久遠の神話
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第六話 上城の初戦その六
「結局私にはあれなのよ」
「あれって?」
「身体には黒と黄色の血液が流れてるのよ」
そしてその血液が何かというと。
「猛虎の血がね」
「じゃあ甲子園は?」
「聖地じゃない」
まさに阪神ファンの言葉だ。
「それ以外に言い様がないわね」
「だから名古屋は」
「中日じゃなくて阪神だったらよかったのに」
こう上城に話すのである。
「そう思ってやまないわ」
「成程ね。じゃあ樹里ちゃんって」
「そう。生粋の関西人のつもりよ」
例えういろうが好きでもだ。そうだというのだ。
「そのつもりだから」
「成程ね」
「関西のお菓子っていったらアイスキャンデーもあるし」
北極のだ。大阪の店だ。
「他にも一杯あるしね」
「だよね。関西も美味しいものは一杯あるから」
「特にこの学園は」
八条学園はだ。そうだというのだ。
「そうした意味でもいい学校よね」
「それは確かにそうだね」
そんな話をしてだった。二人はだ。
ういろうを楽しんでからだ。それからだった。
部活にそれぞれ行きだ。その後でだ。
一緒に下校する。外はもう暗くなろうとしている。
その中でだ。公園の前を通るとだ。
そこにだ。出て来たのだった。
見ればだ。巨大な蛇だ。それを見てだ。
樹里がだ。こう言ったのだった。
「あの蛇は確か」
「普通の大蛇じゃないの?」
「あれじゃないの?牡羊座の毛皮を護っていた」
黄道十二宮のそれである。
「あの竜なんじゃ」
「蛇じゃないんだ」
「何か違うと思うわ」
とぐろを巻く十メートルは優に超えるそれを見て話す樹里だった。
見ればそれは赤く血走った目をしている。その目だけを見れば悪霊に見える。しかし悪霊にはない生気をたたえてだ。それはいたのだ。
それを見てだ。樹里は話すのである。
「多分だけれど」
「そうなんだ。あれは」
「竜だと思うわ」
「けれど。手足はないし」
上城はその蛇そのままの巨体を見て話す。
「それでもなんだ」
「はい、そうです」
ここでだ。聡美の声がした。それと共にだ。
彼女が上城の隣に駆けてきた。そうして話してきたのだ。
「あの、まさかとは思いましたが」
「あれっ、銀月さん?」
「どうしてここに」
「たまたま通り掛かったんです」
そうだというのだ。
「まさかと思いましたけれど」
「ああ、それでなんですか」
「それでここに」
「そうです」
聡美は二人にこう話した。そのうえでだ。
あらためてだ。二人に目の前のそれを見ながら説明した。
「あれは竜です」
「蛇じゃないんですか」
「手足も翼もない竜もいます」
そうだとだ。聡美は上城に話した。
「それがあの竜です」
「あれっ、竜って」
「竜といっても色々です」
聡美が話すのはこのことだった。
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