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戦国異伝

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第百十一話 青を見つつその六

「その様に」
「うむ。信長殿は甲賀に飛騨者を召抱えておられるが」
「あの飛騨者達ですが」
 服部が彼等について述べる。
「十勇士と同じくかなりの者達です」
「普通の忍と違うのう」
「異人もおります故」
 ヨハネスのことだ。この国においては確かに異彩を放っている。
「普通の者達ではありませぬ」
「忍としてもな」
「はい、そうです」
「信長殿の下にはとかく色々な御仁が来るのう」
「まさに梁山泊ですな」
 ここで水滸伝を出したのは本多正信だった。
「織田家は」
「うむ、信長殿が主でな」
「そこに星達が集まっております」
「そうじゃな」
「まさにそれです」 
 梁山泊だというのだ。
「織田家は」
「百八人おるかのう」
 家康はここで冗談も入れた。
「やはりな」
「流石にそこまでは」
 本多も笑って返す。
「それがしも知りません」
「しかしまさにあの星達の如くじゃな」
「織田家には人が集まっております」
 このことは間違いないというのだ。
「かなりの状況です」
「そうじゃな。とにかくじゃ」
「はい」
「我が家も頑張らねばな」
 家康の今の言葉はおっとりとしているがそれと共に確かなものだった。その口調でこう言ったのである。「戦国の世は生きてはいけぬわ」
「ですな。確かに」
「今は」
「滅びるつもりはない」
 それは絶対にだというのだ。
「生き残り確かに暮らしていきちわ」
「武田を相手にしても」
「それでもですな」
「三河武士の意地もある」
 三河武士は武辺者の集まりだ、質実剛健で家康に絶対の忠誠を誓う、そうした者達として知られているのだ。
 その三河武士達に家康は言うのだ。
「では頼むぞ」
「お任せあれ」
「では」 
 彼等も応える。徳川家は一つにまとまりそのうえで政も進めようとしていた。
 幸村は信濃の己の城で人を待っていた。櫓の中に座って槍の刃を磨いているとそこにだった。
 まずは猿飛が来た。続いて三好の兄弟が。
 彼等は幸村の前にさっと降り立ち片膝を折っている、そこに霧隠、海野、望月とくる。穴山、根津、由利、筧と十人揃った。
 幸村は彼等が己の前に来るとすぐにこう問うた。
「織田と徳川はどうだ」
「はい、まずは織田家ですが」
 海野が幸村の問いに答える。
「一刻一刻と豊かになっておりまする」
「ふむ。楽市楽座か」
「田も多くなりどの田も見事です」
 海野は田の話もした。
「川も堤があり道も敷かれていっております」
「本気で政をしておるのか」
「間違いなく」
「そうか。織田家は強くなっているか」
「ただの七百六十万石ではありませぬ」
 今度は霧隠が幸村に話す。 
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