久遠の神話
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第六話 上城の初戦その二
そのそばにしろだ。つゆの色は薄い。そうしたものを食べながらだ。
彼等はだ。こんなことも話した。
「そういえばきし麺ってどうなんだ?」
「名古屋のあれか?」
「あの平べったい麺な」
「この食堂にもあるけれどな」
とにかくだ。メニューは充実している食堂の様だ。
「あれ美味いんか?」
「どうだろうな。俺食ったことないしな」
「愛知から来てる先生とか食ってるけれどな」
「あと寮の東海組な」
この学園には寮もある。全国から人が集まる為だ。そうしたものも設けられているのだ。
「あの連中が食ってるよな、いつも」
「連中が言うには美味いらしいあ」
「かなりな」
「それと味噌煮込みうどんな」
名古屋の定番料理の一つだ。
「あれも食ってるよな」
「あれ味強くないか?」
「濃いだろうな、やっぱり」
名古屋の味噌は赤味噌だ。だからだ。
味が濃いとだ。こう話すのだった。
そしてだ。さらにだった。こんなことも話される。
「ドラゴンズか」
「名古屋だからな」
「阪神最近ドラゴンズに負けまくってるしな」
「ここ数年な」
ここ一番でノーヒットノーランを喰らったこともある。
「結構怨みあるよな」
「まあそれなりにな」
「星野の現役時代も相当やられたしな」
「だったよな」
阪神ファンは時空を超える。彼等の中では生まれていない時代でもだ。そのことは見てきたようにだ。現実味を帯びて話されるのだ。
「江夏がな。打たれてな」
「それであの巨人に最終戦で負けてな」
「で、優勝逃してな」
「ああなったしな」
実に忌まわしい話だ。昭和四十八年のことだ。
このことを思い出しながらだ。彼等は話すのだった。尚彼等はその頃一人も生まれていない。それどころかバースの現役の頃にもだ。
だがそれでもだ。彼等は見てきたものとして話すのだった。
「権藤も凄かったしなあ」
「その前の杉下もな」
「阪神も相当やられたしな」
「中日にも負けまくったよ」
「けれどな」
それでもだというのだ。中日に対してはだ。
「あのチームにはな」
「これといって怨みないよな」
「ああ、巨人は憎たらしいけれどな」
「中日にはな」
「特にないよな」
何故か阪神ファンはだ。巨人は憎んでもだ。他のチームはこれといって憎まないのだ。他のチームには非常に寛容なのである。
それでだ。その名古屋の食べものについても言うのだった。
「じゃあ一回食べてみるか?」
「もうここできし麺注文するか?」
「それで食うか」
「そうするか」
そうした話をしてだった。実際にだ。
彼等はそのきし麺、ついでに味噌煮込みうどんを頼んだ。券を買ってそのうえで頼んだ。そうして食べてみるとだ。その味は。
「美味いな」
「そうだな」
「これ美味いぞ」
「かなりな」
食べてみてわかることだった。きし麺、そして味噌煮込みうどんの味が。
「いい味だよ」
「名古屋じゃいつもこんなの食ってるのかよ」
「大阪の薄口醤油のうどんと同じだけ美味いよな」
「ああ、負けてないぜ」
「いい味だよ」
こう話してだ。彼等は食べながら話す。そしてだ。
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