真・恋姫†無双 これはひとりの仙人無双
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海神(わだつみ)の子孫
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
綿月の家は、かなりのお金持ちと言える家である。
そのために、結構な人数のホームキーパーがいたりするのだが、今日はいつもと違って異常なぐらいに静かだった。
今家にいるのは姉である豊姫と、妹の依姫。そして、鈴仙以下数名のホームキーパーである。
彼女たちは知らなかったが、実際は綿月の家と、紅龍の八意の家は数代前からのつながりもあったためにお互いが幼いころからのつながりもあった。
そして、会うたびに優しくしてくれたりと、彼女たちにとっていい人物であった。
その人物が死んだ。
そしてその原因は依姫が一端を担っている。
あまりにも重苦しい雰囲気の中、誰も声を上げることができず、先ほどからはカチッカチッという時計の音と、無造作に同じ内容を繰り返すテレビのアナウンサーの声だけが流れていた。
悲しみ、その言葉だけでは表せないぐらいに、彼女たちの心を大きく傷つけた。そこに追撃で心のないコメンテーターたちの言葉が突き刺さる。
憤りも感じていたし、何よりものうのうと安全な場所で紅龍のことをけなすのが気に入らなかった。
プツンッ
依姫が動き、テレビのスイッチを切った。
そして、彼女は辛そうな表情のまま、口を開いた。
「姉さん・・・・・、もし私が死んだら、悲しんでくれる?」
依姫の言葉には重みがあった。
まるでこれからそれを実行しようとでも言わんばかりに・・・・。
そんな依姫の言葉に豊姫はハッとする。自分も彼が死んだのは辛いが、妹にとってはもっと辛いことであり、放っておけば本当に死ぬかもしれない。
「馬鹿なことは言わないで。私や依姫が死んだって紅龍は喜ばないわよ」
「それどころかあの人じゃ怒る気もしますけどね」
豊姫の言葉に続けて、鈴仙もそんなことを口にするが、やはり依姫にはどこか暗いところもあった。
「ごめん、ちょっと学校行ってきます」
ちょっと一人にして。
そんなことを彼女の目は語っていた気がした。
それ故に、豊姫も、鈴仙も声をかけることができなかった。
止めなくてはならない、そうはわかっていても、彼女の雰囲気に足踏みしてしまう。学校に行けば、余計にみんなが声をかけてくる可能性はある。
それどころか茶化すようなものもあるだろう。
人の死というものが現代社会では軽くなっている。
友達間の喧嘩や、冗談交じりのふざけている最中にも死ね、という言葉は当然のごとく放たれる。
誰もがみんなそう簡単に口にするので、誰もそのおかしさには気付けていない。
一般的に死という言葉を口にするせいで、死に対する感覚も薄くなってきた。それに、今時は家で死ぬ人もいるが、病院でなくなる方が多いので、死に対する実感もわかない。
そんな中で学校に行けば彼に対する思い入れや、死の実感がない人たちが、依姫の周囲に群がるだろう。あの子は自分では気づいていないけど・・・・・、と豊姫はひとつのことを考える。
依姫はいわゆる美少女というやつであり、異性にも好かれている。恋慕という意味でだ。そしてこれまでは、紅龍と付き合っていたと勝手に周囲が判断している部分もあったので下手に声をかけられることもほとんどなかった。
だが、今はその紅龍が亡くなってしまったし、それをネタに話しかける人もいるはず。
「鈴仙、あなたも一応は中学二年生であのこと同じクラスだったわね?」
「はい、そうですけど・・・・」
「今日はこっそりあの子についていきなさい」
「分かりました」
せめて鈴仙をつけておかないと・・・・・・・・。
今のあの子は何をしでかすかがわからない。
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