久遠の神話
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第二十八話 使い捨ての駒その十三
「間違いなくね」
「そうよね。この力が」
「闇の力」
それだとだ。上城は述べる。
「それに他ならないよ」
「今は私達には何もしないそうだけれど」
「中田さんは違うからね」
権藤と闘っているだ。彼はだというのだ。
「どうなるのかな、一体」
「これだけ何も見えない中で闘うとなると」
「辛いよ。目は大事だから」
闘いの中でまさにそうだとだ。上城は述べた。
「それだけに。この闘いはね」
「中田さんにとっては」
「辛いものになってきたね」
こう言うのだった。闇の中でだ。そしてだ。
中田自身もだ。その闇の中でだ。構えを取ったまま言うのだった。
「ああ、これはな」
「君にとって不利な筈だ」
「その通りさ」
そのことを認めての言葉だった。
「俺は目も大事にするからな」
「目、闘いにおいて目はだ」
「一番大事なものの一つだからな」
「しかし君はその目を今は使えない」
「それはあんたも同じじゃないのかい?」
中田は闇の中で不敵な笑みを見せた。しかしだ。
権藤はだ。余裕の笑みでだ。闇の中で言ってみせたのである。
「これだけ真っ暗だとあんたもな。何も見えないだろ」
「案ずることはない」
しかしだ。権藤の声は余裕に満ちた様子でだ。こう中田に言ってきたのだ。
「私は闇を司る。それならばだ」
「この中でも見えるっていうんだな」
「その通りだ。私は闇の中、己の力の中にいてもだ」
それでもだというのだ。その何者をも見えないその中でもだ。
「見える。全てだ」
「そんなに見えるのかよ」
「君の目の動きまでな」
まさにだ。そこまでだというのだ。
「見えている。君は今正面を見据えてるな」
「見えないけれどな」
その通りだった。まさにだ。
「そうしてるぜ」
「そうだな。そして構えを取っている」
二刀流のそれもだとだ。権藤はまた言ってみせたのだ。
「よく見えているぞ」
「本当に何もかもが見えているんだな」
「そういうことだ。それではだ」
「ああ、それじゃあな」
「君を倒す」
権藤は落ち着いているが確かな声で中田に告げた。その口調には興奮は見られない。だがそれでもだ。そこには確信があった。まさにそれがだ。
そこからだ。中田に告げてだった。
彼は闇の中で動きはじめた。そしてそのうえでだ。中田を倒そうとするのだった。
第二十八話 完
2012・3・29
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