久遠の神話
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第二十九話 闇を払うものその十二
権藤は一旦目を閉じた。そしてそこから二人に返した。
「ではだ」
「戦いですね」
「これから」
「一人で来るか。それとも二人か」
権藤の二人への次の問いはこれだった。
「どちらにするか」
「どうしますか」
権藤のその言葉を受けてだ。高代はというと。
広瀬に顔を向けてだ。こう彼に問うたのだった。
「ここは」
「そうですね。二人でもと言っていますが」
広瀬は権藤をちらりと見てから高代のその問いに答える。
「この人はどうやら」
「私達より遥かにですね」
「はい、強いです」
そこまでの強さであることをだ。二人は既に見切っていた。
「オーラが違います」
「その出されている力が」
「では、ですね」
「戦うしかありませんね」
こう話してだ。そのうえでだった。
二人は互いを見合って頷き合い。それからだった。
権藤に身体ごと向きなおった。そのうえで彼に告げた。
「二人で戦わせてもらいます」
「それでいいですね」
「構わない」
二人相手でもだとだ。権藤は平然として答えた。
「私は言ったことはそのまま守る」
「政治家志望でもですか」
「政治家だからこそだ」
広瀬のややシニカルな言葉にもだ。権藤は落ち着いて返した。
「そうするのだ」
「政治家は嘘を吐くものですがね」
「国益がかかればな」
嘘は肯定するが限定していた。
「その場合はそうするがだ」
「今はですか」
「政治家は言葉で生きるものだ。言葉は命だ」
「ではその命を」
「誇りあるものと考えるならばだ」
そこからだった。彼が言うのは。
「ここでは言わない」
「そうですか」
「私は私個人のことでは嘘を言うことはない」
それはだ。決してだというのだ。
「何があってもな」
「誇りはあるのですね」
「あの原発を爆発させた男と一緒にしないことだ」
この男についてはだ。権藤はこの上ない軽蔑を向けて述べた。
「あれは下衆だ。ただのな」
「それは同意ですね」
「恥を恥を思わない輩だ」
それがだ。その輩だというのだ。
「人間の屑と呼ぶ」
「まあ。確かにあの人はですね」
「そうした人間でしたね」
高代と広瀬もそのことについては同意だった。
「あえて言わせて頂きますが政治家としても無能であり」
「人間としても最低でしたね」
「あるのは保身と権力欲だけだ」
尚且つテロ支援国家と癒着している。漫画に出て来る様な下劣極まる輩である。
「そうした輩とは違う」
「理想と政策があるというのですね」
「その通りだ。そしてだ」
その理想と現実の実現の為にであった。
「その為に今君達を倒そう」
「力をそんなに使っていないうちでよかったですよ」
広瀬はその権藤を不敵な笑みで見据えて述べた。
「今なら充分戦えます」
「そうですね。それは私もです」
高代もやや余裕のある感じの笑みで言う。
「今なら戦えます」
「じゃあ。今回は」
「はい、共同戦線になりますね」
「こうしたことははじめてです」
広瀬はその高代の顔を見てこうも言った。
「二人で一人を相手にするのは」
「はじめてですか。そうしたことは」
「実はこれでも喧嘩等は一対一でする主義でして」
「正々堂々とですね」
「いじめもしたことがありません」
そうした意味でだ。広瀬は高潔ではあった。
「ですから。常に一対一か若しくは」
「向こうがですね」
「前に二対一での戦いを行いました」
工藤、高橋との戦いである。
「ですがその時はお互いに無傷で終わりました」
「先程の戦いの様に」
「そうですか。それで今回がですか」
「はじめてになります」
二人で一人と戦うのはだというのだ。しかしだった。
その意を決した顔でだ。広瀬はまた高代に言った。
「奇麗なやり方ではないでしょうがやるからにはです」
「勝つ、そうですね」
「はい、そうしましょう」
こう話してだ。そのうえでだった。
彼等は戦いに入るのだった。今三人の戦いがはじまろうとしていた。
第二十九話 完
2012・4・7
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