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戦国異伝

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第八十二話 慎重な進みその九


 そのことはあるがそれでもだ。明智は信長をそれだと言うのだった。
「しかしそれでもです。あの方はです」
「日輪でござるな」
「そう思いまする」
「では。我等はその日輪と共に」
「はい、進みましょう」
 こう言ってだった。彼等は信長のことも確かめ合うのだった。
 そしてそのうえで丹波の八代に向かうのだった。その丹羽の軍勢のことを聞いてだ。
 信長は満足した顔でだ。こう森と池田に述べた。
「よいことじゃ」
「ですな。流石は五郎左殿です」
 池田が微笑みこう信長に答えた。
「ここまで順調に兵を進められるとは」
「五朗左だけではないな」
 信長がこう言うとだ。池田はすぐに彼の名前も出したのだった。
「明智殿ですか」
「やはり気付いておるか」
「はい」
 そうだとだ。池田は実直に信長に答えた。
「あの御仁もかなりの方かと」
「そうじゃ。今は幕府におるがじゃ」
「それでもで、ございますな」
「我が家の為に働いてくれるのは有難い」
 丹羽の誘いについての話である。
「五郎左もやってくれた。禄は出す」
「では公方様にですか」
「このことを」
「わしから都に帰った時にお話しておく」
 実質的にだ。明智達を織田家に入れるというのだ。つまり明智達は幕臣であると共に織田家の家臣にもなるということなのである。
 このことを信長自身も言いだ。そのうえでだった。
「よいことじゃ。国が手に入りじゃ」
「して人もですか」
「当家に入っていっていると」
「よいことじゃ。しかし手に入れるだけではない」
 それで終わる信長だった。彼が見ているものはそこから先だった。
 その先のものは何かということもだ。信長は森と池田に話した。
「わかるな。手に入れたものはじゃ」
「治めるのですな」
「そして人は用いるものと」
「そうじゃ。国は治め人は用いるものじゃ」
 まさにそうだとだ。信長は二人に述べたのだ。
 そしてだ。さらにこんなことを言ったのだった。
「手に入れて終わりではないのじゃ」
「むしろそこからですな、大事なのは」
「どうして治め用いるかが」
「大事じゃ。まさにじゃ」
 その通りだとだ。信長は二人に言いだ。
 それからだ。目の前にいる竹中にだ。こう言ったのだった。
「して御主はじゃ」
「はい、それがしは」
「軍師として働いてもらうがじゃ」
「それと共にでございますか」
「国を治めることにも働いてもらう」
 政についてもだ。そうしてもらいたいというのだ。
「これまでもそうしておるがじゃ」
「田畑に町、そして道に堤に」
「白を修繕したり築くこともじゃ」
 そうしたこと全てを含めてだ。政だというのだ。
 その政にだ。竹中はというのだ。
「よいな。働いてもらうぞ」
「わかりました。それでは」
「軍師として終わってもらっては寂しい」
 一礼した竹中にだ。信長は笑ってこう述べた。
「御主にはより大きくなって欲しいのじゃ」
「大きくですか」
「そうじゃ。御主も戦が全てではないことはわかっていよう」
「はい」
 まさにその通りだとだ。竹中も答えた。 
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