久遠の神話
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第三十話 二対一その一
久遠の神話
第三十話 二対一
広瀬、高代は体育館の中で権藤と対峙している。その中でだ。
権藤は漆黒の刀を手にしてだ。こう二人に告げた。
「何時でもいいのだがな。私としてはな」
「戦うことはですか」
「今からでもですね」
「そうだ。来るといい」
悠然とだ。無表情だがこう言ってみせてきたのだ。
「相手をしてやろう。そしてだ」
「俺達を倒す」
「そう仰いますか」
「如何にも」
まさにだ。その通りだというのだ。
「そうさせてもらおう」
「でははじめましょう」
高代は今は多くを言わなかった。これだけだった。
そしてそのうえでだ。彼は剣を構えた。それに続いてだ。
広瀬も構えた。そのうえでだ。
無意識のうちにだった。広瀬は右に、高代は左にそれぞれ動いた。そのうえでだ。
権藤の左右を固めた。それを見てだ。権藤はこう言った。
「二人で来るならばだ」
「そうです。こうして囲む」
「それが戦術のセオリーですね」
「確かにな。戦術としてはいい」
権藤は動かない。その場所から二人を見て言うのだった。
「常道だ。ではこうしよう」
「むっ!?」
二人は同時に声をあげた。権藤はその彼等の前でだ。
右手に持つその刀を下から上に一閃させた。するとだ。
体育館の中が夜になった。その暗闇を見てだ。高代が言った。
「貴方の力ですね」
「私の力は闇」
その力だとだ。権藤も答える。
「闇は全てを覆い隠す」
「そして隠れますか」
「隠れるだけではない」
それでだ。終わらないというのだ。
「闇を放つこともできる」
「見えないその中で」
「それに対して君達はどう戦う」
気配もだ。闇の中に消しての言葉だった。
「私のこの闇に対して」
「闇ならばです」
闇と聞いてだ。高代は余裕の笑みを見せた。そのうえでだ。
彼は己の持つ剣を上から下に一閃させた。するとだ。
剣から無数の蛍が生じた。その光達がだ。
高代と広瀬の周りだけでなく体育館全体に散った。その光で闇を照らしだしたのだ。
そこには権藤もいた。彼の周りにも蛍達が待っている。それを見てだった。
権藤は目だけで光を追いながら。こう言った。
「光を使ったか」
「そうです」
高代は己の周りにもその蛍達を置いていた。そのうえでだ。
照らし出されたその権藤に対してだ。静かに述べたのである。
「闇があろうともです」
「光があればな」
「その闇を払うことができます」
「闇と光は相反するもの」
権藤も言う。
「それ故に使いか」
「貴方の闇は確かに深いです」
「だがそれでもか」
「私の光ならば払うことができます」
こうだ。高代は権藤にさらに言う。
「この通り」
「そうか。しかしだ」
「しかしとは」
「私の闇の力は目晦ましだけではない」
このことも言ったのだった。
「こうしたこともできる」
こう言ってだ。それからだった。
権藤はその剣を下から上に振り上げて一閃させた。そのうえでだ。
闇の覇道を刃として出した。刃は床を鮫の背鰭の様に進んだ。そうして高代に向かってきた。
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