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久遠の神話

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第三十一話 広瀬の秘密その十一


 不意に中田が出て来た。その彼を見てだ。広瀬は剣呑な目になって問い返した。
「今まで何処にいた」
「おいおい、いきなり喧嘩腰だな」
「俺と君は敵同士だ」
 それならばだとだ。広瀬は中田を見据えながら言う。
「当然のことだ」
「それはそうだけれどな」
「ならだ。当然のことだ」
 こう言うのだった。
「そしてだ。君は今まで何処にいた」
「何処ってな。今まで部活に行ってたんdなよ」
「剣道部か」
「そうだよ。キャンバスライフをエンジョイしてたんだよ」
 明るく気さくな笑顔でだ。中田はこう広瀬に述べた。
「いい汗かいたぜ」
「そうか。しかしだ」
「しかし。何だよ」
「何故今俺の前に出て来た」
 相変わらず剣呑な態度でだ。広瀬は中田に問い返してきた。
「それは何故だ」
「本当に喧嘩腰なら」
「闘うつもりか」
 相変わらずの態度だった。
「それならだ。俺はいいが」
「んっ?それならな」
 中田もだ。広瀬のそうした態度を前にしてだ。次第にだ。 
 その身体に炎を出してきていた。そのうえで言うのだった。
「やるか?」
「君がそうしたいのならな。だが、だ」
「だがって今度は何だよ」
「君は見たのか」
「おい、本当に今日はおかしいな」
「そして見たのか」
 広瀬は中田を睨んでいた。
「あれを」
「んっ、だから何をだよ」
「何をか」
「そうだ。見たのか」
「ひょっとしてあのことか?」
 広瀬があまりにも強く何度も問うのでだ。中田もだった。
 彼に応える形でだ。こう言った。
「農学部の牧場のことか」
「やはり見ていたか」
「あんた農学部の娘と一緒に赤い馬に乗っていたよな」
「そうだ。乗っていた」
「あんたの彼女かい?」
 広瀬とは対象的に何でもないといった感じでだ。中田は彼に問い返した。
「そうなのかい?」
「誰にも言うな」
 広瀬の声はいよいよだ。強いものになってきた。
「いいな、それはな」
「彼女がいるなんて普通だろ」
「だからか」
「気にすることか?そんなに」
 怪訝な顔になってだ。中田はその広瀬に返した。
「俺はそうは思わないけれどな」
「なら言わないか」
「人の恋路を言いふらす趣味もないからな」
 だからだ。余計にだというのだ。
「言わないさ。あんたも言って欲しくないんだな」
「剣士にはな。特にな」
「付け込まれるからか、そこを」
「どんな剣士がいるかわからない」
「まあな。中には恋人を人質に、とかって奴もいるかもな」  
 言いながらだ。中田は壬本のことを思い出していた。彼は剣士でなかった。だがそれでも彼の様な剣士がいる可能性は完全には否定できなかった。
 それでだ。こう言うのだった。
「まあ賢いやり方だな」
「君はそこに付け込まないか」
「戦うことは戦うけれどな」
 剣士としてだ。それはするというのだ。
「けれどそれでもな」
「付け込むことはしないか」
「俺も甘いのかもな」
 少し苦笑いになってだ。中田はこんなことも言った。
「ひょっとしてな」
「だからか」
「俺が戦うのも理由があってだよ。目的があるんだよ」
 それはだ。確かにだというのだ。あるというのだ。 
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