とある星の力を使いし者
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第34話
あの後、二時間くらい経ってようやく寝る事が出来た麻生だが携帯電話が鳴り響き再び目を覚ます。
時計を見ると午前七時三〇分。
あれから三時間くらいしか寝ていないので凄く睡眠不足な麻生だが依然鳴り響いている携帯電話を手に取る。
「きょうす~け、おはようじゃん。」
声の主は黄泉川愛穂だった。
麻生は欠伸をしながら話をする。
「何だ、愛穂か。」
「むっ、何だとは失礼じゃん。
てか、恭介あんたもしかして眠いじゃん?」
「よく分かったな。
昨日色々あって、そんなに寝ていないんだ。」
寝不足なのだと麻生は愛穂に伝えるとふ~ん、と何か考えているのか少しだけ沈黙が続くとよし、と言う声が聞こえた。
「恭介、今日の昼頃空いている?」
「空いているといえば空いているな。」
「それならお昼ご飯をどこかで一緒に食べないかじゃん?」
「さっき、俺は寝不足だと言った筈だ。
この最悪なコンディションで炎天下の中を連れまわすのか?」
「若い者が寝不足くらいで倒れないじゃん。
じゃあ十二時にウチの家の近くのファミレス店に集合じゃん。」
そう言って一方的に伝え麻生の有無も聞かずに通話を切る。
麻生は数秒間は手に持っている携帯電話を見つめ、ため息を吐いて立ち上がり洗面所に行き顔を洗う。
あのまま昼まで寝ようかと一瞬考えたが、おそらく寝てしまうと確実に夕方まで寝てしまうので諦める。
いつもの服を着て出かけようとするが視界の端で上条から奪ったプリントの束が映る。
麻生は少し考えた後それも持っていくことにする。
どうせ愛穂と一緒にいたら確実に夜まで付き合わされるので、帰ってきてこのプリントを見てもやる気が全く湧いてこない筈だと考えた。
それなら昼間の内に終わらした方が良い筈だと思い、持っていくことにした。
学生寮を出てファミレス店に向かって歩く麻生だが、このまま一直線に向かっても早く着いてしまうので回り道をして散歩をしながら向かう事にする。
その選択が後に面倒な出来事に巻き込まれるとはこの時、麻生は思ってもみなかった。
ふらふら、と歩いていると声が聞こえた。
「ごめ~ん、待った~?」
そんな声が聞こえたが麻生が待ち合わせしている愛穂は、こんな声を出す女性ではない事は麻生が一番分かっている。
ので自分以外の人にでも声をかけているのだろうと適当に考え、ファミレスという目的地を目指しながら適当に散歩を再開しようと考えた麻生だが。
「待ったー?って言ってんでしょうが無視すんなやこらーっ!!」
麻生の背後から腰の辺りに女の子が思いっきりタックルしてきた。
しかし、麻生は本気の状態でないとはいえ聖人と戦える程の身体能力を身体に刻み込んでいる。
前のめり倒れそうになるが何とかステップを踏んで前にかかる体重を軽減して直前の所で踏ん張る。
麻生は俺にタックルしてきたのは誰だ!?、と腰にまとわりつく人物を確認する。
その人物は結構本気でタックルしたのに麻生が転がらない事に驚いているようだ。
その人物とは御坂美琴である。
「お前、何をしているんだ?」
表情は穏やかだが明らかに怒っていますよ雰囲気を醸し出す麻生。
だが、美琴はその雰囲気に気づいていないのか小声で麻生に話しかける。
(お願いお願い話を合わせて!!)
「は?」
訳が分からないといった顔をする麻生だが、美琴はどこか遠くを睨みながら小さく拳を握った。
麻生も美琴の見ている視線を追うと少し離れた歩道に、さわやか系の男が突っ立っていた。
美琴はさわやか系の男を一瞬だけ見ると引きつったような笑顔を浮かべて言った。
「あっはっは!
ごめーん遅れちゃってーっ!
待った待った?
お詫びになんか奢ってあげるからそれで許してね?」
「は?」
響く大声、絶句する麻生、遠くで気まずそうに視線を逸らすさわやか系の男。
そして唐突にバン!、と常盤台中学の女子寮にあるたくさんの窓が一斉に開け放たれる。
その光景を見た美琴の引きつった笑顔が凍りつく。
窓際に寄っている女子生徒達がひそひそひそひそ、と何か小声で話し合い、その中にはツインテールの少女、白井黒子が何やらものすごい顔をして口をパクパクと動かしている。
そして窓の一つに最高責任者らしき大人の女性が顔を出して何かを言う。
小声なのと距離が遠いので聞き取れなかったが美琴と麻生の脳内には確かに壮絶な言葉が叩き込まれた。
「面白い、寮の眼前で逢引とは良い度胸だ御坂。」
麻生はまた面倒な出来事に巻き込まれた、と心で呟き美琴はさらに顔の筋肉が引きつる。
「あはははははーっ!うわーん!!」
そしてヤケクソ気味に笑いながら麻生の手を掴んでそのままものすごい速度で走りだした。
麻生は訳が分からない状態で引きずられていった。
その後、一時間くらい街を走り回った。
「おい、俺はいつまで走り続けないといけないんだ?」
「うるさい、黙って!
ちょっと黙って!
お願いだから少し気持ちの整理をさせて!」
美琴はさっきから頭をブンブンと横に振り続けている。
麻生は周りを見渡すと、どこかの路地裏にでも入った辺りだろうと考える。
四方を背の高いビルに囲まれ、一つだけ背の低い寮のようなものがある。
美琴は深呼吸をするとようやく落ち着いたらしい。
「ふー、ごめん、ちょっと取り乱したみたい。
色々説明するからどっか座れる場所に行きましょう。」
「ちょっと待て、説明という事はまだめんどくさい出来事は続くのか?」
「もうすぐ一〇時だからお店も動きは始める時間よね。
ご飯は食べたばっかだし、軽くホットドックの屋台とかでいいかしら。」
「おい、俺の質問を普通に無視するな。
それと人を巻き込んで安いホットドックで済まされると思うなよ。」
「じゃ、それにしよっか。」
「は?」
「だから世界で一番高いホットドックにしよう、それなら文句ないでしょ?」
「俺が言いたいのはそんな事じゃな・・・人の話を最後まで聞け。」
麻生の意見を無視してずるずるずると美琴に引っ張られて路地を歩いていく。
一個二〇〇〇円。
その値段を見た麻生は店員ではなくどんな食材を使っているのか気になるのか、キャンピングカーを改造したような現代風の屋台の中を覗き込む。
だが、パンの具材や大きさが特別巨大という訳でもなく、何か奇妙な食材が放り込まれている事もない。
麻生は店員がホットドックを作っている作業を見てなぜか肩を震わせている。
「うん、あんたどうしたの?」
麻生の異変に気付いたのか美琴が尋ねる。
「俺は他人の料理ならどんなに手際が悪くても味が不味くても、その手順や作り方に口を出すつもりはないがこれは酷すぎる。
良い食材を使っているのにもったいない。」
そう言うと麻生はキャンピングカーの裏手に回り込み裏口から中に入り込む。
店員は麻生が入ってきたことに驚いているがそんな事を気にせずに麻生は店員に言う。
「一度しか見せないからよく見ておけ。」
そこから麻生の調理が始まる。
一つ一つの食材に丁寧に味付けをしていき、かつその速度は素早い。
美琴はホットドックに何を真剣にしているのか、とツッコミかけたが麻生の表情があまりにも真剣なので言えずにいる。
一〇分くらいした後、美琴と自分と店員の三人が試食できる数のホットドックが完成する。
美琴と店員はそのホットドックを一口食べると信じられないような表情をする。
「うそ・・・ホットドックってこんなにおいしい食べ物なの。」
「ホットドックだけじゃない。
全ての料理にはちゃんと丁寧に味付けや下ごしらえをすればおいしくなる。」
店員はさっき麻生がホットドックの手順を必死に思い出しメモに書いている。
麻生も自分で作ったホットドックを食べてまぁまぁだな、と呟く。
美琴はお金を払おうとしたが店員は四〇〇〇以上のモノを見せて貰ったからお金はいらないと言った。
美琴は何か申し訳なさそうな顔をしたが麻生は気にせず事情を聞くために近くにあるベンチに座る。
「ふ~ん、つまり海原って奴から離れればそれでよかったんだろ?
なら、その目標は達成できたんじゃないのか?」
大体の事情を聞いた麻生はそう美琴に質問する。
美琴は麻生の言葉を聞いてホットドックのマスタードが鼻につかないように格闘しながら考える。
「けどその離れるってのは「とりあえず」なのよね。
次に会ったらまた付きまとわれるのは確実だし、せっかくの機会だから二度と付きまとわられないようにしたいんだけど。
そうすると今日一日アンタと一緒に行動して、それをできるだけ多くの人に見て貰う。
そうすれば海原にも強い印象を与える事が出来て距離も離れていって・・・・ってどうしたの?露骨に嫌そうな顔して。」
「今の言葉を聞いて嫌な顔をしない奴がいたら教えてほしいね。
それに俺は昼ごろに知り合いと待ち合わせしているから一日中付き合ってやる事は出来ないぞ。」
ええ~、と残念な顔をする。
美琴からすればここで麻生が居なくなればこの計画が崩れてしまう。
そうなるとこれからどうすればいいのか?
手に持っているホットドックをテーブルの上において真剣に考える。
対する麻生もホットドックをテーブルの上において上条の宿題である古典のプリントを取り出す。
美琴はホットドックを食べようとして手を伸ばすが、テーブルの上にホットドックが二個置いてあることに気づいて手が止まる。
「アンタ、どっち食べてたか覚えてる?」
古典のプリントをパラパラと流し読みしていた麻生に聞く。
麻生は視線だけをテーブルの上に向けて適当に答えた。
「さぁな、こっちなんじゃないのか?」
と言って手前にあるホットドックに手を伸ばすが美琴がその手を掴む。
「ちょ、ちょっと待ちなさい、確かめさせて。」
ええ~、とめんどくさそうな顔をする麻生だがそんなの無視して二つのホットドックを見比べる。
どうやら食べかけの部分を凝視しているようだが、そんなインデックスのような完全記憶能力みたいな能力がなければ分かる訳がない。
麻生も能力を使えば見分けがつくがそんなしょうもない事に能力を使う訳がない。
「分かったか?」
「・・・・・・・」
「分かっ・・・」
「ああもう!分かんないわよ!
じゃあいい、アンタの言うとおりこっちの右の方がアンタで左は私でいい!
まったく、ちょっとは気にしなさいよこの馬鹿!」
何で馬鹿呼ばわりをされないといけないんだ?、と思いながらホットドックを食べる。
美琴は両手でホットドックを掴み口がピッタリと閉じて黙っていて動きも凍りついてた。
そしてしばらく眺めてからやがて小動物のように口へ含んだ。
「それで恋人役は昼ごろまで付き合ってやるとして一体どんなことをするんだ?」
「え?どんなことって・・・・」
どうしよう?といった顔をする美琴。
その顔を見て何も考えていなかったのか、と呆れた表情を浮かべてため息をつく麻生だった。
後書き
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