魔法少女リリカルなのは 異形を率いる男
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2.プロローグ 加害者
―――死んだのか?
すぐさま頭をよぎったのはこれだった。
彼は今自分の体を眺めるという奇妙な体験をしている。
彼の目の前には鉄骨につぶされ周囲を血だまりに変えている男の死体が転がっていた。
これが彼の体である。
彼は先ほど人を殺し今はその帰りであった。
その帰りに鉄骨が落ちて死亡。
何ともあっけない最期であったと自分でも思う。
人を殺している自分が言えたことではないが自分の最期くらいは寿命で死ぬことが、彼の人生の目標の様なものであった。
だがこれが人を殺し続けたために起こった事なのならば潔く受け入れられるとも思っていた。
そんなとき、
「こんばんは」
不意に声が聞こえた。
聞いたことのない声。
妙に明るい印象を与えてくる声だった。
だが自分の周囲には人おろか音を発するものなどは何一つ――
彼の前には人がいた。
いつからいたのか分からない。周囲を見渡し、前を見直した時には確かにいなかった。
だか5メートルも間の空いていない先には確かに人がいる。
気づいた時にはすでにそこにいた。
だが彼は動揺しない。
まるで、その程度のことは見飽きたとでも言いたそうなほど彼は落ち着いた口調で言葉を発した。
「誰ですか?」
「僕は君を転生させるために来た神の使い。まあ、天使みたいな存在だと思って」
自らを天使と名乗る男は現実味のない言葉を発した。
『転生』という空想上の考えと彼は考えていた事を口にしたのだ。
だが、認めなければいけない。
自分の死体を見た上に、今の体は形はあるが重みを殆ど感じない。
「何故、私を転生させようなどと考えたのですか?私は人を殺しているんですよ?本来ならば地獄に堕ちるのが普通ではないんですか?」
彼は純粋に疑問を口にした。
転生できるのならしたいが、そこはもっとまともな人間にするべきではないのか。
と、彼は思っていた。
殺人は人の人生を強制的に終わらせる。
無意味に何かを殺すものには何かしら罰を与えるべきだろう。
と、いうものが彼の考えだ。
だが返答は予想だにしなかったものだった。
「殺人を犯したからです。所詮、世界なんてものは神の作り出した暇つぶしの様なものなのです。
だからあんなことをしたので、貴方と、あなたが殺した人が神に気に入られ、貴方達を転生させることになったわけです」
男の言った理由から察するに神様はずいぶんと自由気ままな性格らしい。
そんな存在に私たちは作られたのかと思うと少しばかりショックを受けた。
だが、そんな性格のおかげで転生する事ができるのだから御の字という物だろう。
「そう言えば、どんな世界に転生させてもらえるんですか?
人を殺したとしても問題のない世界が理想的なんですけど」
要求が何とも自分ならどんな相手でも殺せる自信の漂う要求だった。
「アニメの世界のリリカルなのはという世界です。
ご存知ですか?」
男の質問に彼は素早く答える。
「アニメはすべて視ましたよ」
見た目は案外ダンディーなアニメなんぞは見ないような外見からは予想できなはい答えを言いつつ彼は続ける。
「あと、殺し甲斐があるかは知りませんけど貴方に殺された方は簡単には死なない能力を貰ったそうです。
それではこれに転生後の情報を入れてください。
やり方は触ればわかります」
男はそう言い水晶玉を渡してきた。
彼はもちろんそれを受け取った。
その瞬間、それの使い方を理解する。
疑問は持たなかった。
神がいるのだからと納得していた。
彼はそれに情報を入れていく。
好きだった漫画のキャラクターの能力。
必要になるであろう道具、出生場所、時期。
それらを入力し終わると彼はそれを渡した。
「入力ミスはありませんね?それならばここに入ってください」
男の言葉に続き隣に扉が出現する。
「ありがとうございました」
彼はそう告げ扉の中に入っていった。
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