戦国異伝
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第七十五話 都に入りその七
「そして大和には松永もいます」
「丹波には波多野じゃな」
「播磨の小寺や別所、赤松各氏の動向もわかりません」
「そうじゃな。戦はまだこれからじゃ」
信長もこのことはよくわかっていた。そしてだ。
彼はまずはだ。この相手について言った。
「まずは六角じゃ」
「あの家ですか」
「まずはですか」
「うむ、まずは上洛を優先させ伊賀に逃げるに任せたがのう」
無論それで終わらせるつもりはなかった。信長とてだ。
そして今だ。こう言ったのである。
「ここで討っておこう」
「はい、まずは六角ですな」
「あの家をまずは討ちますか」
「近江の南を制したとはいえまた奴等は来る」
それでだというのだ。
「そうなれば都への道も脅かされるわ」
「確かに。伊賀は昔から六角の国でございました」
その伊賀の国から来た滝川がだ。信長の言葉に頷きながら述べた。
「あの国にはまだ七千の兵がおります」
「うむ、決して侮れぬな」
「これからのことを考えると六角は必ず討ち伊賀も手中に収めねばなりませぬ」
「だからじゃ。まずは六角じゃ」
その家を攻めるとだ。信長は言い切った。
そしてそのうえでだ。滝川にだ。
柴田と佐久間、織田家の武の二枚看板も見てだ。彼等にも言ったのだった。
「御主達が行け、牛助もじゃ」
「それがし達が赴きですか」
「六角を討てと申されますか」
「そうじゃ。他には又左と内蔵助もじゃ」
前田と佐々、織田家の若い武辺者達もだった。
その彼等にもだ。信長は声をかけたのだった。
「御主達もじゃ」
「畏まりました。それでは」
「我々もまた」
「鎮吉もじゃ」
今度は川尻だった。とにかく織田家の武辺者を集めてだった。その彼等に告げたのである。
「伊賀の六角の兵は七千、そしてその七千にじゃ」
「幾らで向かえと」
「どれだけの数で」
「近江の南の兵、それにじゃ」
それに加えてだというのだ。
「ここで加えた山城の兵も入れて七千じゃ」
「互角の兵で討てというのですか」
「そうじゃ。できるか」
柴田に対して言ったのだった。
「互角の兵で六角を降し近江を手に入れられるか」
「お任せ下さい」
特にあれこれ繕うことなくだ。柴田は頭を下げて信長に応えた。
そしてだ。彼は信長にその低く太い言葉で述べたのである。
「必ずや」
「後は飛騨者もつける」
忍の者達もだというのだ。
「だからじゃ。思う存分暴れてくるのじゃ」
「わしも行って宜しいでしょうか」
「わしもです」
慶次と可児は自分から伊賀に行くことを名乗り出た。
「どうやら伊賀での戦は面白いことになりそうですから」
「それ故に。宜しいでしょうか」
「丁度今言うところじゃった」
彼等にだ。参加しろと言うつもりだったのだ。しかしだ。
二人は信長が言うより前に行ってだ。そしてなのだった。
「それがしは楽しき場所に行きたい故」
「六角の者達の首に次々と笹をくれてやります」
「では思う存分暴れるのじゃ」
信長も彼等のその傾奇に顔を向けてだ。そしてだ。
そのうえで彼等も伊賀攻めに向かわせることにした。そしてなのだった。
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