戦国異伝
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第七十話 都への出陣その二
家康もだ。満足している顔で鳥居に話すのだった。
当然彼等も黄色だ。黄色い具足に陣羽織といった格好だ。その姿でだ。
彼はだ。こう鳥居に言った。
「さて、出陣すればじゃ」
「その時にですな」
「すぐに美濃の織田殿と合流する」
そうするというのだ。
「そしてそのうえでじゃ」
「上洛ですな」
「浅井殿も来られる」
近江のだ。彼等もだというのだ。
「三つの家で攻めることになる」
「兵は六万ですな」
「大きな話じゃ。しかしまずはじゃな」
「はい、近江の六角殿ですな」
「戦はせぬに越したことはない」
それはだとだ。家康も言う。
「しかしそれでもじゃ。六角殿がどうしてもというのならば」
「戦は避けられませんな」
「そうなるな。やはり」
「はい、そうかと」
鳥居もだ。主に応えて述べる。
そうしてだ。彼はこう主である家康に話すのだった。
「その際ですが」
「うむ、徳川家としてな」
「武門の戦をしましょう」
彼が家康に言うのはこのことだった。
「例え何があろうとも」
「うむ、卑怯未練は駄目じゃ」
「その通りです。若し殿に卑怯未練があれば」
その時はだというのだ。鳥居の声はかなり強い。
「我等が命を張ってお止めします」
「わしがそうしたものを持たぬ様にじゃな」
「左様です。それは何としても」
「有り難いことじゃ」
鳥居の厳しい言葉にだ。家康はかえって笑みになりだ。
そのうえでだ。彼に言うのだった。
「わしには真の意味での家臣が揃っておるな」
「我等三河者は代々松平、いえ徳川家にお仕えしておりまする」
そのこと自体がだ。鳥居にしろ他の三河の者にしろ同じだった。
「その為には命を賭けます」
「戦に。政に」
「そして殿をお諫めすることにも」
「諫める、それじゃな」
そのこと自体にだ。家康は見るものを見ていた。
そうしてだった。彼は言うのだった。
「御主も他の者もわしをどんどん諫めてくれる。有り難いことじゃ」
「かなり口煩いと思いますが」
「じゃがわしを思ってのことじゃな」
「それは誰もが同じです」
「ならよい。これからもそうしてくれ」
己をだ。諫めよというのだ。
「そのうえでわしはよりよき者になれる」
「左様です。そう思うからこそです」
主君である家康を諫める、そうするというのだ。
「三河者は何処までも殿をお諫めし殿に従います」
「果報者よの、わしは」
そしてだった。こうも言う家康だった。その顔は綻んでいる。
「ではこの度はじゃ」
「はい、織田殿と共にですな」
「上洛といこうぞ」
こう話してだ。そのうえでだった。
彼等も上洛の用意に入る。こうして徳川、それに浅井も出陣の用意に入っていた。
無論織田家も同じでだ。信長は岐阜城においてだ。平手にこう話していた。
「今回は。よいな」
「はい、留守役はそれがしですな」
「どうも爺ばかりになっておるかのう」
信長はここでこうも思ったのだった。
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