戦国異伝

「そして権六殿ですが」
「うむ、城攻めの時はじゃな」
「はい、お願いできるでしょうか」
「うむ、では何をすればよいのじゃ」
「忍の者を上手に扱って頂きたいのですが」
「忍とな」
「はい、忍をです」
　まさにだ。その忍の者達をだというｊのだ。
「そのうえで攻めて頂きたいのですが」
「わかった。それではじゃ」
　竹中の申し出を受けてだ。柴田は笑みで快諾した。そうしてだった。
　彼はだ。竹中に対してこんなことを言うのだった。
「中々面白そうじゃな。忍の者を率いるというのも」
「興味がおありですか」
「わしは攻めることは好きじゃ。しかしじゃ」
「これまで忍の者を使われたことはありませんでしたか」
「うむ、なかった」
　実際にそうだったというのだ。
「実はそうだったのじゃ」
「左様でしたか」
「織田家で忍を使うのは久助に小六じゃ」
　その二人だった。織田家で忍を使うとなるとだ。
　だが柴田は今だ。彼自身もだ。それを受けるというのだ。その柴田の言葉にだ。
　竹中は思わず息を飲みだ。こう言ったのである。
「はじめてのことを。この場面であえて引き受けられるとは」
「驚いたか、そのことに」
「怖くはないのですか、権六殿は」
「無論怖い」
　すぐに答えての言葉だった。
「しかしそれでもじゃ」
「引き受けて頂けますか」
「わしでなければ駄目なのじゃな」
「権六殿が一番です」
　この策においてはだ。彼が最適だというのだ。
「だからこそです」
「ではじゃ。引き受けよう」
「有り難うございます。それでは」
「それが権六じゃな」
　この重要な場面でだ。はじめてのことをあえて引き受ける、竹中の考えと信頼をあえて受ける柴田のその心意気を見てだ。信長は笑顔で言ったのである。
「ここで引き受けるのがな」
「それがしは戦に勝つ為にです」
「その為にか」
「はい、ですから」
「そう言えるところじゃ」
　柴田らしいとだ。笑って話す信長だった。
　そしてだ。そのうえでまた言う彼だった。
「ではその時はじゃ」
「はい、観音寺城を見事陥としてみせます」
「頼んだぞ。ではな」
「はい、それでは」
　こうした話をしてだった。信長達は観音寺城を囲み続けていた。そしてだ。
　若田山城でだ。佐久間達がだ。
　城を取り囲んだうえでだ。四方からだ。
　鉄砲を撃ちだ。そのうえでだった。
　足軽達が城に迫る。城の兵達が彼等を撃とうとする。しかしだ。
　鉄砲の音に怯みそしてその銃弾に阻まれてだ。それはできなかった。弓矢を撃てないのだ。そしてその間にだ。
　織田の鉄砲隊はさらに撃つ。三十秒程の間隔で撃っていく。そして織田の兵達はさらに近寄りだ。城門に迫っていた。
　それを指揮する佐久間はだ。満足した顔で傍らにいる中川に話した。
「ふむ。鉄砲は城攻めにもよいな」
「左様ですな。音だけでも兵が怯みます」
「しかも弾があたる」
　それも大きかった。
「いや、こうした攻め方もあるのじゃな」
「三人衆のお歴々も頑張っておりまする」
　見れば城に迫る足軽達を率いているのは安藤、稲葉、氏家の三人だった。彼等は果敢にだ。軍配を手にその兵達を率いている。その彼等も見てだ。
　中川は確かな顔でだ。佐久間に言うのである。
「このまま進めてです」
「一気に攻め落とすとしようぞ」
「さて、我等はこれでいいとして」
「箕作じゃな」
「五郎左殿はやってくれますな」
「あ奴は派手ではない」
　佐久間も言う。丹羽のそうしたところはだ。
　そしてそれと共にだ。彼を評してこう言うのだった。
「殿が言っておられたのじゃがな」
「殿がですか」
「五郎左は米じゃ」
　それだというのだ。