戦国異伝
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第七十七話 播磨入りその七
「既に播磨の国人達の殆どがこちらについたことは三好も知っております」
「そうじゃな。相手も馬鹿ではないわ」
「それで摂津と播磨の境にも兵を回しているでしょう」
「しかしここで東の国人の兵が姫路に行けばか」
「摂津の三好は油断しますな」
「それで播磨との境の兵を山城から攻められる兄上の軍勢に向ける」
信行にもこうした戦略はわかった。信長と共にいて学んだのだ。
それでだ。羽柴の言うことを把握し理解して語るのだった。
「しかしそこで姫路から一気に進みか」
「そうして油断した三好を攻めるのです」
「後ろからじゃな」
「さすれば如何でしょうか」
「よいな」
そのやり方にだ。頷く信行だった。
だがここでだ。彼はまた言った。今度言ったことはというと。
「ただしじゃ。急に集めた雑多な兵じゃからな」
「そこが問題だというのですな」
「織田に入ってすぐじゃ」
それでは何時どうなるかわからないというのだ。雑多な軍勢ではだ。
具体的に言えば逃げたり裏切ることも考えられる、信行が懸念しているのはこのことだった。
そしてだ。このことを実際に羽柴に問うたのである。今度問うたのはこのことだった。
「それでは何をするかわかったものではない」
「ですな。人の心は動くものです」
「わしの言葉に従うか。兄上ならともかく」
ここでは自信のないものを見せる信行だった。
「下手をすれば謀反を起こすやも知れぬ」
「ですな。だからです」
「このことについても考えておるのか」
「人は利を求めるものでござる」
「利か。ではあれか」
「左様です。確かに織田家に組み入れていく必要はありますが」
「それは今すぐにできるものではない」
これは政の話だった。ならばすぐに言える信行だった。
「一朝一夕にはとてもな」
「それは長い時間をかけて行うものです」
「しかし今すぐに。とりあえずはじゃな」
「膠として利を使いましょう」
「褒美をか」
「はい、それを話してです」
褒美を弾む、具体的にはそういうことだった。
「そのうえであの者達を織田家につかせましょう」
「そしてそのうえで三好に攻め入るか」
「播磨から」
「考えるものじゃな」
ここまで聞いてだ。信行は。
まるで暗がりの中で灯りを見た様な顔になりだ。そのうえで言うのだった。
「兵を集める場所といい兵を率いることといい」
「まあふと思いついただけで」
「兄上が用いられる筈じゃ」
羽柴にそれだけのものがあるというのだ。
「それだけのものがあるわ」
「いえいえ、それがしはその様な」
「正直わしだけではどうにもならん」
信行は兵を率いることも戦も不得手だ。自分でそれはよくわかっている。
それでだ。今もこう言うのだった。
「しかしそれでもじゃ。御主達がいればじゃ」
「播磨に入られてもですか」
「やっていけるな。では播磨から攻め入ろうぞ」
「はい、それでは」
「しかも播磨が手に入る」
このこともだ。信行は頭に入れている。
そのうえでだ。このことについても述べるのだった。
「播磨一国、大きいのう」
「ですな。それは確かに」
「まさか播磨まで手に入るとは思いませんでした」
羽柴だけでなく秀長もだ。このことは言う。一行は森の中を進んでいるが獣は出ない。全て飛騨者達、周りの彼等がよくしているようだ。
そしてそのことについてもだ。信行は言うのだった。
今度は深い言葉になっている。そのうえで言うことは。
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