スーパーヒーロー戦記
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第47話 剣聖ビルゲニア
ゴルゴムアジト内には三人の異形が居た。そして、その異形達の頭上には光り輝く存在が浮かんでいた。
光輝く存在は三人の異形に対し雷鳴を放っていた。それを食らい異形達は苦しむ。
「ぐおぉぉぉぉぉ!」
「お、お静まり下さい、創星王様ぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ブ、ブラックサンを取り逃がした我等の失態に対する創星王様のお怒りはごもっともで御座います。何卒、何卒お慈悲の心をぉぉ!」
三人の異形、嫌、三神官達の嘆きの声が響く。そんな神官達に新たな言葉が発せられた。それを聞いた時、神官達は震え上がった。
「な、何ですって! ビルゲニアの封印を解けですと!? それは危険です。あの男の危険性は創星王様が一番ご理解している筈です!」
「そ、それだけは…それだけはご勘弁を…」
異議を唱える神官達。だが、その言葉に創星王は全く耳を貸さない。これ以上異議を唱えればそれこそ本当に創星王の怒りを買ってしまう事となる。
「やむをえん…ビルゲニアの封印を解くぞ」
「あいつの顔など二度と見たくない」
「ビシュムの言う通りだ。出来る事ならあんな奴永遠に眠ってて貰いたかったが…」
どうやら三人にとってビルゲニアは曰く付きなようだ。だが創星王の命令では仕方ない。
三人は重い足取りで向った先には一つの棺が横たわっていた。その上には封印を表す札らしきものが張って有る。
ダロムがその封印を解く為に張ってあった札を燃やす。
突如、棺を切り裂き何かが上空へ舞い上がった。その後、三神官達の前にスッと降り立つ。
紫の鎧を纏った男が其処には居た。手にはゴルゴムのシンボルマークであるリンゴと蛇を象った盾と剣を持っている。
男は惚れ惚れした様な眼差しで自分の剣を見た。
「妖剣の腕も想った程さび付いてはいないようですね。三万年も眠っていては腕も鈍ってしまったと想っていましたが、安心しましたよ」
そう呟いた後、今度は三神官達を見る。そして不適に微笑んだ。
「あの時、創星王様の怒りを買って此処に閉じ込められてなかったら…今頃貴方達の命は無かったでしょうなぁ」
「な、なんだと!」
「よせ!」
いきり立つバラオムをダロムが鎮める。そして落ち着いた眼差しで男を見た。
「剣聖ビルゲニア。キサマには折り入って頼みたいことがある」
「大体のことは棺の中で聞きましたよ。要はそのブラックサンを連れてくれば宜しいのでしょう? 容易い事です」
「随分な自信だな。勝算はあるのか?」
「フッ…私の腕は一番貴方達がご存知の筈ですが? 何なら試してみますか?」
不適に笑いながらビルゲニアが突如構えた。その構えを見て三神官達が戸惑いを見せる。その姿を見て満足したのかビルゲニアは構えを解き盛大に笑った。
「冗談ですよ。また創星王様の怒りに触れるのは御免ですからね。それではそのブラックサンとやらの実力を拝見させて貰いに行ってきますよ」
そう告げると静かにビルゲニアは歩き去って行った。その後姿を三神官達は黙ってみていた。
「やはりあの男は危険過ぎる。創星王様は何故あの様な男を…」
「その事についてなんだが…先ほど創星王様が妙な事を言っていたのを耳にしたんだが」
「妙な事?」
バラオムの言葉にダロムとビシュムの二人が振り向く。
「一体何だ?」
「うむ、詳しくは分からんが、ブラックサンの他にも我等に仇なす存在が居るそうだ。その者達とブラックサンが手を組むのは非常に不味いとおっしゃっていた」
「ブラックサン以外の者だと? 馬鹿な、一体何処に我等ゴルゴムの存在を知っている者が居るというのだ……まさか、あのお方では!?」
ダロムの脳裏に浮かんだその人物。その人物はゴルゴムと深い関係があるようだ。果たしてその人物とは一体……
***
その頃、此処八神家では家主のはやてとなのはの二人が部屋の飾りつけや料理の準備などをしていた。かなり手の込んだ準備だ。
「ねぇはやてちゃん。もうすぐ此処に来るそのお兄ちゃん達ってどんな人達なの?」
「私が一人ぼっちの時に世話をしてくれた人の子達なんやって。そんで、二人共私にとってお兄ちゃん達みたいやから私も二人の事お兄ちゃんって呼んでるんや。其処に写真があるよ」
そう言ってはやてが指した所には一枚の写真が飾られていた。其処には幼いはやてを真ん中に二人の少年が仲良く映っていた。
まるで本当の兄弟のようである。
「そんでな、今日はそのお兄ちゃん達の誕生日を祝おうと想って準備してたんや…まぁ、本当はもう過ぎちゃったんやけどなぁ」
「そうなんだ」
嬉しそうに語るはやてを見て自然となのはの顔にも笑みが浮かぶ。そんな時、玄関の扉が開く音がする。
「お、噂をすれば…かな?」
二人が玄関に向う。其処には一人の青年が居た。南光太郎である。
「はやてちゃん…無事で良かった」
「やっほぉう、光太郎兄ちゃん! ちょっと遅れたけどお誕生日おめでとうなぁ!」
「え? あ、あぁ! そうだったね。すっかり忘れてたよ」
はやてにそう言われ、光太郎は惚けたように笑う。それを見たはやてもまた釣られて笑い出した。
「もう、光太郎兄ちゃんは相変わらず天然やなぁ。所で…信彦兄ちゃんはどうしたん?」
「の、信彦は……」
その答えを言おうとした時、光太郎は言葉に詰まった。どう言えば良いか迷ったからだ。彼女に真相を話すわけにはいかない。
「えっと……ツーリングの際にはぐれちゃってさ」
「え~~、折角信彦兄ちゃんのも用意したのになぁ~。残念や」
「ははっ…」
真相を隠すかのように光太郎は笑う。そして、今度はなのはの方を見た。
「君は始めて見るね。僕は南光太郎って言うよ。宜しく」
「始めまして。高町なのはです」
そう言って二人は互いに握手を交わす。
(え?)
ふと、なのはは光太郎の手を握った際に何かを感じ取った。何処かで同じ感触を感じた記憶がある。それは、とても悲しい感触でもあった。
「さぁさ、のんびり屋な信彦兄ちゃんは後にしてご飯にしよっ、もうお腹ぺこぺこやぁ」
「そうだね。あぁ、腹減ったぁ」
それから、八神家に上がった光太郎と共に楽しい夕食が行われた。光太郎と話している時のはやてはとても生き生きしている。
光太郎もまたはやてと楽しそうに話しをしていた。だが、何処かおかしい。光太郎が心から笑ってるようには思えない。何かを隠してるような気がする。
なのはにはそんな気がしたのだ。ふと、先ほど光太郎の手を握った方の手を見た。
(あの時の感触…本郷さんや一文字さん達のと同じ…もしかして光太郎さんも…)
相変わらず彼女の感覚は鋭かった。そんな中、はやてが光太郎に綺麗にラッピングの施された箱を手渡す。
「ほい、光太郎兄ちゃん。私からの誕生日プレゼントやでぇ」
「あはは、有難う。中身な何だろう?」
嬉しそうに箱を開ける。中に入っていたのは黒い指ぬきグローブであった。
「光太郎兄ちゃんバイク好きやろ? これ結構デザインもかっこよかったし光太郎兄ちゃんにピッタリやと思って買っといたんや」
「有難うはやてちゃん。嬉しいよ」
とても嬉しそうに微笑む光太郎。そんな時、ニュースが流れた。
【次のニュースです。本日正午過ぎ頃、町外れの廃工場付近で死体が発見されました。遺体は遺跡発掘調査の中心を担っていた『秋月総一郎』さんと判明。警察は殺人事件と見て捜査を進めていく方針です】
「え?」
楽しい雰囲気から一転して場の空気が静まり返った。はやてが先ほどのニュースが報じられたテレビから離れようとしないのだ。そして、光太郎もまた同じ思いでテレビを見ていた。
「そ、そんな…秋月のおじちゃんが…おじちゃんが死んじゃったなんて…」
「は、はやてちゃん!」
光太郎がそっとはやての側に近づき頭を撫でる。するとはやては目から大粒の涙を流して光太郎の胸に飛び込み、そして大声で泣いた。
彼女にとってはこれで二度目になる。愛する親を奪われた悲しみ。それは何となくなのはにも分かる事でもあった。
もし、あの時父士郎が死んでいたらきっと自分も同じ気持ちになっていた筈だからだ。
***
光太郎の遅れた誕生日パーティー、そして秋月教授の死の悲報から翌日。光太郎は八神家に居る事を決めた。ゴルゴムは恐らくはやても狙って来る。
ならば彼女の近くに居た方が安全と思ったからだ。そのはやても今はすっかり元の明るさを取り戻しており今では同じ年であるなのはと仲良くなっている。何とも微笑ましい光景であった。
そんな時、ニュースが流れた。それはこの近くの博物館で展示予定の古代エジプトの品々が報じられていた。
その中に、綺麗な装飾が施された剣と盾が映し出された。
「へぇ、宝石を埋め込んだ剣と盾かぁ…僕達みたいな庶民には縁遠い代物だなぁ」
「ほんまやなぁ。でもあんなのあったって邪魔なだけやでぇ?」
はやての言い分は今一夢がない。其処は普通考えないようにすべきなのでは? 等と光太郎は思いながらまたその剣を見た。
「ん? あのマークは!?」
光太郎は盾に彫られた紋章を見た。其処にはリンゴと蛇の絵が彫られていたのだ。
「どうしたんや? 光太郎兄ちゃん」
(あのマークは…ゴルゴムのシンボルマーク!)
突如、光太郎の脳裏に激しい怒りがこみ上げてきた。自分の、そしてはやての両親の命を奪い、また養父秋月総一郎を殺した憎きゴルゴム。
その手掛かりが今あの博物館にある。
「ちょっと俺その博物館に行って来る!」
「って、今の時間やともう閉館時間やでぇ! 光太郎兄ちゃん!」
呼び止めるもその時には既に家を出て行った後であった。もうはやての声は聞こえない。
「ホンマに光太郎兄ちゃんは早とちりやなぁ」
「あ、だったら私が呼んで来るよ」
「ホンマに? あんがとなぁ」
自分は足が不自由な為追い掛けるのは無理そうだ。此処は多少自由に動けるなのはが適任でもあった。
早速家を出ては見たが、その時には既に南光太郎の姿は何処にもなかった。脚の速さは凄まじい。
「やっぱり…光太郎さんも本郷さん達と同じ改造人間だったんだ! でも、何で? ショッカーはもう居ないのに…」
なのはは聞いていた。既にショッカーはほぼ壊滅しており新たに改造人間を作る事はほぼ無理といわれていたからだ。だとすれば一体誰が光太郎を改造したのだろうか。
「今は悩んでる場合じゃないか。レイジングハート。ナビお願い」
【お任せ下さい】
今はまず光太郎を探す事が先決だ。彼が何者かに改造されたかは、いずれ分かる事なのだから。
***
海鳴市の某所にある文化博物館。此処で先ほどニュースに流れていた剣と盾が飾られている事になっている。しかし、生憎既に閉館時間となっており入り口は閉められていた。
「遅かったか…だが、裏口ならまだ開いてるかも知れない」
光太郎は早速裏側へ回る事にした。若干後ろめたさはあるものの別に泥棒する訳ではない。そう自分に言い聞かせる事にした。
だが、いざ裏口に入ろうとした時、何処からか異様な気配がするのに気づいた。
(何だ? この異様な気配は…この凄まじい殺気は…人間の者じゃない!)
殺気は博物館横の林の奥からだった。盾と剣も気になるがまずは殺気を探る事が大事であった。
早速林の中へ足を踏み入れる。中は細い木々が生えているが別に動き回れない程鬱蒼とはしていない。寧ろ姿が回りに見えない分戦い易い環境である。
「何処に居る? お前の気配は既に分かっているんだ。出て来い! ゴルゴム怪人っ!」
周囲に向かい光太郎が叫んだ。付近で奇妙なざわつきが感じられる。恐らく近くに居るのだろう。
咄嗟に身構える光太郎。その時、突如林の中から何かが飛び出してきた。
身の丈は光太郎の背よりも頭一つ位大きい。
不気味な外装をした獣が其処に居た。
「コイツは…ゴルゴム怪人じゃない! 何だコイツは?」
一目見てこいつがゴルゴム怪人ではない事を悟った。コイツからはゴルゴム怪人からは感じない何かを感じられるのだ。
光太郎よりもかなり遅れてなのはもまた博物館前にたどり着いた。
「やっぱり閉館だよねぇ…でも、だとしたら光太郎さん何処に行ったんだろう?」
辺りを見回すも光太郎らしき人影は見当たらない。ふと、なのはは博物館を見た。
「まさか…裏口から入った…なんて事はないよねぇ…」
自身でそう言いながらも若干不安になる。もしかしたら…
「盗む訳じゃないし…ちょっとだけなら良いよね…」
やはり後ろめたさはあるが仕方ない。意を決してなのはは博物館内へと足を運んだ。途中で巡回する警備員が居た。見つかると叩き出されてしまう為に慎重に行動せねばならない。
「そ~~っと、そ~~っと…」
見つからないように無事に博物館の展示室内へと入れた。其処で、先ほどテレビで見た剣と盾を見つける。
「これを見て光太郎さんは飛び出して行ったみたいだけど…これの何処が変わってるんだろう?」
見た所普通の盾と剣である。只、盾に施されている装飾は一風変わってはいるが別に変わった所はない。
「う~ん、此処に光太郎さんは居ないみたい…それじゃ一体何処に光太郎さんは…」
展示室内を見回す。だが、やはり光太郎の姿は何処にもなかった。仕方なく引き返す事となる。
だが、この時なのはは気づかなかった。展示室内に置かれていた剣と盾が怪しく揺れ動いていた事に…
***
「あぁ、一体何処に行ったんだろう? 光太郎さん」
無事博物館から出て来たなのはは光太郎の行方が分からず途方に暮れていた。だが、そんな時近くの林から獣の呻き声の様な物が聞こえてきた。
おかしい。この近くで獣なんて出る筈がない。だとしたら…
「もしかして…」
【マスター、魔力値が検出されました。恐らくロストロギアです】
「やっぱり!」
魔力値が検出されると言う事はそれはロストロギアを意味している。そして、誰かがそれに襲われていると…急ぎその場所に向った。やはり其処にはロストロギアが居た。
獣の姿をした怪物が青年を襲っている。その青年はなのはの探していた南光太郎であった。
「こ、光太郎さん!」
「なのはちゃん! 来たら駄目だ!」
振り返り叫ぶ。それが隙となったのだろう、光太郎に向かい怪物が飛び掛りそのまま押し倒してしまった。凄まじい力が光太郎に降り掛かる。
「ぐっ…ぬぉぉ!」
牙をむき出し噛み付こうとした怪物の顔面に光太郎は鉄拳を叩き込んだ。その場所が偶然怪物の鼻っ柱だった為か怪物は鼻を押さえて引き下がる。立ち上がり構えを取り直す光太郎。
「光太郎さん、それはロストロギアなんです! 多分、動物が触媒になってる形だと思います」
「ロスト…ロギア?」
聞き覚えのない言葉であった。光太郎の頭に「?」マークが浮かび上がる。
「とにかく、封印は私がやります。レイジングハート、セットアップ!」
なのはが首に掛けていたレイジングハートを手に持ち叫ぶ。
【…………】
静寂な時間が過ぎた。だが、レイジングハートからは何も起こらない。
「あ、あれ? セットアップ出来ない! 何で?」
「危ない!」
再び飛び掛ってきた怪物から避ける為に光太郎はなのはを抱えて横飛びに飛びのく。その直後怪物の牙が地面に突き刺さる。鋭い牙が唾液まみれになり不気味に光る。
「下がってて……」
なのはの前に立ち光太郎は構えた。そして叫ぶ。
「変っ身っ!!」
光太郎の体を眩い光が包み込み、彼の体を漆黒の仮面の戦士へと変えていく。
「仮面ライダーBLACK!!」
「か、仮面ライダー……やっぱり、光太郎さんもだったんですか!?」
驚くなのはをそのままに、ライダーブラックは怪物との戦いを始めた。
変身前とは違い変身してからはほぼ互角の戦いを行っていた。
怪物の爪を受け止めてカウンターに拳を叩き込む。一進一退の攻防が展開されていた。
「なのはちゃん、教えてくれ! どうすればこれを倒せるんだ?」
「そ、そう言われても…」
【マスター、マスターで封印は出来ませんが、彼に魔力を移しての封印なら可能です】
「どうすれば良いの?」
【私を彼に手渡して下さい】
「うん、光太郎さん!」
なのははライダーブラック目掛けてレイジングハートを投げつけた。それをキャッチしたライダーブラック。
【南光太郎さん、私を持ったまま攻撃して下さい。そうすれば封印が可能です】
「分かった!」
頷き、ライダーブラックはベルトを光り輝かせる。体全身にパワーが湧き上がっていく。そのまま空高くへと飛翔し、怪物目掛けてレイジングハートを握った拳を叩き付ける。閃光が拳を包み込み、そのまま怪物を殴り倒した。
怪物はそのまま放物線を描き吹き飛ぶ。その後怪物は閃光に包まれていく。閃光が晴れると其処に居たのは一匹の子犬と青く輝く宝玉であった。
「こ、これが化け物の正体……」
「それに、これは…ジュエルシード!」
なのはとライダーブラックの前にあったのは青い宝玉であった。それは今から半年前に全て集めた筈のジュエルシードであった。しかしおかしい。それは本来其処にない筈だ。
何故ならジュエルシードの全てはPT事件の際に全て粉砕された為もうこの世に有る筈が無い代物なのだ。それが一体何故。
そう思っていた時、目の前のジュエルシードが突如砂となり崩れ去ってしまった。
「消えた!」
「もしかして…偽者?」
【フハハハハハハッ!】
突如、何処からか笑い声が響いてきた。二人は回りを見る。声の主は何処かに居る筈だ。
刹那、赤い光が猛スピードで迫ってきた。咄嗟にかわす二人。光は地面に落ちると爆発し、その中から一人の鎧を身に纏った男が現れる。
「お前は何者だ!?」
「私はゴルゴムの剣聖ビルゲニア! ブラックサン。キサマに勝負を挑む!」
剣を構えてビルゲニアが言う。その剣は先ほど博物館に収められていた剣と盾であった。
「光太郎さん…」
「逃がしてくれそうにない…これは返すよ」
盛っていたレイジングハートを返し、ライダーブラックは構える。
「世紀王の力、見せてみろ!」
「行くぞ! ビルゲニア」
飛翔し、閃光を纏ったキックを放つ。
「そんな物効きはしない!」
そのキックを盾で受け流しライダーブラックを地面に押し倒す。
「何、ライダーキックが効かない!」
「どうした? それで終わりか?」
ライダーブラック目掛けて剣を振り下ろす。それをかわし、今度は閃光を纏った拳を放つ。やはりそれも盾に防がれてしまう。
「か、硬い…何て強度なんだ!」
「お遊びは終わりだ。ビルセイバー・ダークストーム!」
ビルゲニアの持っていた剣、ビルセイバーを目の前で高速で回転させる。其処から放たれるエネルギーを纏った風がライダーブラックの体を切り裂いていく。
「ぐわぁぁっ!」
「光太郎さん!」
ダークストームを体全身に浴びたライダーブラックは立ち上がれず地面に倒れ付す。其処に迫るビルゲニア。
「くっ、トドメを刺す気か?」
「クククッ…ハハハハハッ! 安心しろ。命までは取らん」
「何?」
動けないライダーブラックを前にビルゲニアは笑っていた。そしてビルセイバーを腰に収める。
「今日はほんの挨拶代わりだ。次に会った時こそキサマを倒す。それまで首を洗って待っているんだな。ブラックサン」
そう告げた後、ビルゲニアは爆発と共にその場から消え去ってしまった。残ったのはライダーブラックとなのはだけであった。
「剣聖ビルゲニア…恐ろしい強さだった…全く歯が立たないなんて…」
よろけながら立ち上がり、ライダーブラックから南光太郎に戻る。光太郎は新たな強敵に戦慄を覚えていた。
そして、なのはは暗い顔で俯いていた。
「セットアップが出来ない……なんで? 」
ふと、なのははかつて自分が言った事を思い出した。
【もう誰も傷つけたくない! 傷ついて欲しくない! もし…もし誰かを傷つけると言うのなら……魔法なんて…魔法の力なんて…私は要らない!】
「あのせいで…もう私の中に魔法の力が…」
なのはは自分の手を見て呟いた。仲間を傷つけた後悔と恐怖。そのせいで彼女は知らず内に自身の魔法を封印してしまったのだろう。だとしたら、これから先どうやって戦っていけば良いのか?
新たな敵が現れたと言うのに、今のなのはは限りなく無力に近い存在となってしまっていた。
つづく
後書き
次回予告
強敵ビルゲニアに敗北した南光太郎。
そのビルゲニアが光太郎を倒そうと再度襲ってきた。
圧倒的な力の前に倒れる光太郎。
果たして、光太郎の運命は?
次回「守護騎士」お楽しみに
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