戦国異伝
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第七十三話 近江掌握その二
「確かに権六殿はあっさりしておるのう」
「わしはしつこいのは嫌いじゃ」
柴田はこのことも述べる。
そしてだ。彼はまた言うのだった。
「ではじゃ。そろそろじゃな」
「攻めますか」
「そうされますか」
「うむ、攻める」
柴田は自身の周りの者達に告げてだ。そのうえでだ。
裏門のだ。櫓の前に来てだった。
そしてだ。鉄砲を構えさせてだ。
「撃て!」
その大声、雷の様な声で指示を出した。それに応えてだ。
鉄砲が一斉に火を噴きだ。櫓を撃つ。それは一度ではなかった。
二度、三度と行われる。それで櫓を攻めたのだ。それを受けてだ。
六角の兵達は浮き足立つ。そのうえでその櫓に兵が集る。それを見てだ。
竹中はだ。信長に言ったのである。
「では今から」
「城壁じゃな」
「攻めましょう」
「うむ、それではな」
こうしてだった。信長は柴田の櫓への攻撃を見据えながらだ。
そのうえでだ。飛騨者達に顔を向けてだ。
そのうえで命じたのである。
「よいな」
「では」
「今より」
飛騨者達は裏門にいる六角の者達が櫓に集っているうちにだ。その隙を衝きだった。
一気に城壁に迫りだ。その城壁を登ったのだ。
その指揮は蜂須賀があたる。その蜂須賀は自ら先頭に立ちだ。城壁を一気に登った。
そして城壁の向こう側、城の中に入ったのである。
「ふう、きつい城壁じゃな」
「そうですか、わし等には全然」
「何ともありませんが」
「いや、全く」
「何もありませぬが」
彼に続いてだ。飛騨者達がだ。何とか城壁を登りきった蜂須賀に続いてだ。
軽々と城の中に来る。その彼等を見てだ。蜂須賀は唖然とした顔で言うのだった。
「何と、この城壁をか」
「はい、何ともありません」
「この程度ならです」
「それがし達にとっては」
「これだけの城壁は忍の者、並の者でも辛い」
蜂須賀はその忍の者だ。その手勢の者達を率いてきたからこそわかることだった。
「正直わしと手下共だけでは無理じゃったな」
「だからこそ半兵衛殿は我等を用いられたのですか」
「そうされたのですな」
「そうじゃな。流石は天下随一の軍師じゃ」
蜂須賀は飛騨者達の顔を見て納得する顔で述べた。
「さて、それではじゃ」
「今よりですな」
「城門に向かい」
「開けるぞ」
こう言ってだった。蜂須賀はだ。
飛騨者達を率いて裏門に向かう。しかしその周囲にだ。
六角の兵達が来る。その彼等を見てだ。信長は竹中に言った。
「さて、並の忍者ではじゃ」
「はい、城壁を登るだけで疲れきって動けなくなりました」
「しかしそれがじゃな」
「飛騨者達ならです」
そのだ。飛騨者達ならばだというのだ。
「充分に戦えます」
「そうじゃな。あの者達ならば」
信長も頷きだ。蜂須賀と飛騨者達の戦を見守るのだった。
蜂須賀も飛騨者達も完全に囲まれた。しかしだ。
まず風がだ。威勢のいい声で蜂須賀に問うたのである。
「小六さん、いいかな」
「暴れることじゃな」
「うん、いいよね」
「今わし等は前後を挟まれておる」
刀を抜き弓を構えた六角の足軽達がだ。城の通路にいる彼等を挟んできているのだ。
その彼等を見てだ。蜂須賀は風に言った。
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