久遠の神話
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第二十九話 闇を払うものその三
「まあとにかく。闘いってのはな」
「幾らもやり方があるか」
「そういうことさ。それでな」
「それで。何だ」
「闇ってのは払えるよな」
中田の声が笑っていた。そしてその声でだった。
彼は彼のいるその場所から二振りの刃を振るい。そうしてだった。
そこから炎を放った。それも一つや二つではない。
無数の炎を放ち闇の中に燃え上がらせてだ。そのうえでだ。
闇の中を照らし出した。赤々と松明の様に燃える無数の火の玉によって闇は照らされていた。中田はその中に立っていた。
そして権藤も。彼等の姿は炎の灯りに照らし出されていた。
その燃える炎に赤く照らされながらだ。中田は不敵な笑みで目の前にいる権藤に言った。
「まあこういうことだよ」
「闇ならばか」
「ああ、闇を払えばいいよな」
「確かにな。闇といえどな」
「絶対なものじゃないからな」
その不敵な笑みでの言葉だった。
「というかこの世に絶対のものなんてないんだな」
「そうだな。私の闇といえどもだ」
「これであんたの目晦ましっていうか目隠しか」
中田は言いながら己の言葉を訂正した。
「それはもう効かないぜ」
「そうだな。しかしだ」
「しかし。今度は何だよ」
「私の先程の攻撃だが」
先程のだ。闇の連続攻撃のことだ。
「あれはどうしてかわした」
「ああ、あれか」
「そうだ。それはどうしてかわした」
「簡単だよ。あんたはさっきそれを自分で言っただろ」
「跳んだか」
「そうさ。あんたが前後左右から来ることは読めていたからな」
「しかし上からか」
ここでだ。権藤もわかったのだった。
「上からはだったな」
「あんた、完全に倒せるって思っただろ」
「君は見えていなかった」
闇の中、権藤の力の中にいた。それならばだった。
「それでは確実に倒せると思ったからな」
「その通りだな。だからか」
「君は上に跳んだか」
「そこからは来ないって読んだからな」
「その通りだ。立体上での攻めを怠ったか」
「それで俺は今こうして生き残っている」
今度は得意げな顔になって言う中田だった。
「無事にな。それでだけれどな」
「まだ闘うかどうか、か」
「あんた、相当な力使ってきたよな」
権藤を見据えてだ。中田は彼に問うた。
「これだけの濃い闇をこれだけ広く出し続けてるんだ」
「それも読んでいるか」
「力の持ち主だからな。俺も」
「剣士を理解するのは剣士か」
「間違ってもあの馬鹿じゃないさ」
破滅した、壬本ではないというのだ。
「あいつは何もわからない奴だったからな」
「そのことについては同意する。そしてだ」
「そして?何なんだよ」
「君の言う通りだ。私は既にかなりの力を使っている」
「やっぱりそうか」
「そしてだ。それはだ」
権藤からもだ。中田を見据えて言ってきた。
「君もだな」
「へえ、わかってるんだな」
「今君自身が言った。剣士を理解できるのは剣士だ」
「俺の言葉をそのまま返してくるなんてな」
「しかしその通りだな」
「まあそうだな。否定はしないさ」
「だから私にもわかる。君は既に相当な力を使っている」
このことをだ。権藤はそのまま中田に返したのである。
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