対決!!天本博士対クラウン
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第五百二十五話
第五百二十五話 お母さんの注意
華奈子と美奈子は自分達の家でもモーツァルトの話ばかりしていた。それは晩御飯の時も同じであった。
アレンジの仕方だけでなく歌い方や元々の歌のことも話す。とにかく二人の話はそのことで持ちきりだった。
「テノールの曲も聴いてみましょう」
「男の人の高音よね」
「そう、歌えるかも知れないから」
「声域合わない場合はどうするの?」
華奈子はおかずの鰯の煮たものを食べながら美奈子に問う。
「その場合は。テノールっていっても色々よね」
「ええ。高い低いがあるわ」
「テノールでも低いと」
歌えないのではないのか、華奈子はこのことを言う。
「あたし達じゃ無理よね」
「そうね。けれどね」
「けれどって?」
「モーツァルトの場合は高いテノールが多いのよ」
所謂リリック=テノールだ。モーツァルトの音楽は全体的に高音で軽やかな感じの曲が多いことも影響しているだろうか。
「だからね。私達が歌うにはね」
「問題ないのね」
「ええ、大丈夫よ」
美奈子は美奈子でおかずのズッキーニと玉葱に大蒜、トマトをじっくりと煮たものを食べている。汁まで美味い。
「それはね」
「そうなのね」
「安心して歌えるから。けれど」
「アレンジは必要かしら」
「やっぱり必要になるわね」
クラシックの曲をロックやポップスで歌うならばどうしてもだった。
「だからこのことはね」
「注意しないと駄目なのね」
「そういうことだから」
「成程ね」34
二人でこんな話をしながら御飯を食べる。だが。
その二人の話を聞いていたお母さんがこう言ってきた。
「あんた達お話もいいけれど」
「御飯食べろっていうのね」
「そうよね」
「そう。お喋りもいいけれど」
お母さんもそれは否定しない。
「まずは食べなさい。いいわね」
「わかったわ。じゃあね」
「じっくりと食べてから」
「食べたら歯を磨いて」
このことを言うのも忘れないお母さんだった。
「それからまたお話しなさい」
「わかったわ」
二人同時に応える。二人の息はここでもぴったりと合っていた。そして二人で一緒に御飯を食べていくのだった。
第五百二十五話 完
2012・9・17
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