大介は食らい付いた。
「どうしても行くと言うのか?」
「生憎行くなと言われると行きたくなる主義でね」
「どうなっても知らないぞ!」
「お前に心配される言われはねぇよ!」
喧嘩越しの会話を区切ると甲児は颯爽とTFOを操り飛行する円盤へと近づく。
「ハロー、ハロー、僕はこの地球出身の兜甲児です。君は誰だい? 此処には観光に来たのかい?」
通信機を手に取り通信を始める。しかし応答が無い。
「あり? 日本語通じないのか? となると英語とかか? それとも中国語?」
言葉の詮索をする甲児。だが、その突如円盤がTFO目掛けて攻撃してきたのだ。
「うわっ!」
咄嗟に回避する。だが、其処へ立て続けに攻撃を行っていく。
「待ってくれ! 僕は敵じゃない。君達の友人だ! 分かってくれ!」
必死に叫ぶも円盤は聞く耳を持たない。それどころか前以上に攻撃の手が激しくなっていく。
「くそっ、こいつらも侵略者だってのかよ! 舐めんじゃねぇぞ! このTFOにだって武器は備わってんだ!」
ヒラリと円盤の攻撃を掻い潜り、上部へと躍り出る。TFOの前方から小型ミサイルが発射される。それは目の前の円盤に命中し、それを吹き飛ばした。
「へん、ざまぁ見ろ!」
残骸となって落下する円盤に向かい甲児が叫ぶ。だが、その時上空から更に巨大な円盤が飛来してきた。大きさは先ほどの円盤の約5~6倍はある。
さらに驚く事にその円盤から手足と顔が現れた。姿形は亀のそれにも通じる姿をしている。
「くそっ、宇宙怪獣かよ! TFOじゃ部が悪いぜ!」
更に立て続けに先ほどの円盤が大量に降り注ぐ。忽ち攻撃の雨霰に晒されてしまった。必死に攻撃を避け続けているがそれにも限界がある。
***
地上ではこの惨状が間近で見えた。
「甲児さん! レイジングハート。すぐに甲児さんを助けに行かないと!」
【残念ながら無理です。今のマスターには飛行能力が失われていて飛行出来ないのです】
「そ、そうなの!」
ショックであった。まさか魔力の激減だけでなく飛行能力まで失ってしまっていたとは。
「はやて、あたしが行って来るからどっかに隠れてろ!」
「気をつけてな、ヴィータ!」
はやての言葉に強く頷くと待機中のアイゼンを手に取る。
「行くぞ! アイゼン」
赤い閃光が放たれ、ヴィータの姿を赤を基調としたバリアジャケットへと変えていく。なのはとはやてがデザインした新しいバリアジャケットである。
「潰れてろぉ!」
飛翔し、TFOの周囲を飛んでいた円盤をアイゼンで叩き落す。煙を巻き上げながら円盤は爆発していった。
「助かったぜヴィータ」
「別に助けたくて助けたんじゃねぇよ。はやての身が危ないからこうしただけだ」
「へいへい」
そう言う事にしておく事にした。だが、状況は明らかに不利であった。円盤の数は未だに多く、更にはその後ろには巨大な宇宙怪獣が居るのだ。
如何に守護騎士と言えども宇宙怪獣が相手では少々分が悪い。
(くそっ、だから言ったのに…)
一方で、大介は苦い顔で上空の光景を目の当たりにしていた。このままでは二人はいずれ撃墜されてしまう。
「甲児さん、ヴィータちゃん…」
「二人共…」
隣では二人の身を案じる幼い少女達の姿があった。大介は迷った。あの状況を覆すにはアレに乗るしかない。だが、乗りたくなかったのだ。
(乗りたくない…あれにはもう、乗りたくないんだ!)
必死に首を横に振り頭に浮かんだ事を否定する。が、その時突如大介の脳裏に浮かんだのは紅蓮の炎に焼かれる都であった。
(くっ…奴等が…ベガ星連合軍がこの星に来たと言うことは…嫌だ! この美しい星を焼かれてたまるか!)
覚悟を決めた大介は一人ある場所に向った。この状況を覆す為に…
***
上空では甲児の操るTFOとヴィータの周囲を敵の円盤が取り囲んでいた。数は圧倒的に多い。
「畜生! ミサイルも撃ち尽くしちまった」
「こっちもそろそろヤバイな…畜生、こんな事ならもっとカードリッジ持ってくりゃ良かった!」
どうやら二人共攻撃する手段を失ってしまったようだ。それに逃げようにも回りを取り囲まれてしまっていては打つ手がない。
だが、その時であった。突如宇宙科学研究所のダムの部分が開く。
「何だ?」
「何か出てくるぞ」
二人が見る。其処から出て来たのはこれまた大きな円盤であった。白と赤の二色の円盤の前方にはロボットの頭部と思わしき部分が取り付けられていた。
「二人共下がるんだ! 奴等の相手は僕がする」
「な、その声…」
現れた円盤から声がした。甲児はその声に聞き覚えがあった。そんな中、現れた円盤【スペイザー】は小型円盤郡へと突っ込んでいく。
「これ以上貴様等の好きにはさせないぞ! スピンソーサー!」
円盤の両端から刃物のついたソーサーが放たれる。それは弧を描きながら飛行し斜線上の小型円盤郡を蹴散らしていく。
更にはロボットの腕からビームが放たれたり円盤を溶かす特殊液などが放たれ小型円盤を瞬く間に壊滅させてしまった。
「残るは円盤獣だけか…」
巨大円盤と円盤獣が向かい合う。突如、円盤獣が地面に降り立った。空中戦では不利と判断したのか地上に降りたのだろう。だが、それはまた誤算でもあった。
「シュート、イン!」
パイロットの掛け声と共に操縦席がロボットの口部分へと移る。
「ダイザーGO!」
円盤から飛び出すように一体の巨大ロボットが舞い降りた。
ロボットが円盤獣を前に腕を突き出す。
「食らえ! スクリュークラッシャーパンチ!」
ロボットの腕が飛び出し円盤獣に激突する。凄まじいパワーなせいか円盤獣がひっくりかえる。すると円盤獣が手足と顔を引っ込めて高速に回転しだした。コマの様に回りながら自身の体をロボット目掛けて突っ込ませ行く。
「反重力ストーム!」
ロボットの胸部から七色の熱線が放たれた。相手の重力を変える熱線である。それを浴びた円盤獣がキリキリと宙を舞う。
「トドメだ! ダブルハーケン」
ロボットの両肩から円月状の武器が飛び出しそれを目の前で連結させる。それを持ち飛翔し円盤獣目掛けてそれを容赦なく振り下ろした。
円盤獣の体がまるで豆腐でも切るかの様に真っ二つにされてしまった。
圧巻であった。正に圧倒的強さが其処にあったのだ。
「強ぇ…何者なんだあのロボットは」
甲児は思わず呟いた。これで甲児が救われたのは2度目である。
そして、この出会いこそが甲児と宇門大介、そして【UFOロボグレンダイザー】との出会いでもあったのだ。
つづく
後書き
次回予告
光の子を抹殺する為、遂にヤプールが動き出した。
町を破壊しようと空間を破り現れる超獣。
町を守る為戦えヒーロー達よ!
次回「強力タッグ、超獣をぶっ飛ばせ!」お楽しみに
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