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久遠の神話

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第四話 中田の告白その十三


 あらためてだ。息子に言うのである。
「温かいうちにね」
「食べてだね」
「ええ。ただしね」
「ただし?」
「今日は御飯は少ないわよ」
 それはだというのだ。
「悪いけれどね」
「ああ、スパゲティだから」
「スパゲティに御飯はね」
「白い御飯とだよね」
「ちょっと。合わないから」
 リゾットならともかくだというのだ。
「だから御飯は少なめにしたのよ」
「成程ね」
「それでだけれどね」
 さらにだった。母はここでまた我が子に話す。
「飲むかしら」
「ああ、ワイン」
「全く。他は何も悪いところはないのに」
「だってさ。皆さ」
「飲んでるっていうのね」
「この町じゃそうじゃない」
 彼等のいるだ。その八条町はだった。
「だから僕もね」
「わかっているけれどね」
「それでもなんだ」
「納得はできないわ」
 こう我が子に言うのだった。
「お母さん大阪生まれだから」
「大阪じゃ未成年は飲まないよね」
「おおっぴらにはね」
 八条町ならともかくだった。そこは。
「飲まないわよ」
「そうだったね。確か」
「そうよ。けれどまあ」
「ああ、今はいいよ」
 母がそのワインを出そうと席を立とうとしたところでだ。上城は母に言った。
「御風呂に入ってそれでね」
「勉強するからなのね」
「うん、だからね」
 酒は今はいいというのである。
「それはいいよ」
「わかったわ。それじゃあね」
「悪いけれどね」
「お母さんが飲むわ」
 こう来た母だった。自分がだというのだ。
「そうさせてもらうわ」
「ああ、お母さんが飲むんだ」
「そうよ。甲州ワインね」
 日本のだ。そのワインを飲むというのだ。
「それよ」
「赤?白?それともロゼ?」
「三つ共あるわ」
 何とだ。ワインは一種類ではなかった。
「お母さんは赤飲むから」
「じゃあ僕は白で」
「お父さんはロゼね」
「それでいこうね」
 上城は微笑んで母に話した。
「何か。ワインも好きだけれど」
「それとビールもよね」
「うん、好き」
 実際にそうだった。彼はビールもいけるのだ。
 だがビールについてはだ。母はこう言ったのだった。
「けれどビールはあまり身体によくないから」
「痛風だよね」
「そう、それ」
 そのだ。痛風によくないというのだ。
「だから気をつけてね」
「痛風って確か」
「お爺ちゃんもなったことあるから」
 上城から見て祖父であり母から見て父である。その人がなったというのだ。
「それで凄く苦しんだからね」
「お爺ちゃんビール好きだったからね」
「それもね。ドイツ式だって言って」
「ドイツ式?」
「生卵をビールの中に入れて飲んでたのよ。休日の朝はいつも」
「それってかなり危ないよね」
「だから痛風になったのよ」
 まさにだ。痛風になる王道だがだ。ドイツでは実際にこうした朝食で済ませる人もいる。ビールは飲むパンだからこれでいいのだ。 
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