久遠の神話
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第二十九話 闇を払うものその八
「そこにしますか」
「あそこは確かバスケットボール部の場所ですが」
「今は遠征に出ていまして」
それでだというのだ。
「空いています」
「つまり誰も入っては来ない」
「そうです。今限定ですけれどね」
「わかりました。ではそこにしましょう」
こう話してだ。二人は今は空いているその体育館に向かった。だがその入り口はだ。
鍵がかけられていた。使う者がいないのなら当然のことだった。しかしだ。
広瀬はここで己の剣を出しその柄を入り口に触れさせた。そうして開けたのだった。
「これでいいです」
「力の使い方によってですか」
「こうしたこともできるとわかりました」
「成程。鍵を刺激してですね」
「はい、開けました」
「貴方の力だからこそできるのでしょうか」
「俺の力なら」
かなり古風な扉だ。頑丈ではあるがだ。
「それならばできます」
「そうですね。貴方の力はですね」
「木を使って刺激しました」
扉のところをだ。そうしたというのだ。
「それによって開けました」
「面白い使い方ではあります」
「貴方の光でもできる筈ですが」
「物理的なものにすればですね」
「はい、可能ではないでしょうか」
「確かに。私の光は物理的なものにもなります」
ただ光るだけではないのだ。その力は。
「やろうと思えばできますね」
「そうですね。しかしそれは使えないですね」
「私が貴方に倒されるからですね」
「勝つのは俺です」
広瀬はその扉を開けながら高代に顔を向けていた。そうしてそのうえでだ。彼に対してこう言ったのである。その絶対の自信と共に。
「ですから」
「仰いますね。ですが」
「貴方もまた、ですか」
「そうです。言わせてもらいます」
礼儀正しい微笑みでだ。高代は言ったのだった。
「勝つのは私です」
「仰いますね。しかしです」
「しかしですか」
「剣士らしいですね」
その高代を見てだ。広瀬は楽しげに笑って返したのだ。
「実に」
「そうですか。自信があるということが」
「自信は根拠のない場合もありますが」
「私達は違いますね」
「怪物達と戦いです」
そしてそのうえでだというのだ。
「彼等を倒し身につけているものですから」
「そうですね。私にしても君にしてもです」
「多くの怪物と戦い」
そしてそのうえで、だった。
「それを糧としてきました」
「それ故にですね」
「そうです。自信があります」
そういうことだった。経験に基く自信、それが剣士の自信だった。広瀬にしても高代にしてもだ。それだけの自信の礎は持っているということなのだ。
そしてその自信からだ。広瀬はまた高代に言った。
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