スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百四十二話 仮面の裏
第百四十二話 仮面の裏
ロンド=ベルとの小競り合いがあったティターンズは一時下がり補給を受けていた。その時何か多量のミサイルを艦艇に搭載していた。
「全て搭載したか」
「はい」
ブルーコスモスの者の一人がジブリールに答える。
「抜かりはありません」
「そうか。では問題はない」
彼はそれを聞いて頷く。
「では明日出撃だ」
「明日ですか」
「そうだ、目標はプラント」
彼は言う。
「この核でプラントを消し去る。いいな」
「はっ」
皆それに頷く。そしてそれぞれの配置についていく。
その中にはあの三人もいた。だが彼等は待機室でそれぞれ本を読んだりゲームをしたり音楽を聴いているだけであった。
「あんた達普段は暴れないのね」
それを見たフレイが彼等に言う。
「大人しいっていうか」
「ああ、あれか」
オルガが本を一旦閉じてそれに応える。
「いつも戦いの前には薬飲んでるからな」
「薬?」
「ああ、そのせいでな。俺達は力を発揮できるんだ」
「そういうこと」
クロトはゲームを終えたところで述べてきた。
「ただあれが切れると凄く苦しいんだけれどね」
「やばいな」
シャニも言う。彼はアイマスクまでして音楽を聴いている。流れてくるのはデスメタルであった。
「やばいって」
「あ、薬切れるとすんげえ辛いんだよ」
オルガはそうフレイに語る。
「やばい位な」
「それって」
フレイはそれを聞いてかなり危険なものを感じていた。
「麻薬じゃないの?」
「そうなの?」
しかしクロトの言葉に危機感はない。
「はじめて知ったよ」
「そうなんだ」
シャニの言葉はさらにそうであった。
「まあどうでもいいや」
「どうでもよくないわよ」
フレイはそれに突っ込みを入れる。
「やばいわよ、そのまま飲んでいたら」
「大丈夫だ」
しかし三人はそれを聞かない。
「俺達は強化されてるからな」
「そういうこと」
「薬だってな」
そうフレイに返す。
「あのね」
「アルスター少尉」
ここでナタルが来た。
「艦長」
「ちょっとこっちへ来てくれ」
「けれど私は三人に話が」
「だからだ」
ナタルは言う。
「こっちで話す」
「はあ」
そのまま三人がいる待機室から出された。そして廊下の隅で話された。
「あの三人は特別だ」
「特別って?」
「言うならば兵器なのだ」
ナタルは言う。
「彼等の名前は本名ではない。仮の名前なのだ」
「そうだったんですか」
フレイもそれは知らなかった。
「死刑囚を強化してパイロットにしている。だから物品番号もついている」
軍におけるものである。軍の物品の管理調達に番号をつけて識別し易くしているのだ。だから三人は兵器扱いというわけである。
「物品番号って」
「そうだ。彼等は消耗品なのだ」
こうまで言った。
「兵器としての。だから薬物の投与も」
「その薬を飲んでいけばやっぱり」
「そのうち崩壊して廃人、いや死に至る」
「そんな、それって」
「気にするな」
だがナタルはそう言うだけであった。
「それがジブリール閣下の決められたことだからな。彼等はあくまで兵器なのだ」
「そうなんですか」
「そうだ。それでだ」
ナタルは話を変えてきた。
「今度の戦いはおそらくプラントとの最後の戦いになる」
「そうみたいですね」
それはフレイもわかっていた。真摯な顔で頷く。
「この物々しさは」
「核も搭載されている」
「核も」6
「閣下はプラントを完全に消し去る気なのだ」
ナタルは言う。
「何もかも残さずな」
「それがティターンズの考えでしょうか」
「少なくともジブリール閣下に全てが委ねられている」
ナタルはそう返事をした。
「プラントに関してはな」
「そうなのですか」
「死ぬな。君はまだ若い」
これがナタルの言いたいことであった。
「何があってもな。いいな」
「わかりました」
「それだけだ。この戦いが終わったら」
ナタルはまた述べる。
「一緒に何処か行くか。二人でな」
そう言って艦橋に戻った。ブルーコスモスの系列のティターンズは全軍を以ってプラントに向かった。その動きはロンド=ベルにもわかっていた。
「プラントにか」
ヘンケンはその報告を聞いて述べた。
「ああ。かなりの数だったぜ」
偵察を終えて戻ってきたデュオが答える。
「何十隻もいたな」
「何十隻か」
ヘンケンはそれを聞いて顔を険しくさせる。
「しかも通信を傍受したが」
トロワも言う。
「核ミサイルを搭載しているようだ」
「何っ、核をか」
「そうだ。プラントに向けて放つつもりのようだ」
ウーヒェイが答える。
「おそらくはコロニーごとプラントを消し去ろうとしている」
「プラント自体をか。そこまで考えているとは」
「どうします?」
カトルが問う。
「このままですとプラントは」
「わかっている。ブライト艦長」
「はい」
ブライトはヘンケンの言葉に応える。
「言うまでもありません。すぐにプラントに向かいましょう」
「そうだな。そしてティターンズはプラントの何処に向かっている?」
「ヤキン=ドゥーエ」
ヒイロが答える。
「奴等はそこに向かっている」
「まずは要塞を、ですか」
タリアがそれを聞いて呟く。
「では我々もそこへ。道案内は務めます」
「わかった。ではすぐに行こう」
「了解」
こうしてロンド=ベルも動いた。既にプラントでもティターンズの動きは察知されていた。
「ティターンズが来るか」
「ええ」
パトリックに幕僚達が報告している。パトリックも彼等も険しい顔になっている。
「遂にか。こちらも軍を総動員しろ」
「わかりました」
「もっとも残された数はそれ程ではないか」
パトリックはそのことを思い憂いを感じた。プラントは人口が少ない。このことが今大きくのしかかってきているのだ。
「それでもな。守りきらねばならん」
「そうです」
幕僚達もそれに頷く。
「それでは」
「うむ、ジェネシスの用意もしておけ」
「わかりました」
「まだ試射もしていないが。大丈夫か」
「わかりません。しかし」
返ってきたのは不安定な返事であった。
「今の我々には切り札はあれしかありません」
「そうだな。それではな」
「はい、発射準備もしておきます」
「ティターンズとはやり合わなければならない運命だった」
パトリックは言う。
「ならば躊躇はしてはならない。わかるな」
「彼等がコーディネイターやスペースノイドを否定する限りは」
「戦わなければならなかったのだからな。彼等には容赦はしない」
「連邦には」
「彼等はまた別だ」
それが彼の考えであった。
「強硬派がいなくなったのならば。手を結ぶべきだった」
「ええ」
「シーゲルが倒れ、今の事態ではそれは望むべくもないがな」
「残念なことに」
シーゲルの死はそれだけプラントにとって大きかった。連邦との講和を果たせなくなったからだ。パトリックはそのことを悔やんでいた。
「ティターンズとの戦いが終わってからだ」
彼は言う。
「講和もな。この戦いに」
「我等の命運がかかっています」
「その通りだ。だから」
彼は決断する。
「総動員令だ。志願兵を可能な限り集めよ」
「はっ」
プラントも今最後の戦いに向かっていた。ジェネシスに戦力を集めていた。
ティターンズがあと僅かまで迫った時パトリックはジェネシスに入った。クルーゼがそれを迎える。
「いよいよですな」
「そうだな」
それに応える。クルーゼの仮面の下の邪な笑みには気付いていない。
「では守りはお任せ下さい」
「わかった」
それを受けて司令室に入る。部屋に入る時にそっと写真立てを置いた。
そこには彼とアスラン、そして血のバレンタインで亡くなった妻の三人が映っていた。彼にとってはかけがえのない世界がその一枚の写真にあった。
「御前達と。また一緒に暮らせたならばな」
一言そう呟く。だがそれはもう適わないものであると思っていた。儚い夢であると。
彼もまた戦場に着いた。今ティターンズを迎え撃たんとしていた。
ティターンズの大艦隊が迫る。ロンド=ベルもそこに急行する。
「もうすぐだ」
ブライトが言う。
「もうすぐジェネシスに到着するぞ」
「よし、皆用意はいいか」
ミゲルが声をかける。
「総員出撃だ」
「ミゲル君気合充分ね」
「いいことだ」
彼を見てレミーとキリーが言う。
「やっぱり家族を守りたいんだな」
「ああ」
真吾の言葉に応える。
「プラントには俺の両親と妹がいる。だからな」
「そうだ!だから俺も」
「だからといって御前さんは血気にはやるなよ」
キリーがシンに忠告する。
「クールにな」
「ちぇっ、また俺かよ」
「ははは、シンはどうしてもな。目立つからな」
「坊やはまだまだ世間慣れしていないのね」
真吾とレミーが彼を茶化気味に言う。
「全く。俺は信用がないんだな」
「とにかく今は落ち着いた方がいい」
アスランも彼に声をかける。
「アスラン・・・・・・」
「大変な時にこそな。さもないと」
「そうだな」
ここでは流石にアスランの頭のことは言わなかった。
「やっぱりここは落ち着くか」
「おい、シンが落ち着くってか」
ジュドーがそれを聞いて驚いていた。
「それだけ大変な状況ってことかよ」
「そうね」
それにプルが頷く。
「やっぱり今度の戦いわね」
「核ミサイルがあるんだろう?」
プルツーが皆に問う。
「ティターンズには」
「ええ、そうよ」
その言葉にルーが答える。
「それもかなりの数ね」
「洒落になってないのよね」
エルもいつもの明るさはない。
「今度ばかりはね」
「核ミサイルをまず叩き落さないと駄目ってことだね」
モンドが述べる。
「ここは」
「そういうことだよね。一発でも撃ち漏らすと」
イーノも暗い顔になっている。
「終わりだろうね」
「それでティターンズに事情を知らないザフトかよ」
ビーチャも普段ならば強がるところだが今回は違っていた。
「あとザルクか」
「そう、ザルクだ」
バルトフェルドはそこを指摘する。
「彼等もいる。これが大きいだろうな」
「ラウ=ル=クルーゼも間違いなくいるでしょう」
ダコスタが述べてきた。
「それもかなりの数が」
「油断はできません」
ラクスが言う。
「今度の戦いは。かつての多くの決戦と同じです」
「決戦ならこれまで幾らでもやってきたんだがな」
トッドの軽口も普段のそれではなかった。
「今度はまた。洒落にならない状況だな」
「ジェネシスには注意してね」
アイシャが言ってきた。
「何かあったの?あそこに」
「巨大なビーム砲台があるのよ」
ルナマリアに答える。
「まだ試射もしていないけれど」
「そうだったの」
「それが発射されたら」
「やばいってことね」
ルナマリアの顔が深刻なものになる。
「何かどうしようもないっていうかね」
「けれど戦うしかないんだ」
キラは呟くようにして述べる。
「さもないとプラントも皆も」
「そうだな、キラの言うとおりだ」
アスランがそれに頷く。
「だから」
「出撃ですよね」
キラはマリューに問う。
「もうすぐ」
「ええ、そうよ」
マリューは彼に答える。
「用意はいいわね」
「わかりました。じゃあ皆」
「ああ、行こうキラ」
アスランが彼に応える。
「戦場に」
ロンド=ベルも出撃準備に入る。その時ティターンズの大軍が今ジェネシスに向かおうとしていた。
「ザフト軍の数は?」
ジブリールはドミニオンの艦橋にいた。そこでナタルに問う。
「およそ我が軍の三分の一です」
「その程度か」
「はい、ですが後方にジェネシスがあります」
「あの要塞か」
ジブリールはモニターに移る巨大な要塞を見てナタルに問うた。
「そうです。あれは」
「!?待て」
ジブリールはここで気付いた。
「あの要塞、動いているぞ」
「えっ」
ナタルもその言葉にはっとする。見ればその通りだった。
ジェネシスがこちらに向いてきていた。それはパトリックの指示によるものであった。
「宜しいのですね」
「うむ」
パトリックは幕僚達に応える。
「今はすがらねばならない。試射なくともな」
「わかりました。では」
「私も相手が今の連邦ならば使おうとは思わぬ」
シーゲルはこう述べてきた。
「だが相手はティターンズだ。しかも核を放とうとしている」
「だからですか」
「そうだ。容赦は要らん」
彼は言う。
「撃て。いいな」
「了解」
「ほう、動いたかジェネシス」
クルーゼはその動きを見てニヤリと笑った。彼今はゲイツにいた。
「ティターンズ、どう出るかな」
「ジェネシスの正面から離れよ!」
ジブリールはそう全軍に指示を下していた。
「いいな!すぐにだ!」
「ですがそれですと艦列が!」
「構わぬ!」
モニターに現われた指揮官の一人にそう言い返す。
「このままでは我が軍は取り返しのつかないダメージを受ける!それよりましだ!」
「はい、では!」
「全艦取り舵全開!」
具体的な指示を述べる。
「それで避けよ!いいな!」
「は、はい!」
ドミニオンも取り舵に入る。ティターンズは何とか左に動く。そこにジェネシスからの光の帯が放たれた。
「おっ!?」
「何だ!?」
オルガとシャニは待機室の窓からその光を見て声をあげた。
「味方がやられてるぜ」
「関係ないね」
クロトはそれに構おうとはしない。
「間抜けだからやられるんだろう?」
「そうは言ってもすげえ攻撃だぜ」
オルガが彼に対して言う。
「すげえ」
シャニは呟いていた。今の攻撃で避けきれなかったティターンズの一割が完全に消え去った。
「一割が消滅です」
ナタルがジブリールに報告する。彼女も驚きを隠せない。
「まるでコロニーレーザーのようです」
「レクイエムをこちらがやられるとはな」
ジブリールはそれを聞いて苦い顔を浮かべた。
「コーディネイターもやってくれる」
「どうされますか?」
ナタルはまた彼に問うてきた。
「一割を失いましたが」
「構わん」
だがジブリールは引くつもりはなかった。ここで退いてはかえって後々またあのジェネシスに阻まれることになる。それならば、彼が下した判断はこうであった。
「予定通り攻撃を仕掛ける。敵が攻撃を放った今がチャンスだ」
「チャンスですか」
「そうだ、あれだけの攻撃だ」
彼は言う。
「再攻撃には時間がかかる。ならば」
「はい。それでは」
「核ミサイルを放て!」
ジブリールは同志達に命じる。
「それでプラントを消滅させる。いいな!」
「はっ!」
生き残った艦隊がそれに頷く。そして今核ミサイルが一斉に放たれた。
「あのおっさんやるってのかよ」
ヤザンがそれを見て呟いた。
「あまりこういうやり方は好きじゃねえんだがな」
「全くだね」
ライラがそれに頷いてきた。
「あのジブリールっていうのはどうにも。器が今一つ小さいところがあるね」
「そうだな」
それにカクリコンが同意する。
「コーディネイターへの偏見が強いな」
「そのせいでティターンズに来たんだったな」
ジェリドがそれに突っ込みを入れる。
「確か」
「ええ、そうよ」
マウアーがそれに答える。
「今ロンド=ベルにいるアズラエル理事と対立した結果ね」
「話を聞いていると原理主義者になる」
カクリコンはこう分析してきた。
「だからだ。どうしても視野が狭くなる」
「困ったことだね。それで核ミサイルなんてね」
ライラの口調は少しぼやく感じになっていた。
「だが戦う分には問題ない」
「来たぜ」
ジェリドとヤザンが言った。
「ロンド=ベルがよ」
「カミーユ、今度こそ!」
ヤザンとジェリドでそれぞれ顔が違ってきた。
「あの三機のガンダムも出ました」
「アカツキも」
ラムサスとダンケルが自軍を見てヤザンに報告する。
「役者は揃ったね。行くよ」
「おう!」
「了解!」
ティターンズのエース達もライラの言葉に応える。彼等は今ザフトとロンド=ベル、両方に剣を抜いたのであった。
ロンド=ベルが戦場に到着した。既に核ミサイルは放たれている。
「おい、もうかよ」
勝平賀それを見て声をあげる。
「やばいんじゃねえのか、これって」
「落ち着け勝平」
だが宇宙太がここで彼に忠告する。
「まだ充分間に合う」
「そうなのかよ」
「焦らずに落ち着いていけばいいわ」
恵子も言う。
「ここはね」
「まずは核ミサイルを全て叩き落してくれ」
大文字が皆に伝える。
「まずはそれからだ。いいな」
「了解」
「キラ、いいな」
「うん」
キラはアスランの言葉に頷く。
「わかったよ、アスラン」
二人はミーティアを装着させていた。それで核ミサイルに向かおうとする。
「御前等はそのまま核ミサイルをやってくれ」
ディアッカが二人にそう言う。
「俺は俺でできるだけ撃ち落としていくけれどな。それよりも」
「ティターンズの奴等だ」
カガリが声をあげる。
「あいつ等をまず何とかする。いいな」
「はい」
「わかりましたカガリ様」
アサギとジュリがそれに頷く。
「援護は私達がしますから」
「御前等も死ぬなよ」
カガリはマユラの言葉に応えて述べる。
「怪我もだ。シンは怪我をしてもいいがな」
「俺はいいのかよ」
「ただし死ぬな」
カガリはこうも言った。
「いいな」
「あ、ああ」
死ぬなという言葉には正直戸惑ったが頷いた。
「わかった、じゃあな」
「ああ」
二人は声を掛け合う。それを見てユウナはにこにことしていた。
「本当は笑っていられないけれどね」
「一発でも逃せば終わりですから」
キサカがそう述べる。
「ですから」
「わかってるさ。僕達も攻撃だね」
「ええ、その通りです」
「じゃあ前進」
ユウナが命令を下す。
「ミサイルを集中的に狙う。いいね」
「了解」
皆それに頷く。ロンド=ベルはまずは核ミサイルに向かった。
「さて、と」
その中にはギュネイもいる。彼はヤクト=ドーガを駆る。
「いっちょ真剣に行くか。ファンネル!」
ヤクト=ドーガからファンネルを放つ。それで核ミサイルを纏めて撃破した。
「まあこんなものだな」
「あれ、珍しく最初からファンネル出したんだね」
「まあな」
ミオに対して答える。
「今回は悠長なこと言っていられないからな」
「そうだよね。じゃああたしも」
「いきまっせ師匠!」
「ほなここで!」
「行くわよ!ゴーーー、ゴーーー!」
「・・・・・・しっかしよお」
ギュネイは三匹のカモノハシを見て言う。
「確かあれって無意識が実体化するもんだよな」
「ああ、そうだぜ」
マサキがそれに答える。彼はサイバードからサイバスターになりいち早くミサイルの中に入っていた。そこでサイフラッシュとファミリアを放っていた。
「それがどうしたんだ?」
「じゃああいつの無意識ってよ」
ギュネイは首を傾げさせていた。
「どうなってんだ?」
「ギュネイが言う台詞じゃないだろ」
それにレッシィが突っ込みを入れる。
「一瞬クェスかと思ったぞ」
「じゃあクェス交代」
「わかったわ。ギュネイが言ってどうするのよ」
「って言われてもな」
ギュネイも難しい顔をする。
「俺でもわからねえことだってあるさ」
「まあそれはそうだな」
マサキは上を向いて呟く。
「そもそもギュネイとミオが仲いいのもな」
「馬が合うんだよ」
ギュネイが答える。
「何となくな」
「そうか」
「それでもわからないものはわからないんだよ」
そのうえで述べる。
「あれは特にな」
そんなことを言い合いながら攻撃を続ける。だがそこにあの三機のガンダムが来た。
いきなり周囲に攻撃を撒き散らす。それで核ミサイルも破壊していく。
「なっ、あいつ等」
「お構いなしか?」
ミゲルとハイネがそれを見て驚きの声をあげる。
「いえ、違います」
ニコルが三人の動きを見て気付いた。
「あの動きは」
「どうしたってんだ!?ニコル」
「麻薬中毒者のそれです」
「何っ、麻薬だって!?」
ディアッカはそれを聞いて声をあげる。
「はい、あれは間違いないです」
「じゃあやばいな」
ディアッカはニコルの言葉を受けてまた三人を見る。
「まともな奴等じゃないって思っていたけれどな」
「どうします?」
「つっても無視するわけにはいかねえだろ」
ディアッカの言葉は現実を的確に述べていた。
「前にいるならよ撃墜するしか」
「こんな時に厄介ですね」
「とりあえず御前一機でも足止めできるか?」
「僕がですか」
「ああ、後ろから俺が撃つからな」
「わかりました。じゃあ」
彼はフォピドゥンに向かった。
「あの緑のガンダムを」
「よし」
カラミティにはハイネとミゲルが向かいレイダーにはジャック、フィリス、エルフィが向かっている。まずは彼等が足止めをするつもりだった。
その間にキラ達は次々に核ミサイルを撃墜してく。アムロやクワトロといった者達もファンネル等で撃墜している。
核ミサイルは順調に破壊されていっていた。イザークはそれを見て呟く。
「俺達に攻撃するよりも核ミサイルを攻撃している」
「どういうことでしょう」
それにシホが問う。
「まさか彼等は私達に敵意は」
「じゃあディアッカやニコルも」
「まさかとは思いますが」
「だが」
それでも彼は今ザフトにいる。そして彼等はロンド=ベルにいる。そのことは変わらない。
「今あいつ等は敵だ。その意味ではティターンズと同じだ」
「はい」
「ならば」
彼等は相変わらずロンド=ベルに銃を向けている。接近して来る者がいれば攻撃を浴びせていた。
核ミサイルを撃墜していくキラの前にアカツキが姿を現わした。
「フレイ!」
「邪魔はさせないわ!」
ビームライフルを放ちながらやって来る。
「馬鹿な!今核ミサイルを放たれたら!」
「そうよ!だからよ!」
彼女はキラに対して叫ぶ。
「パパを殺したコーディネイター!皆死ねばいいのよ!」
「そんな!コーディネイターも同じ人間なんだ!」
キラはそれがわかった。だがカガリはそうではなかった。
「それなのに死んでいいなんて!」
「いいのよ!パパの仇!」
「くっ!」
「キラ、そいつの相手は俺がする!」
シンがキラのところに来た。
「御前は核ミサイルをやれ!あと少しだ!」
「シン!」
「こいつの親父を殺したのは俺だ」
シンはフレイを見据えて言った。
「なら俺の相手だ!いいな!」
「うん、わかったよ」
キラは彼の言葉に頷くことにした。彼も今自分が何をするべきかわかっていたからだ。
「じゃあお願い。フレイを」
「ああ。大変だろうがな」
ドミニオンもティターンズの主力部隊も来る。核ミサイルがなくなってからが決戦だと。彼等はわかっていた。シンとフレイの戦いがそれのはじまりであると言えた。
遂に核ミサイルが全て撃墜された。ティターンズが全面攻撃を仕掛けてきた。
「ジェリドーーーーーーーーーーッ!」
カミーユがジ=オに向けてメガランチャーを放つ。
「貴様もいたのか!」
「そうだ!俺は御前と闘う為にいるんだ!」
ジェリドはそうカミーユに返す。
「だからだ!御前はここで死ね!」
「そうむざむざとやられるわけには!」
そこにジ=オのビームが襲う。相変わらず巨体からは想像もできない動きであった。
「喰らえ!」
ジェリドはビームサーベルを振りかざしてカミーユに向かう。今二人の権撃が撃ち合った。
ティターンズが動くのを見てザフトも動いた。今三つ巴の戦いになった。
「行くぞナチュラル共!」
ザフトがロンド=ベルとティターンズに攻撃を仕掛ける。その先頭にはイザークがいる。
「遂に来たかよ」
ディアッカはそれを見て呟いた。
「今あいつに行きたいけれどな。こいつ相手じゃな」
「ええ」
ニコルが彼の言葉に同意する。今二人はシャニを相手にしていた。
「・・・・・・殺す」
「おい、ディアッカ、ニコル」
そこにカガリから通信が入る。
「どうした?」
「そいつは私に任せろ」
こう言ってきた。
「御前達はその仲間のところに行け。話しがあるんだろう?」
「簡単に言うけれどよ」
ディアッカはそれを聞いてカガリに言う。
「洒落にならない相手だぜ。いいのかよ」
「ああ、構わない」
だがカガリはそう返す。
「足止め程度ならな」
「わかった、そこまで言うのならな」
「カガリさん、お任せします」
ニコルも述べる。
「では御気をつけて」
「ああ。さてと」
カガリはフォピドゥンの前に来た。後ろではアサギ達がアークエンジェルの援護を受けてティターンズのモビルスーツと戦っている。
「御前の相手は私だ!」
「御前か」
シャニは彼女を見据えて呟く。
「・・・・・・うざい」
フレスベルグを放つ。歪に曲がったビームがカガリを襲う。ここで異変が起こった。
水面に種が落ち割れた。それと共にカガリの目から表情が消えた。
「見える!」
フレスベルグの光をかわす。そのままシャニに突っ込む。
「何っ」
「そこだっ!」
ビームサーベルで斬りかかる。だがそれはニーズヘッグで受けられてしまった。
「こいつ・・・・・・強くなった」
「やらせるか!ここは好きにはさせない!」
カガリもまた覚醒した。その力でシャニと互角に渡り合う。レイがオルガに、カガリと同じく覚醒したフィリスがクロトの相手になる。他の者達がティターンズに向かい戦いはロンド=ベルに傾いていっていた。
ディアッカとニコルはイザークとシホに向かう。今彼等の前に出た。
「また来たのか」
「ああ、言いたいことがあってな」
ディアッカはそうイザークに言う。
「なあ、イザーク」
友として彼に声をかける。
「俺達はな、戦う理由なんてないんだよ」
「何を馬鹿なことを」
イザークはその言葉をまずは否定した。
「御前はロンド=ベルにいる。それだけで充分だ」
「俺が何でロンド=ベルにいるかっていうとな」
ディアッカはそれに応えて述べる。
「それは前に言ったよな」
「クルーゼ隊長か」
「それにさ、見てみろよ」
ロンド=ベルに目を向けさせる。
「こっちはザフトには向かってないだろ。あくまで戦っているのはティターンズとだけさ」
「むう」
これに気付いているのはパトリックもであった。彼はそれを見て目を顰めさせていた。
「どういうことだ」
ロンド=ベルが自分達に攻撃を仕掛けて来ないのを見て言う。
「我々も敵ではないのか」
「それは」
幕僚達にもそれはわからない。それを見てザフトの多くの者達はティターンズに向かう。そしてその間にクルーゼと彼の仲間達はジェネシスの中にこっそりと戻ってきていた。パトリックはそれを見落としてしまっていた。
「だからだよ。なあ」
「イザーク、ディアッカの言う通りです」
ニコルも声をかけてきた。
「僕達が戦う理由はないです」
「そうですね」
シホがそれに頷いてきた。
「シホ」
「イザークさん、私はディアッカさん達を信じます」
「いいのだな、それで」
「はい、少なくともクルーゼ隊長よりは余程」
「そうか」
「私はそうです」
「御前はどうするんだ?」
ディアッカはまた彼に声をかける。
「これからどうやって」
「結論は今は出せん」
イザークはこう述べてきた。
「少なくとも俺はプラントの為に戦う。それだけか」
「そうか」
「ああ。ロンド=ベルへの攻撃は控えよう」
彼はロンド=ベルへの攻撃は止めた。その時ジェネシスでは異変が起こっていた。
「馬鹿な、何が起こっている」
突如としてジェネシスが騒がしくなった。再び発射が行われようとしていたのだ。
「わかりません、謎の一団が姿を現わして」
「謎の一団だと」
「閣下」
パトリックの前にクルーゼが姿を現わした。後ろに多くの兵士達を引き連れている。
「クルーゼ、一体何の用だ」
「再びジェネシスの発動をお願いします」
彼は敬礼してからそう述べてきた。
「馬鹿な、まだ時間がかかる」
「いえ、充分です」
だがクルーゼは否定するパトリックに対して述べてきた。
「万が一ジェネシスが崩壊したとしてもそれはそれで好都合」
「馬鹿な、何を言っている」
パトリックはそれを見て密かにジェネシスのスイッチを封印した。危機を察してだ。
「ジェネシスが崩壊すればプラントの守りはなくなるのだぞ」
「だからですよ。プラントも人類もなくす為にはジェネシスがあってはなりません」
「貴様、一体」
「さあ閣下」
クルーゼはまた言う。
「ジェネシスの発動を」
「スイッチは切った」
パトリックはそう述べた。
「もう発射はできん」
「なっ」
「貴様の好きにはさせん。私はプラントを守らなければならないのだからな」
「左様ですか」
それを聞き銃を抜く。
「ではそれはそれで考えがあります」
「今度は何をするつもりだ」
「御免っ」
パトリックに対して発砲する。光が彼の胸を貫いた。
それを受けたパトリックは後ろに倒れた。胸から血が溢れ出る。
「アスラン・・・・・・」
「諸君、ジェネシスを暴走させろ」
「はい」
既にパトリックの幕僚達も死んでいる。クルーゼの部下達のよって葬り去られていた。
「私はあのガンダムを出す。いいな」
「はっ」
クルーゼはそう言って部屋を出た。後には倒れ伏すパトリックだけがいた。
ザフトから謎のガンダムが姿を現わした。ムウはそれを見てそのガンダムに誰が乗っているかを感じた。
「クルーゼ、貴様か」
「ふふふ、そうだ」
彼はムウに応えた。
「ムウ=ラ=フラガ。君との因縁もこれで終わる」
「あのガンダムはプロヴィデンスか」
イザークがそのガンダムを見て声をあげる。
「レジェンドをさらに発展強化させた」
「その通りだ、これこそが最高のガンダムだ」
彼は誇らしげに述べてきた。
「このガンダムならば誰にも負けはしない。そう、世界を滅ぼせる」
「世界!?一体何を」
「私は世界を滅ぼす為に動いているのだよ!」
イザークに言う。
「その為の切り札、それがこのプロヴィデンスなのだ!」
「やっぱりな」
ディアッカはそれを聞いて呟いた。
「そう来たか」
「もうすぐだ!ジェネシスも崩壊しプラントの守りはなくなる!」
「何っ!?」
アスランはそれを聞いて目を丸くさせる。イザークもだ。
「これでプラントは終わりだ!そして連邦も!」
「くっ、ラウ=ル=クルーゼ!」
イザークは彼を見据えて声をあげる。
「なら俺は!プラントを守る為に戦う!」
「イザークさん、どうしますか!?」
「決まっている!いいか!」
シホだけでなくほかの戦士達にも応える。
「ロンド=ベルに協力するぞ!」
「いいんですね」
シホがそれに問う。
「それで」
「ああ。迷いはしない」
イザークはもう決めていた。
「これでな」
「わかりました。では私も」
シホもそれに頷いてきた。そして。
「イザークさんと一緒に行きます」
「いいんだな」
「はい」
彼女にも迷いはなかった。それはイザークと同じであった。
「私もまた」
「そうか。ディアッカ、ニコル」
彼は二人に声をかけてきた。
「俺もそちらに合流する、いいな」
「ああ、やっとか」
ディアッカは彼の言葉を聞いて嬉しそうに声をあげる。
「待たせてくれたな」
「全くですよ」
ニコルも言う。
「けれど待ったかいがありましたね」
「けれどこれで特務隊がまた勢揃いですね」
シホはそちらを喜んでいるようであった。
「皆と」
「そうね。けれどシホ」
タリアがシホに声をかけてきた。
「はい」
「今度は他のメンバーもいるからね」
「そうなんですか」
「そうよ。彼等との話も楽しみにしていてね」
「わかりました」
「ただしだ」
ディアッカがここで言う。
「かなりの個性派ばかりだからな」
「そんなにですか」
「時々普通じゃない人も出て来るしな」
「超能力者とかサイボーグですか?」
「いや、それは普通にいるから」
「はあ」
タケルや凱のことであるのは言うまでもない。
「そうした人達も僕達と変わりませんし」
「じゃあ一体普通じゃないって」
「変態爺さんと変態忍者よ」
アスカが話に入ってきた。
「貴女は」
「ああ、アスカっていうんだ。エヴァのパイロットさ」
「貴女があの」
ディアッカの言葉を聞いて述べる。
「あのってあたし有名なの」
「はい。エヴァのエースで」
「最近撃墜機数じゃシンジに負けてるけれどね」
「そうでしょうか」
「まあこいつは戦い方が派手だからな。そうも見えるさ」
ディアッカがそう説明する。
「けれど頼りになりますよ」
「けれどは余計よニコル、それでシホっていうのね」
「はい、シホ=ハーネンフースです」
「馬鹿シンの知り合いみたいだけれど宜しくね」
「シンさん御存知なんですか」
「知りたくなかったけれどね」
声が剣呑なものになる。
「知ってはいるわ」
「はあ」
シホはそれを聞いてすぐに彼女とシンの仲が悪いのがわかった。同時に二人は衝突するタイプだというのもわかった。
「それでもう一人のガンダムのは」
「貴様!」
イザークはモニターのアスカの顔を見て叫んだ。
「あの時の女か!」
「あんた、あの時の河童!」
「俺は河童じゃない!」
イザークはそうアスカに言い返す。
「ここで会ったが百年目だ!」
「常套じゃないの、決着つけてやるわよ!」
二人はモニターで睨み合った。
「ここでね!」
「望むところだ!今度こそ!」
「やってやろうじゃないの!」
「どうだ、面白い人間がいるだろ」
二人は喧嘩をはじめた二人を見せてアスカに述べる。
「こいつのほかにも一杯いるぜ」
「一杯ですか」
「とにかく御前等が来てくれてほっとしているぜ」
「何かプラントの皆もこちらに来てくれていますしね」
ジェネシスの周りにいるのはクルーゼとザルクのメンバーだけになっていた。皆今の異変を知って次々とイザークと共にロンド=ベルに協力する姿勢を見せてきていたのだ。これにはラクスの呼びかけがあった。
「私達の敵はティターンズ、そしてザルクなのです」
彼女は言う。
「プラント、そして人類を脅かすラウ=ル=クルーゼ、今こそ!」
「僕は君が嫌いでねえ」
バルトフェルドは彼女を後ろにクルーゼのプロヴィディンスに主砲の照準を合わせる。
「これで終わりにさせてもらうよ」
「バルトフェルド艦長、頼みましたよ」
「わかってます。てーーーーーーっ!」
砲撃を放つ。クルーゼはそれを受けてみせた。
「戦艦の主砲を受け止めたか」
「はーーーーーーっはっはっはっはっはっは!」
クルーゼは主砲を受け止めて高笑いを浮かべる。
「見える、見えるぞ世界の崩壊が!」
狂気じみた笑いであった。それと共にドラグーンを放つ。かつての友軍をも無差別に攻撃する。
「うわっ!」
「ぐわっ!」
それで忽ちのうちに数機のゲイツが撃墜される。
「最早プラントもこれで終わる!私を生み出した世界を崩壊させてやろう!」
「くっ、よりによってこんな奴が!」
「見たでしょう、あれがラウ=ル=クルーゼです」
ラクスは何とか生き残ったザフトの者達に対して語る。
「私達の相手です」
「なら俺達は」
「プラントを守る為に」
「はい、共に戦いましょう」
こうしてプラントはロンド=ベルの友軍となった。だがタリアは彼等をクルーゼには向かわせなかった。
「あのプロヴィデンスには迂闊に近寄ってはいけないわ」
そう判断したからだ。
「距離を置いてティターンズに向かって」
「了解」
精鋭部隊だけをザルクに向け主力はティターンズに向かう。既にあの三機のガンダムは何処かへと消えアカツキは今はキラと戦っていた。シンは三機のガンダムを追っており今はここにいない。
ティターンズの艦艇はかなり数を減らしていた。モビルスーツもかなりの損害を受けており戦いの継続は困難になろうとしていた。
「劣勢か」
「残念ですが」
幕僚の一人がジブリールに応える。だが彼はまだ諦めてはいなかった。
「ドミニオンを前に出せ」
「どうされるのですか?」
「ローエングリンだ」
彼は言う。
「その砲撃で一気に状況を挽回させる、いいな」
「ローエングリンですか」
「そうだ」
ナタルにも答える。
「わかったな。ドミニオンを前に出せ」
「わかりました」
ドミニオンが前に出る。既にかなりのダメージを受けているがそれでもまだ動いていた。
ドミニオンの前にアークエンジェルがいた。ジブリールはそのアークエンジェルを見て叫んだ。
「アークエンジェルを沈める!いいな!」
「了解!ローエングリンてーーーーーーーっ!」
ローエングリンを放つ。ティターンズの他の敵艦やモビルスーツを相手にしていたアークエンジェルもアストレイの三人もそれには気付かなかった。光に気付いた時にはもう遅かった。
「艦長、左舷!」
「よけて!」
ミリアリアの声を聞いてすぐに指示を出す。だが。
さしものトールも舵取りが間に合わない。そのまま腹に当たるところであった。
「無理です艦長!」
トールが悲鳴をあげる。
「直撃です・・・・・・!」
カズイが青い顔で言う。
「このままだと」
「くっ・・・・・・」
サイの言葉にマリューは歯を噛み締める。こうなっては覚悟を決めるしかなかった。
だがその前に三人と共にアークエンジェルを護衛していたムウが前に出た。シールドでその砲撃を受け止める。
「なっ!」
「ムウ!」
ナタルとマリューはそれを見て同時に声をあげた。
「どうしてここで」
「ムウ、貴方」
「へへへ、ヒーローってのは絶対にいい場面で出て来るんだろ?」
ムウは笑いながらマリューにそう返す。
「そして不可能を可能にするもんだからな。だから」
流石に戦艦の主砲を受け止めるのは無理があった。ストライクは至るところから火を噴きはじめていた。
「ただ、ちょっと無理が過ぎたな。悪い」
彼は言う。
「ちょっと休むわ。じゃあな」
そのまま火を噴きながら落ちていく。マリューはそれを見て呆然としていた。
「ああ・・・・・・ムウ・・・・・・」
「艦長、ドミニオンが!」
だが戦いはまだ続いていた。ドミニオンはまだいたのだ。
「来ます!すぐに!」
ミリアリアはマリューに言う。マリューはすぐに我に返って言う。
「艦首を向けて!」
マリューはそれを受けて咄嗟に叫ぶ。
「ローエングリン一番二番てーーーーーーーっ!」
すぐにローエングリンを放つ。それはドミニオンを直撃した。
艦全体が揺れる。艦橋も。ナタルもジブリールも吹き飛ばされ激しいダメージを受けた。
「閣下!」
とりわけジブリールのダメージは深刻だった。全身を強く打ち口から血を吐いていた。
「くっ、もう駄目か」
彼は壁に背をもたれかけさせていた。しかし口からだけでなく全身から血を流していた。顔には死相が浮かんでいる。
「損害は?」
「艦長!」
「うう・・・・・・」
ナタルも倒れていた。帽子が彼女の横に落ちている。副長が何とか立ち上がって答える。
「全軍の損害、四割に達しました」
「そうか」
「今五割に」
「わかった。最早限界だな」
ジブリールはそこまで聞いて述べた。
「全軍撤退だ」
彼は指示を下す。
「ドミニオンは動くか?」
「いえ」
副長は首を空しく横に振った。
「既に。間もなくあちこちで火が起こるかと」
「そうか、わかった」
ジブリールはそれを聞いて述べる。
「負傷者を救助して総員退艦しろ。わかったな」
「はい、では閣下も」
「私はいい」
だがジブリールはそれを断った。
「この傷では助からん。わかったな」
「・・・・・・わかりました」
「急げ、残された時間はあまりない」
彼は言う。
「いいな」
「バジルール艦長」
副長はそこまで話を聞いてまだ倒れているナタルに声をかけた。
「艦長」
だがナタルからは返事はない。死んだのかと思った。だがそれは違っていた。
「私は・・・・・・一体・・・・・・」
どうやら頭を打ったらしい。痛そうに押さえている。
「確かオーブに・・・・・・それからまた」
「オーブだと」
ジブリールはそれを聞いてふと気付いた。
「艦長、まさか」
「私は・・・・・・」
「副長」
ジブリールはそんな彼女を見て副長に声をかけた。
「は、はい」
「まずは君が総員を退艦させよ。ただしだ」
「ただし?」
「脱出シャトルにはかなり余裕があるか」
「総員の分を入れてもまだ一隻余ります」
「そうか、ならそれは艦長の為に取っておいてくれ。私は彼女に言っておくことがある」
「わかりました。それでは」
「頼むぞ」
こうしてナタル以外はドミニオンから退艦していく。ナタルはジブリールと向かい合うことになった。
「記憶が戻ったようだな」
「はい」
ナタルは彼のその言葉に頷く。
「今確かに」
「そうか。ならいい」
ジブリールはそれを聞いて述べる。
「ずっと君をティターンズ、いや私の為に利用していた。記憶がないことを利用してな」
「そうだったのですか」
「ドミニオンの艦長としてな。それをまず謝罪する」
「閣下・・・・・・」
「もうすぐこの艦は沈む」
彼は言う。
「君も降りるのだ、いいな」
「しかし閣下」
「さっきも副長に言ったが私は助からん」
彼はナタルにもそれを言った。
「だからだ。このままこのドミニオンを墓標とする」
「そうなのですか」
「これは私の望みだったがコーディネイターを消し去り人類は人類で繁栄を迎える」
両方が彼の望みであった。それは最後まで変わらなかった。
「それを見れなかったのは残念だ」
そこまで言って目を閉じた。ロード=ジブリールは今ここに死を迎えた。
ナタルはそれを見届け敬礼を送った後脱出する。しかしドミニオンの爆発に見舞われ行方はわからなくなった。
ティターンズが撤退を開始する中フレイはまだ戦っていた。まるで撤退を無視するかのように。
同じ頃劾もまた戦場に残っていた。だが彼はフレイとは違っていた。
「困った奴等だ」
彼はあの三人を探していたのだ。
「何処へ行った?最後まで手のかかる」
ぶつぶつと不平を述べながら戦場を探し回る。そうして彼等を探すのであった。
フレイはキラと戦っている。フリーダムの圧倒的な火力を前にしても退かない。
「その程度の攻撃なんて!」
「くっ、フレイまだやるのか!」
「当然よ!」
彼女はキラに対して叫ぶ。
「コーディネイターなんかにやられるもんですか!」
「まだそんなことを!」
フレイはビームを放つ。キラはそれを受けてしまった。ミーティアに損傷を受ける。
「しまった!」
慌ててミーティアから離脱する。そこにフレイは迫る。
「これで終わりよ!」
「くっ!」
一気にビームサーベルで貫こうとする。しかしここでミーティアが爆発した。
「なっ!」
「フレイ!」
二人は爆発に巻き込まれる。その衝撃はアカツキの方が大きかった。その衝撃はコクピットの中まで及びフレイは全身、頭にも衝撃を受けた。それで何かが戻った。
「えっ、私」
急に我に返る。
「オーブのことが。どうして」
「フレイ、大丈夫かい?」
「キラ?」
「うん、僕だよ」
キラは彼女に声をかける。
「大丈夫?今のは」
「ええ、大丈夫よ。ただ」
「ただ」
「思い出したわ」
彼女は言う。
「今ね。全部」
「全部ってまさか」
「そうよ、私オーブで敵の攻撃を受けてそれで記憶をなくしていたの。それで」
「それで」
「ナタル艦長と一緒にティターンズにいたわ。全部思い出したの」
「そうだったの」
「ええ。全部ね」
コクピットの中で俯いて述べる。
「キラのこともシンのことも」
「シンのことも」
「彼、私のパパを殺したのよね」
「・・・・・・うん」
フレイのその言葉に頷く。
「そうだよ。彼が言ったし僕も見たから」
「そうよね。けれど」
フレイは言う。
「それでも戦いだから」
それがわかるようになっていた。だから受け入れることができた。
フレイは今戦うことを止めていた。キラも。しかし戦いはまだ続いていたのだ。
「あの男にできたのだ!ならば私も!」
クルーゼはまるで嵐の様に荒れ狂っていた。ドラグーンを乱れ飛ばす。
「できるのだ!それもさらに優秀にな!」
「くっ、このままでは無駄に損害が増えるだけだ!」
イザークは友軍が次々と減っているのを見て叫んだ。
「下がれ!俺が行く!」
「私も!」
シホも行く。ディアッカとニコルがそれに続く。
そこにアスランが来た。ミーティアは戦いの中で外していた。
「アスラン、御前はジェネシスの中に行け」
ディアッカが彼に言う。
「ジェネシスの中か」
「そうだ。何かおかしなことになっているみたいだからな」
「わかった、じゃあ行く」
「私が一緒について行く」
後ろからカガリが言ってきた。
「御前を守ってやる、いいな」
「済まない」
アスランはカガリに対して頷く。そして今ジェネシスに向かった。
その間もクルーゼの攻撃は続く。ザルクと戦うロンド=ベルに無差別にドラグーンを浴びせる。
「ラウ、これが貴方の!」
「そうだ、私よ!」
レイに対しても言う。
「これが私だ!何もかも滅ぼしてやる!」
「なら俺は!」
レイもドラグーンを一斉に放った。
「貴方を止める!何があっても!」
「ははははは!ならば止めてみるのだ!」
クルーゼはそのドラグーンを見ても笑っていた。
「君自身をな!」
レイも戦いに入るがそれでもクルーゼの攻撃は止まない。それはキラとフレイのところにも来ていた。
「キラ、私は」
フレイは彼を見ていた。
「これからどうすればいいのかしら」
「戻ればいいと思うよ」
それがキラの返事だった。
「戻ればいいの?」
「そうさ、皆待ってるから」
そうフレイに語る。
「だからね。さあ僕と一緒に」
「けれど私は貴方を」
「いいんだよ、そんなことは」
キラはそれも受け入れた。
「あの時は大変だったから。もういいんだよ」
「御免なさい」
「シンのこともいいんだよね」
「ええ」
彼女もシンを受け入れていた。
「あの子だって。心は感じたから」
「そう。じゃあ」
フレイはそのままキラのところへ向かおうとする。だがそこにドラグーンが迫る。二人が気付いた時はもう遅かった。
「あっ!?」
「しまった、まだ!」
それはフレイに向かう。今ビームが放たれようとしている。フレイのアカツキはそれに貫かれようとしていた。
しかしそこにシンが来た。彼はビームライフルでドラグーンを潰した。
「シン!」
「油断するな!」
シンはキラとフレイに対して言った。
「敵はまだいるんだぞ!」
「う、うん」
「貴方が私を守ってくれたの」
「あんた、もう戦う気はないんだろ?」
「ええ」
シンに答える。
「だったらいいさ。俺はな」
「そうなの」
「あんたの親父さんを殺したのは俺だ」
シンは自分でもそれを言う。
「隠しはしないさ。それは認める」
「ええ」
「済まない」
そのうえで謝罪してきた。
「あんたのたった一人の肉親をな」
「いいわ」
フレイはそれを受け入れた。
「私も貴方も。戦争にいるから」
「そうか」
「それに今私を助けてくれたし」
それでいいと。フレイは言う。
「有り難う」
「ああ」
「おいキラ、シン」
二人の話が終わったところでディアッカから通信が入る。
「すぐにこっちに来てくれ。アスランがジェネシスの中に入った」
「アスランが」
「カガリも一緒だ、クルーゼ隊長は何とか退けたけれどな」
「そうなんだ」
「そうさ、けれどジェネシスの中に入った」
「えっ、じゃあ」
「ああ、アスランが危ない」
ディアッカの声は何時になく真剣なものだった。
「追う、ニコルとイザークも一緒だ」
「じゃあ僕達も」
「そういうことだ、いいな」
「わかったよ。じゃあシン」
「ああ」
シンはキラに頷いた。
「聞いた、行くぞ」
「うん。フレイ」
シンと頷き合いジェネシスに向かう前にフレイに顔を向けてきた。
「また後で」
「ええ、また後で」
自由と運命の天使が要塞に向かう。フレイはそれを見送っていた。
「キラ、また貴方と」
フレイはキラを見守っていた。今彼は己の運命と最後の戦いに向かっていた。クルーゼはその牙を以って彼を待っていたのであった。
第百四十二話完
2007・2・12
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