久遠の神話
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第二十九話 闇を払うものその四
「これだけの炎を出したのだからな」
「そしてツーヘッダーで闘ってきてるしな」
「御互いかなりの力を使っている」
「そうなるな」
「ならばだ。君もまた、だ」
力が限界に達しようとしている、そうだというのだ。
「ではどうする。君は」
「あんたがやるってんなら。受けるぜ」
「私次第か」
「どうするんだい?多分お互い一撃を出す位しか残ってないぜ」
お互いに力を使った一撃を出すことで限界に達しようとしていた。権藤は中田の倍の力を持っているがだ。それだけのものを使ったのだ。
だからだ。今の二人は互角だった。力の残りではだ。
それでだ。中田はこう言ったのだった。
「差し違えるかい?なら受けるぜ」
「相打ちか。それはだ」
「俺は相打ちにはならないぜ。絶対に生き残るぜ」
「その自信があるか」
「肉を切らせてもな」
例えそうなってもだというのだ。
「骨は断ってやるぜ」
「そして生き残るか」
「それも俺の流儀なんだよ。どうするんだい?」
「そうだな」
一瞬考えて。それからだった。権藤は中田に答えた。
「今日はこれで終わりにしよう」
「ああ、やらないんだな」
「ここでお互い最後の力を出してぶつかるとする」
「どっちかが死ぬな」
「生き残るのは私だ」
絶対の自信はあった。権藤にしても。
「しかしだ。君も全力を出してくるな」
「戦いには手を抜かない主義でね」
「そうだな。そして君は強い」
中田のそれも認めた言葉だった。
「実力は私には及ばないがだ」
「まあそうだな。あんたは確かに俺より強いさ」
「しかしそれは剣の力だけのことだ」
それに加えてだというのだ。
「君は頭もいい。頭脳も加わるとだ」
「力と鋏は使いようってね」
「そうだ。私にかなりの傷を負わせることも可能だ」
自信は揺らがないがだ。こうも言う権藤だった。
「そしてその君に勝ったとしてもだ」
「傷を負って力を使い果たしてな」
「そこを怪物や他の剣士に狙われては危険だ」
「だから今はこれで終わりってんだな」
「そうだ。慎重を期す」
それ故にだ。ここでは戦いを止めるというのだ。
「そうさせてもらう」
「そうか。わかったぜ」
「君はどうする」
「俺もな。そっちが降りるのならな」
それならばだとだ。中田は権藤に笑って返した。
「俺もいいさ」
「そうか。それではだ」
「また会おうな。けれどな」
「しかし。何だ」
「あんたも降りないのか」
権藤のその確かなものが見られる顔を見ながらだ。中田は言ったのだ。
「戦いから。そうなんだな」
「君もそうだな」
「俺としては誰とも戦わないで済んだらそれでいいんだけれどな」
「戦いは好きではないか」
「正直好きじゃないさ」
中田は本音を述べた。これは本当のことだ。彼は剣道は好きだが戦い、とりわけ命のやり取りをするものには興味がなかった。そうである理由もここで言ったのである。
「剣道は活人剣だからな」
「活人剣か」
「そうさ。だからな」
「戦いは好まないか」
「その通りさ。けれどあんたは違うか」
「戦いはあくまで手段の一つだ」
ここでもだ。権藤は政治家の考えに基き述べた。
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