久遠の神話
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第三十話 二対一その三
「そういうことです」
「ではどうして使う。光ならわかるが」
「木は。根があります」
「根か」
「根は地面を張ります」
そしてそれによってだというのだ。
「貴方の居場所を俺に教えてくれます」
「蜘蛛の糸の様にだな」
「そうですね。蜘蛛の糸ですね」
広瀬もだ。それだと応えた。
「俺が今使う木の術はそれです」
「そしてその蜘蛛の糸で私の居場所を確めてか」
「倒します」
まさにだ。そうするというのだ。
「覚悟はいいですね」
「いい考えではある」
広瀬に言われてもだ。権藤の調子は変わらない。
そしてその余裕の態度でだ。こう言うのだった。
「だが。それはだ」
「それはというと」
「蜘蛛の糸は触れなければそれでいい」
今言うのはこのことだった。
「それで済むことだ」
「既におわかりですか」
「よくな。それではだ」
「生憎ですがそれは俺もわかっています」
闇の中でだ。広瀬は不敵な笑みで返したのだった。
権藤にその笑みは見えない。だがそれでもだった。
j彼は不敵な笑みを闇の中で見せてだ。そして言うのだった。
「宙にあがっても」
「私の居場所がわかるのか」
「木は根だけではありませんから」
それ故にだというのだ。
「ですから。貴方が例え宙にあがってもです」
「ふむ。では今度は葉か」
まさにすぐにだ。察してみせた権藤だった。
「それを使うか」
「おわかりでしたか」
「私は自分の鋭さには自信がある」
頭の鋭さではなく勘の鋭さもだ。彼は言うのだった。
「それ故にだ。わかったのだ」
「成程。それでは」
「根と葉で私の居場所を知りか」
「仕掛けさせてもらいます」
「そして木の力だけでなく」
それに加えてだった。もう一つだった。
広瀬は闇の中に瞬く蛍達を見ていた。その数は増える一方だった。
その蛍達を見つつだ。彼は闇の中で言うのである。
「光もあるか」
「広瀬君だけではなくです」
高代の声もだった。再び闇の中で出て来たのである。
「私もいるということをお忘れなく」
「その通りだな。しかしだ」
「私達二人でもですか」
「どうということはない」
自信に満ちた声はここでも健在だった。
「君達に私を倒すだけの力はない」
「ではこの状況でもですか」
「戦われますか」
「倒させてもらう」
闇がまた深くなった。それこそ全てを覆い隠し消し去らんばかりに。
その闇の中でだ。蛍達、そして闇の中にある筈の葉や根達もだ。
消え去っていく。そのことを見て感じ取りながらだ。二人は言った。
「成程。これはかなり」
「深い闇ですね」
「言っておくがこれで終わりではない」
権藤の持っている力、それはだというのだ。
「私の闇は全てを覆う闇だからな」
「光も木もですか」
「そうしたもの全てを」
「そうだ。全てを覆い消し去るのだ」
二人にこう言ってだ。そのうえでだったのだ。
「君達自身もだ」
「確かに。どうやら」
「俺達にも闇が迫っていますね」
「どうする。君達を消す」
そうするというのだ。
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