久遠の神話
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第三十話 二対一その二
刃はそれだけでなくだ。彼は広瀬にもそれを放ったのだった。
「相手が二人ならばだ」
「俺もですか」
「そうだ。闇を放つ」
そのうえでだ。倒すというのだ。
「そうさせてもらおう」
「成程。しかしです」
広瀬は闇の背鰭を見ながらだ。己の剣を構えた。そうしてだ。
その剣を前に突き出し。そこからだ。
木そのものを放った。木が剣から生き物の腕の如く延びそれが背鰭を打ったのだった。
闇と木がぶつかり相殺された。後には何も残らなかった。
その一部始終を見届けてだ。広瀬は言った。
「俺も剣士ですから」
「闇を恐れはしないか」
「どうした力でもです」
恐れない、そうだというのだ。
「俺は戦い、防ぎますよ」
「そうするか」
「私もです」
今度はだ。高代だった。彼はというと。
権藤と同じ様に剣を両手に持ち上から下にスイングした。すると。
光の柱が彼の前に起きそれが闇の背鰭を止めたのである。今回も二つの力が相殺された。後には何も残らなかった。闇と光もどちらもだ。
その二つの激突も見てだ。権藤は冷静沈着だった。
そしてその冷静さのままだ。彼は言うのだった。
「見事ではあるな」
「見事ですか」
「そうだ。見事だ」
余裕、それそのものの言葉だった。
「君達もそれなりの力を持っているな」
「しかしだというのですね」
「そうだ。確かに君達は強い」
それは認めた。だが、だというのだ。
「私はより強い。そのことを言っておこう」
「ではまだですか」
「戦いますか、俺達と」
「戦うからには勝つ」
こうも言う権藤だった。
「そうさせてもらう」
「そうですね。私達もです」
「戦うのなら」
二人もだ。その権藤に返す。
「勝ちます」
「貴方に対して」
「確かに闇は光に払われる」
権藤はこの事実も述べた。
だがそれでもだ。彼はだ。
己のその剣を縦横に振りだ。その闇を出していきだ。
世界をさらに暗い、漆黒のものにさせていく。その漆黒こそは。
「この闇は飲み込む闇だ」
「飲み込む、ですか」
「飲み込み消し去る闇だ」
そうだというのだ。広瀬に対しての言葉だった。
「それこそ何もかもをだ」
「では俺達もですか」
「無論だ。君達もだ」
「この闇の中に飲み込まれますか」
「さて、これに対してはどうする」
闇は権藤が剣を振る、既に二人の目では闇の中に消えてしまっているが振る音だけは聴こえる。そうしつつ闇を濃くさせてだ。彼は二人に問うたのだ。
「君達は私の闇に対することができるか」
「そうですね」
まずはだ。広瀬が応えた。
「俺としては。貴方の場所を知りです」
「知ることができるか」
「方法がない訳ではないです」
木の力でだ。それが可能だというのだ。
「ちゃんとありますから」
「あるのか」
「力は使いようです」
微笑んでの言葉だった。
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