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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第11話 盗賊?勘弁してください!!

 おはようございます。ギルバートです。この情勢下で、ヴァリエール公爵の家に遊びに行く事になってしまいました。果てしなく不安です。そもそもヴァリエール公爵は、自分の娘可愛さで他人の子供を危険にさらす様な人なのでしょうか?

 そう考えた時に、私の中に嫌な考えが浮かびました。

 まさか……囮。なんて事は……うん。流石に無い。……無い。無いよね……?

 ……落ち着け。……深呼吸……深呼吸。

 それよりも公爵家にお邪魔するなら、コネを作っておきたいです。しかし、如何やって気を引くかが問題ですね。現状ではマギを前面に出して、ルイズの魔法の事で興味を引くのが一番有効です。……私は嘘吐きですから。大嘘憑きになれれば楽だと思いますが、いくら私でも人外にはなれません。

 父上は、朝と呼ぶには遅い時間に帰って来ました。その顔には、疲労が色濃く出て居ます。父上もいろいろと、大変だったのでしょう。

 さて、いよいよ出発です。先ずはモンモランシ伯爵領に向かい、モンモランシー嬢(&その護衛)と合流してから、ヴァリエール公爵領へ向かいます。

 私達が乗るのは、四人乗りの馬車です。護衛は母上とその騎獣グリフォン。そして、守備隊から信用できる者2人に騎馬でついて来てもらいます。

 最も危険と予想されるのは、モンモランシ領を出てからヴァリエール公爵領に入るまでです。それ以外でも油断は出来ませんが、やはりここの危険度は段違いと言えるでしょう。注意せねばなりません。



 ドリュアス領を出発してから、何の問題も無くモンモランシ伯爵の館に到着する事が出来ました。緊張していたので気付きませんでしたが、私とアナスタシアは自領から出るのは始めてです。

 そう言えば、マギが始めて旅行で国外に行った時、日本脱出と騒いでいた事を思い出しました。あの時はマギも若かったですね。

 今はモンモランシ家の若い使用人に、到着を報せてもらっています。

 しかし、でかいです。なにが?って……館がです。ドリュアス家の3倍……いや、4倍は大きいですね。普通に生きる分には、こんなに大きな館は要らないと思いのですが、これも貴族の見栄と言う奴なのでしょう。こんな不毛な贅沢をしている一方で、領内に貧民がたくさん居るのは如何かと思います。しかし、母上曰く。

「トリステイン貴族の中でも、モンモランシ伯は領地経営に熱心な方ね。ドリュアス領は、そう言った意味では異常よ。平民の生活水準が高すぎるわ」

 ……との事。市場には活気がありましたし、衛兵もちゃんと見回りしていたので、そうなのかもしれません。確かに昔のドリュアス領と比べれば、今のモンモランシ領の方がはるかに豊かです。

 ここで先程の若い使用人が、老執事を連れて戻ってきました。老執事が、屋敷の中に案内してくれる様です。

(家人の出迎えは無しですか。格下とはいえ、友好関係にある家なのに……)

 母上はこの対応に、特に何も感じていない様です。貴族の対応は“これが当たり前なのかな?”と、少しだけ寂しい気持ちになりました。しかしそれが誤解である事が、最初に通された部屋で解りました。

 そう。その部屋は寝室だったのです。

 モンモランシ伯爵夫人は、ベットから上半身だけ起こすと「満足におもてなし出来なくて、ごめんなさい」と、言いました。母上は笑顔で「気にしないで」と返します。どうやらモンモランシ夫人は、体調を崩しているようです。顔色も悪く、生気を感じられません。しかし、母上は夫人と仲が良いのでしょうか?

「ごめんなさい。こんな時に体調崩すなんて……」

「コレット。あなたは何時も頑張り過ぎなのよ。もっと自分を大切にしなさい。折角だから、今回の事は私に任せてゆっくり休んでいると良いわ」

 ……えーと。母上とモンモランシ夫人って、親しい?と言うか友人関係ですか? いえ、コレットなんて親しそうに呼んでいるのです。相当親しいのでしょう。

「ええ。そうするわ。家のモンモランシーをよろしくね。シルフィア」

 それからモンモランシーを紹介してもらいました。まだ5歳だけあって、チビッ子です。……既に髪は、縦ロール化していましたが。

「私はディーネよ」

「ギルバートです」

「アナスタシア……」

 ディーネだけがニコニコ笑顔で名乗りましたが、私とアナスタシアは簡素……と言うか、かなりぶっきら棒に名前だけ口にしました。ザ・人見知り発動です。情けないです。こんな小さな子に……。

 この状況でモンモランシーが誰に興味を示すかなど、論じるまでも無いでしょう。

「モ モンモランシー……です」

 ディーネの方を見ながら、たどたどしく名乗ってくれました。

 ディーネは良く出来ましたと言わんばかりに、モンモランシーに近づき優しく頭を撫でてあげます。モンモランシーも、嬉しそうに頭を撫でられていました。

 周りはその光景を、微笑ましく見守っています。一人の例外を除いて……。

 そう。アナスタシアです。

 アナスタシアからすれば、自分の姉を盗られたような感覚なのでしょう。モンモランシーに向けて、ギンッと目から敵対光線(ビーム)を発射しています。

 子供はその辺の勘が鋭い様で、モンモランシーは直ぐにディーネの後ろに隠れてしまいました。

 アナスタシアは、それが面白く無いのでしょう。怒りのボルテージが、急速に上がって行きます。

「うぅー……。うぅー……」

 唸り声を上げは時また所で、流石に喧嘩になるのは不味いと思い、アナスタシアを抱きしめ頭を撫でてあげます。落ち着くまで、このままで居た方が良いでしょう。

 今の光景は、友達を怒らせた子供が姉の影に隠れ、怒った方は兄に慰められているまさにそれです。そこには兄妹と姉妹の姿が、確かにありました。

 暫く頭を撫でて居ると、アナスタシアの唸り声も止み大人しくなりました。落ち着いたと判断した私は、アナスタシアをモンモランシーの前へ連れて行きます。

「こんな妹だけど、よろしくね」

 私は、モンモランシーの頭を撫でながらお願いしました。モンモランシーは元気に「はい!!」と、返事をしてくれました。

 結局この日は、モンモランシ伯の館に一泊させていただきました。女の子連中は、一緒の部屋でパジャマパーティーらしき物をしていました。なんか、凄い疎外感があります。私の周りには、友人と呼べる男は居ないのでしょうか? ……割と切実です。寂しさのあまり、涙が出て来てしまいました。



 次の日には、伯爵夫人に挨拶をし、ヴァリエール公爵の館に出発します。

 モンモランシ伯爵夫人は護衛として、剣士6人とメイジ2人の計8人をつけてくれました。

 剣士6人は、モンモランシ領出身の信用のおける者達で構成されています。メイジ2人も親が没落貴族で、親の代にモンモランシ伯に拾われた者達だそうです。2人とも火のメイジで、1人はラインメイジもう1人はトライアングルメイジだそうです。

 ラインメイジの名前は、クレマンさん。無愛想で無口な厳ついオジサンですが、私達に接する所作に不器用ながら優しさを感じる人でした。戦闘スタイルは接近戦を主体とし、そのサポートに火系統魔法を使う変わり種です。

 トライアングルメイジの名前は、アルノーさん。いつもニコニコしている気の良いオジサンで、戦闘スタイルは魔法戦を主体とし、接近戦もこなすオールラウンダーです。

 これだけでは、アルノーさんの方が強そうに聞こえますが、戦闘になるとクレマンさんの方が圧倒的に強いそうです。クレマンさんは敵の魔法を見切り接近戦に持ち込む天才で、アルノーさん曰く「魔法が使えなければ、立派なメイジ殺しだ」と言っていました。

 2人とも私達の事を気に入ってくれて、独自の魔法理論を話してくれました。私とディーネは主にクレマンさんから話を聞き、アナスタシアはアルノーさんから主に話を聞かせてもらってました。

 ……2人とも私を坊主とか言って、頭をクシャクシャにするの止めて欲しいです。



 モンモランシ領から出て2日目、急にアルノーさんが話をしなくなりました。アナスタシアはその事で、私に愚痴を言っていました。

 クレマンさんもアルノーさんの様子がおかしい事を、心配していました。

 不安な点もありましたが、旅は行程は問題無く消化されて行きます。そしてようやく、ヴァリエール公爵領に入る事が出来ました。とりあえず一番危険な場所は、無事に通り抜ける事が出来たのです。

 しかし油断大敵とは、良く言ったものです。馬車の小窓から外を覗いていると、茂みに弓らしきものが見えたのです。私は声を上げようとしますが、それより早く矢は放たれました。

 矢は、母上に向かって飛んで行きます。母上も気づいていたのか、グリフォンの手綱を僅かに操作するだけで見事にかわしました。そしてお返しとばかりに、エア・カッターを矢が飛んできた茂みに放ちます。

 エア・カッター着弾と同時に響いたのは、人の悲鳴でした。それを合図にする様に、馬車も止まります。

 護衛達が警戒態勢に移行すると、近くの木や岩の影茂みから20人を超える盗賊達が現れました。しかも、その大半が杖(ワンド・スタッフ)を手にしていたのです。残る剣士数人の得物も軍杖(杖が剣等の武器型)と見て間違いないでしょう。何故なら、弓で攻撃してきた仲間の死体をチラッと見て「これだから、魔法が使えねー屑は」などと、口にしていたからです。

 盗賊団の頭らしき男が、一歩前に出ました。

「よー。降参してくれねーかな。男は首切り落とすけど、女は可愛がってやるぜ~」

 頭の発言に周りの盗賊どもは、下品な笑い声を上げます。

 私はとっさに母上の方を見ましたが、母上から何か怖い物が流れ出していました。久々に感じたから、すぐには解らなかったのですが……これは殺気です。

「ならば、私が相手になりましょう。この《乱風(らんぷう)》のシルフィアが……」

 その瞬間、確かに盗賊達の動きが一瞬止まりました。そう言えば母上の二つ名を聞くのは、これが初めてです。見るとモンモランシーとディーネも、固まっていました。話に着いて行けないのは、私とアナスタシアだけの様です。

(知らぬは実子ばかりなり。ですか……)

 盗賊達は動揺している様です。口々に「聞いていない」とか「楽な仕事じゃ無かったのか」等と、騒いでいます。その隙に母上は、偏在を5人作りだし戦闘準備を終えました。

「馬車を動かして距離を取りますよ」

 そう言ってきたのは、ドリュアス領から護衛してきた守備隊の1人です。所作からすると、盗賊達より母上の方を警戒している様に見えます。

 ……なんでさ?

 疑問の思う私を余所に、戦闘が始まり馬車は勢い良く動き出します。そしてその意味は、すぐに分かりました。母上の攻撃は、エア・ストームやカッター・トルネードの様な範囲攻撃ばかりなのです。その戦いぶりは、《乱風》の名にふさわしいと言えるでしょう。近くにいれば、確実に巻き込まれます。

 しかし逃げる選択肢も、正解とは言えなかった様です。矢が次々に馬車に向かって、飛んで来ました。これを迎撃したのは、クレマンさんです。炎で矢を全て燃やし尽くし、全ての矢を防ぎました。今度の人数は8人程度で、メイジは居ないみたいです。しかし進行方向を、完全に塞がれてしまいました。

 自然と馬車は停止し、騎兵8人で迎撃します。当然メイジ2人は、援護と周囲の警戒にあたる形になります。クレマンさんとアルノーさんは何かあった時、馬上では対処しづらいと判断したのか下馬していました。

「……妙だな」

 クレマンさんが、訝しげに呟きます。クレマンさんが馬車の側に居た為、ギリギリ聞こえました。私はクレマンさんの、次の言葉を待ちます。

「この状況で、これ以上の増援が無い?」

 その時アルノーさんがクレマンさんに、近づいて来ました。アルノーさんがクレマンさんにぶつかると、クレマンさんは目を大きく見開きます。

「なっ……坊主……に げ…… ガフッ」

 次の瞬間クレマンさんが、血を吐きながら地面に倒れました。

(アルノーさんが、クレマンさんを刺した?)

 ハッキリ言って、目の前で起きた事が信じられませんでした。そんな状態で、反射的に杖に手が伸びたのは、母上の教育の賜物と言えるでしょう。アルノーさんは、大きく一歩馬車から距離を取ります。そしてアルノーさんの口から、ルーン詠唱が……。

 アルノーさんの口がルーンを紡ぎ始めたと同時に、私はかつて無いほどの集中力を発揮していました。


 ……時がゆっくり流れる感覚。それはマギの時、最後に見た走馬灯の感覚と似ていた。周りの事が、一気に頭の中へ流れ込んで来る。

 この詠唱は……フレイム・ボール。狙いは馬車。つまり私達。

 アルノーが唱えようとしている魔法と目標が解かった。

 ディーネも詠唱に入っているが、これは……ウォーター・シールド。

 無理だ。ドットメイジのウォーター・シールドでは、トライアングルメイジのフレイム・ボールは防げない。

 母上は間に合わない。騎兵達は、こちらを気にする余裕さえ無い。アナスタシアとモンモランシーは、状況がつかめず呆然とするばかり。

 ここは如何する? 答えは直ぐに出た。敵に魔法を撃たせなければ良い。それには如何すれば良い? 簡単だ……。


 ……コロセバイイ


 そう結論した瞬間、私は馬車から飛び出していた。一瞬で殺す為の魔法を頭の中で検索する。系統魔法は、詠唱の関係でオール却下。なら、コモン・マジックだ。マジックアロー、マジックミサイル、ブレイドが検索に引っかかった。マジックアローとマジックミサイルは、確実に致命傷をあたえる事は難しい。成功率は6割前後。残念だが、4割も失敗する可能性がある。ならブレイドだ。刃を限界まで伸ばせば、確実に殺せる。

「ブレイド」

 私の杖から、漆黒の刀身が現れる。私の全精神力をブレイドに叩きこみ、刀身を伸ばす。

 私のブレイドの色に、アルノーは驚き一瞬詠唱が止まった。しかしすぐに冷静さを取り戻すと、もう一度大きくバックステップをする。これだけで、ドットである私のブレイドは届かなくなった。ブレイドを届かせる為に、間合いを一歩詰めている間にフレイム・ボールが完成する。

 タリナイ……。なら命も使え。解っているのか? 自分の後ろに誰が居るのか……。

 その時、自分の中の何かが膨れ上がる感覚があった。その次の瞬間には、ブレイドは十分な長さへと伸びていた。

(ドットからラインへ……か)

 そして私のブレイドが、剣道の片手面の軌道を最短でなぞる。だが間に合わなかったようだ。フレイム・ボールの魔法が完成する。

 ……ならば、魔法ごと切って捨てる。

 都合の良い事に、私の斬撃の通り道に発動中のフレイム・ボールがある。なら剣の軌道を変える必要は無い。

 ここでアルノーは、私のブレイドが更に伸びたことに気付き動揺した。目の前のドットメイジでは、届かない位置に下がった。なのに黒き断罪の刃は、自分を切断するに足る長さへと変わっていた。

 信じられない。その時のアルノーの表情は、間違いなくそう語っていた。

 私のブレイドは、アルノーの右頭頂部から入り右目を通り口の右の方を抜け首から胸へ、この時左手ごとフレイム・ボールを切り裂いた。そして、ブレイドは腹を通過し左大腿部で刃が体外に抜けた。

 ……即死だ。

 次の瞬間、私の視界は炎で埋め尽くされていた。 






 気付くと私は暗い場所にいた。ここは……? 
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