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戦国異伝

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第八十話 大和糾合その五


「斬るつもりです」
「ですか。そうあるべきですね」
「ですな。あの男は信用できませぬ」
「信用できないどころではありませんね」
「今は織田家にいますが」
 それでもだとだ。言う滝川だった。
「織田家を三好家の様に内から食い荒らすつもりでしょうか」
「そう考えてよいかと」
「やはりそうですか」
「何故この大和を手に入れんとしたかというとです」
 それは何故かというとだ。筒井はいよいよ眉を顰めさせて述べた。
「この国を全て己のものにしたいからだったのです」
「この大和を」
「はい、大和は百万石です」
 石高としては相当なものだ。伊勢や美濃よりもまだ上なのだ。
「その百万石を己のものとしてそのうえで」
「天下を」
「そう狙うかと」
 こう言うのだった。
「あの男はかなりの野心の持ち主でもありますから」
「ですな。大和は都からすぐですし」
「全ての己のものとしたうえで」
「天下を狙っていたかと」
「成程。しかしです」
 筒井の話をここまで聞いたうえでだ。滝川はだ。
 しきりに目を鋭くさせた顔になりだ。こう彼に述べたのだった。
「信長様の家臣となられればです」
「その心配がなくなりますな」
「だからこそです」
「織田家に入られるのですか」
「己の為です。しかしです」
「しかしとは」
「信長様が天下を泰平に為される」
 このことにもだ。筒井は言及するのだった。
「そのことはそれがし達誰もがです」
「感服されましたか」
「その為に力を添わせて頂きたいです」
 身を乗り出してさえきてだ。筒井は滝川に述べた。
「正直我等も天下の乱れに疲れ果てております」
「左様ですな。戦乱がこうも続くと」
「是非共。微力ながら」
「では。これよりは」
「はい、我等は織田家の末席に加えて頂き」
 そうしてだと言ってだ。筒井はだ。
 滝川に酒を勧めて彼の盃に一杯入れてからだ。こう言ったのだった。
「そして天下泰平をもたらしたいです」
「ううむ、筒井殿もかなりの方ですな」
「それがしがですか」
「はい、天下泰平をもたらすという殿のお考えに賛同して頂けるとは」
「そのことでそれがしをかなりの者だと」
「そう思いまする。しかし」
 滝川は途中まで笑顔だった。しかしだ。
 やがて深刻な顔になりだ。あの話に戻ったのだった。
「松永弾正はやはり」
「全く信用できませぬ」
「ですな。どうにも」
「拙僧はかつて都におりました」
 ここで雪斎も言って来た。彼の前には般若湯、即ち酒はあるがそれでもだった。
 それには手をつけずにそのうえでだ。こう言ったのだった。
「あれだけの茶器、天下無双の九十九茄子ですが」
「あの茶器ですな」
「あれだけの茶器を持つ御仁となると噂にならない筈がありませぬ」
 それだけの茶器の持ち主としてだ。
「ましてやあの御仁はあれで茶の道だけでなく学者にも負けぬ学識も備えております」
「雪斎殿以上のだと」
「そこまでだというのですか」
「左様です。あそこまでになると」
 どうかというのだ。そこまでの学識の持ち主はだというのだ。 
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