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戦国異伝

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第七十五話 都に入りその八


 伊賀の六角の次はだ。この家だった。
「さて、今回一番兵を多く向けるのは三好じゃ」
「あの家ですか」
「あの家に兵を向けますか」
「そうじゃ。向ける」
 こう言うのだった。
「三万じゃ」
「三万の兵で摂津、それに河内と和泉をですか」
 森が信長に問う。
「三万の兵で攻めますか」
「ここはわしが自ら攻める」
 三好にはだ。信長自らがだというのだ。
「与三に勝三郎、五郎八に喜太郎じゃな」
 森に池田、金森に前野だった。まずは四人の名を挙げたのだった。
「その主だった面々でまずは摂津を攻め三好に反発する国人を取り込みじゃ」
「そのうえで摂津を押さえ」
「それからですか」
「播磨の動きが気になるところじゃな」
 信長がこう言うとだ。すぐにだった。
 侍頭が一人だ。信長の前に来てだ。こう報告したのだった。
「申し上げます、播磨の小寺殿、別所殿、赤松殿、それと若狭の武田殿、丹後の一色殿に大和の筒井殿と興福寺がです」
「随分多いのう」
 信長はまずはその家の数から述べた。話に出て来たその家々のだ。
 そしてそのうえでだ。こうその侍頭に言ったのである。
「してその家全てがじゃな」
「はい、我が織田家に従うとのことです」
「そうなるか」
「六角、三好を破り都を手中に収めた故でございますな」
 竹中がここで信長に話す。
「それ故にです」
「それだけ上洛は大きいか」
「はい、何はともあれこれで」
「播磨を気にすることはなくなったのう」
 この国のことから話したのである。
「あの三つの家がこちらにつけばじゃ」
「播磨の他の国人達も全て織田家に従いましょう」
 すかさず大津が信長に述べてきた。
「して丹後に若狭もです」
「それぞれ一色、武田がついたからのう」
「あの二国の国人達もまた」
「そしてそれは丹波にも及ぶ」
 ひいてはだ。その国についてもだった。
「波多野は孤立するのう」
「ではその孤立した波多野を討つ」
「そうするだけですか」
「あちらにもかなりの兵を割くつもりじゃった」
 敵は波多野だけとは思わなかったからだ。それでそう考えていたのだ。
「しかしそうせずによいとなるとじゃ」
「丹波には武田殿、一色殿と共に攻め込みましょう」
 すぐに丹羽が信長に述べた。
「丹波の国人達もこちらに来る者が出るでしょうし」
「その通りじゃ。丹波の波多野を陥とせば若狭も丹後もじゃ」
 既に己のつくと述べてきた両家がいる国々がだというのだ。
「手に入る、これだけよいことはないのう」
「確かに。それでは」
「波多野だけを攻めれば宜しいですな」
「丹波に回す兵は一万程度、多くて二万じゃな」
 それだけだというのだ。
「それでよい」
「そして摂津ですが」
 またこの国の話になった。話を出してきたのは今度は福富だった。
 彼は物静かな様子でだ。彼等の話をしたのである。
「播磨からの兵と共同して」
「あの者達も来させて攻めるぞ」
 実際にそうするとだ。信長は確かな声で応えた。
「兵は一万五千位になるかのう」
「では合わせて四万五千」
「その兵で摂津や河内を攻められますか」
「播磨にはそろそろ毛利が迫っておる」
 信長は今度はその彼の話をした。
「急いでじゃ。摂津も河内も和泉も手に入れるぞ」
「堺もですか」
 今度言ったのは矢部だった。
「あの町も手に入れられますか」
「そう考えておる」
 実際にそうだと述べる信長だった。 
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