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戦国異伝

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第六十九話 岐阜での会見その二


「それはまた面妖なものを使うのう」
「面妖でございますか」
「戦とは弓や槍で使うものではないのか」
 こうだ。首を捻りつつ話すのである。
「そうではないのか」
「戦は変わるものです」
 鉄砲に対する理解の薄さにだ。細川にしても明智にしても内心呆れてもいた。しかしそれでもだ。彼等はそれも隠さざるを得なかった。
 それでだ。細川は仮面を被ってまた義昭に話した。
「元が使っていた投げるものも時には」
「知っておるぞ。派手な音を立てて爆発するというな」
「はい、それを使うこともあります」
「何と。あの蒙古のものまで使うとは」
 首を捻ってだ。また話す義昭だった。
「戦とは節操がないものじゃのう」
「そういうものです」
「それが戦です」
 義昭の戦に対する無知も出た。だがこれにもあえて言わない二人だった。
 そうしたやり取りを経てだ。義昭は岐阜城に着いた。その正門のところにだ。
 信長が主な家臣達を全て連れてだ。そのうえで青い礼装でそこにいた。それを見てだ。
 義昭はだ。既に下馬している信長を見て満足した顔で言うのだった。
「ほう、信長はわかっておるのう」
「そうですな。織田殿はです」
「よくわかっておられます」
 その通りだとだ。答える明智と細川だった。しかしだ。
 二人が言うのはあらゆる深い意味でのことだった。だがそのことについては言わずにだ。
 義昭にだ。こう勧めたのである。
「では織田殿のところに」
「行かれて下さい」
「うむ。それではな」
 義昭もそれに応えてだ。悠々としてだ。
 前に出てだ。拝謁する信長に馬上から問うのだった。
「織田上総介信長であるな」
「はい」
 その通りだとだ。信長も答える。
「それがしが織田上総介信長でございます」
「足利義昭じゃ」
 義昭はその信長に胸を反り返させて応える。
「知っておろう」
「はい、先の公方様の弟君ですね」
「そうじゃ。兄上の仇を討ちたい」
 こう言ってだ。さらに言う義昭だった。蛇足に。
「そして余が次の将軍となる。その為にじゃ」
「わかっております。それではです」
 信長は顔をあげそのうえでだ。
 恭しくだ。こう義昭に言うのだった。
「では。どうぞ城の中へ」
「これが岐阜城か」
 その巨大な山城を見上げてだ。いささか驚いた顔で言う義昭だった。
「大きいのう。これはまた」
「稲葉山をそのまま城にしました故」
「御主の義父である斉藤道三がここまでしたのじゃな」
「はい、その通りです」
「それだけはあるか。実に大きな城じゃ」
 また言う義昭だった。
「伊達に二百四十万石の大家になっただけではないな」
「有り難きお言葉。では城の中に入られますか」
「うむ、そうする」
 満足した笑顔でだ。義昭は頷きだ。
 そのうえでだ。信長と彼の家臣達に案内され岐阜城に入った。そうして城の中を見ながら登りだ。彼はこう言ったのである。
「いや、この城は」
「何か」
「険しいのう」
 その城を登りながらの言葉だ。義昭はもう汗までかいている。
 そうして肩で息をしながらだ。彼は言うのである。
「また随分と」
「守りを重視しております故」
「そうじゃな。それでじゃな」
「そうです。ではこのまま頂上に」
「まだ先があるのか」
 義昭は汗をかきつつ述べる。
「それはまた大変じゃな」
「どう思われますか、この岐阜城について」
 信長がこう義昭に問うとだ。彼に同行している明智はだ。
 その眉をぴくりと動かした。そのうえで信長を注視した。その彼を見てだ。 
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