スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第九十五話 クワサンの鎧
第九十五話 クワサンの鎧
「そうか、ガイゾックが」
マーグはヘルモーズのブリッジにおいてロンド=ベルとガイゾックの戦いの結末を聞いていた。
「やはり。負けたか」
「予想されていたのですか」
「うん」
報告するロゼにそう応える。
「彼等では無理だと思っていたよ」
「わかりました」
「だが。それで終わりというわけにはいかない」
マーグの目が光を強くさせた。
「今彼等はオービットベースと言う地球の衛星軌道上にある基地に向かっているね」
「はい」
「ではそこに攻撃を仕掛けよう」
「わかりました。ではシャピロ提督に命じて」
「いや」
だがマーグはここで言った。
「彼の軍は今はネオ=ジオンへの牽制に使っている。今それを動かすのはよくない」
「ではどうされるのですか?」
「私が行く」
「えっ!?」
ロゼはマーグの言葉に思わず声をあげた。
「司令、今何と」
「私がオービットに攻撃を仕掛けると言ったんだが。駄目かな」
「危険過ぎます」
ロゼはその整った眉を顰めさせて言った。
「司令自ら行かれるのは。あまりにも」
「いや、私が行かなければ駄目だろう」
だがマーグも引かなかった。
「司令だからといって。後方にいるだけというのはよくはない」
彼は今までも前線に立っているのだがそれは言わなかった。
「それにオービットベースは今度我々の障害になる。何とかしておきたい」
「ですが」
「そんなに心配なのか、ロゼは」
「・・・・・・はい」
その目を悲しげにさせて言った。
「私は・・・・・・マーグ司令の副官でありこの軍の副司令官でありますから」
心配をするのは当然だと言うのである。だがその顔は俯いていた。
「司令に何かあれば・・・・・・」
「それじゃあロゼも一緒に来るかい?」
「えっ!?」
その言葉に思わず顔をあげる。
「君も超能力は使える。一緒に来てくれればそれだけでかなりの戦力になる」
「司令・・・・・・」
「そしてポセイダル軍にも来てもらおう。ロンド=ベルを中と外から攻める為にね」
「わかりました。それでは」
マーグとロゼはすぐに作戦に移った。ヘルモーズはその巨体を何処かに消して戦場に向かうのであった。
ガイゾックとの戦いを終えオービットベースに向かうロンド=ベル。だがそこに異変が起こった。
「艦長、大変です!」
命がユリカに報告する。
「オービットベースの前にヘルモーズが現われました!」
「ええっ!?」
「その周りにはポセイダル軍が展開しています。オービットベース内部にも敵が侵入しました!」
「って大変じゃない!何とかしないと!」
「俺達が行く!」
大空魔竜にいる凱がモニターに現われた。
「凱!」
「オービットベースに侵入されたとなれば一大事だ!俺達が行かないと!」
「そういうことです!ここは私達にお任せ下さい!」
「頑張っちゃうもんね~~~~~!」
ボルフォッグとマイクもそれに続く。ユリカはそれを見てすぐに判断を下した。
「わかりました。ではお願いします」
「よし!」
GGGはすぐにオービットベースに入る。そして侵入していたマーグ達に向かう。
「おう、来てくれたか!」
火麻が彼等を出迎える。
「かなり手強い奴等だ!援護を頼むぜ!」
「一体どんな奴等なんだ!?」
ゴルディマーグが尋ねる。
「超能力者だ」
「超能力者ですか」
「それはまた厄介だな」
風龍と雷龍がそれを聞いて言う。
「一人は男で一人は女だ。てんで歯が立たない」
「それなら俺が相手します」
ここで一人の男が現われた。
「タケル」
「タケルさん、どうしてここに」
凱と闇竜が彼に顔を向けた。
「兄さんの気配を感じたから」
「兄さん!?まさか」
「うん、多分こっちに来ている超能力者の一人は兄さんだと思う」
「そうか、厄介なことだな」
「いえ、兄さんの相手は俺がします」
タケルは火麻にそう答えた。
「だから凱さん達はもう一人と他の兵士をお願いします」
「それでいいんだな」
「はい」
タケルは迷うことなく頷いた。
「そのつもりでここに来ましたから」
「よし、それではそちらはタケルさんにお任せします」
「頑張ってくれよ」
氷竜と炎竜がそう声援を送る。
「タケル、生きて会おうぜ」
「はい」
最後に凱と言葉を交わす。そして彼等はそれぞれの相手へ向かうのであった。
ロゼは部下の兵士達と共にオービットの中を進んでいた。
その進みは迅速であった。まるで内部構造を知っているかのようだった。
「こっちね」
そう、彼女は透視を使っていた。それで以って道を知っていたのだ。
だがその前に凱達が姿を現わした。そしてロゼと対峙する。
「待て、バルマーの超能力者!」
「御前は」
ロゼは凱を見据えて問うた。
「獅子王凱!サイボーグだ!」
「そうか、御前がGGGのサイボーグ」
「俺のことを知っているのか」
「敵のことを調べておくのは基本よ」
ロゼは表情を変えずにこう述べた。
「御前達のことは。全て知っているわ」
「それじゃあ話が早いぜ」
ゴルディマーグが前に出て来た。
「一気に叩き潰してやるぜ!覚悟しな!」
「ロボット。AIを持ったロボットね」
ロゼはゴルディマーグが拳を振り上げるのを冷静に見ながら述べた。
「ならばこれで・・・・・・!」
拳を後ろに跳んでかわす。そして跳んだままその両腕をクロスさせていた。
そのクロスさせた両腕から衝撃波を出す。それでゴルディマーグを撃った。
「うおっ!」
ゴルディマーグは後ろに弾き飛ばされた。だがそれでも彼はまだ戦うことが可能であった。
「ゴルディマーグ!」
「ヘッ、心配無用だぜ」
ゴルディマーグは何とか立ち上がった。
「かなり効いたのは事実だがな」
「やはりこの衝撃波では倒せないようね」
ロゼはそのゴルディマーグを見て表情を変えることなく言った。
「それならこちらにも方法があるわ」
「皆は他の奴等を頼む」
凱はボルフォッグやゴルディマーグ達に対してそう指示を出した。
「あの女は俺が相手をする」
「いいんですか、隊長」
そんな彼に光竜が問う。
「物凄く強いみたいですけど」
「そんなことは承知のうえだ」
だがそれに怖気付く凱ではなかった。
「だがやってやる!行くぞ!」
「おう!」
「了解しました、隊長!」
ボルフォッグ達はそれに応えてバルマーの兵士達に向かう。そして凱はロゼと対峙した。
「行くぞ、女!」
「一つ言っておくことがあるわ、獅子王凱」
「何だ!?」
「私の名前は女ではないわ」
ロゼは静かな声で言った。
「私の名はロゼ。ゼ=バルマリィ帝国銀河辺境方面軍副司令官」
「ロゼというのか」
「そうよ。覚えておくことね」
「わかった。ではその名前、覚えておく。ハイパァァァッモォォォドッ!」
凱はハイパーモードに変わった。
「これで・・・・・・貴様を倒す!」
「確かに力は凄いようね」
「そうだ!貴様等を倒す力だ!」
「そう。けれど、これはかわせるかしら」
「ムッ!?」
ロゼは攻撃を仕掛けてきた。今度は腕から別のものを放ってきた。
「これは・・・・・・」
それは光り輝く蝶達であった。凱の周りを優雅に舞う。
「獅子王凱」
ロゼは凱を見据えて言う。
「これで御前を倒してみせるわ」
「この蝶達でか!」
「ええ、ほら御覧なさい」
ロゼは言った。
「その蝶達が御前を倒すわ」
「どういうことだ・・・・・・ヌオッ!?」
蝶が凱の肩に触れた。その時だった。
その肩に鋭い衝撃が走った。凱の顔に苦悶が歪む。
「この蝶・・・・・・まさか」
「そう、衝撃波よ」
ロゼは言った。
「私は衝撃波を蝶の形に変えて放つことができる。これがそれだ」
「クッ、何という攻撃なんだ」
「獅子王凱、これはかわせまい」
「舐めるなあっ!」
だが凱は怖気付いてはいなかった。
「この程度で、俺を倒せるものかっ!」
「ならばこれをかわしてみせよ!」
ロゼはさらに蝶を放ってきた。それはヒラヒラと凱の周りを漂う。
「御前が勇者王というのなら。かわせる筈だ」
「ならば見せてやる!」
凱はその身体に力を込めた。
「はあああああああああっ!」
そして激しく拳を繰り出す。それで蝶を次々に叩き壊していく。
「これでどうだっ!」
「そうか・・・・・・ならば」
ロゼはそれを見てすぐに次の攻撃に移った。
「これでどうだ!」
今度は直線状の衝撃波を放つ。しかしそれは凱の跳躍でかわされた。
「遅いっ!」
そしてナイフでロゼを斬ろうとする。だが彼女はそこで姿を消した。
「ムッ!?」
「動きはいいが私の術をまだ知らないか」
「どういうことだ!」
「それは・・・・・・」
着地した後ろから声がした。
「こういうことだ」
後ろにロゼが現われた。そして攻撃を仕掛けようとする。
「覚悟しろ、勇者王!」
「させるかあっ!」
だが凱の動きの方が速かった。彼はすぐに振り向き攻撃に移っていた。
「トオッ!」
拳を突き出す。それはロゼの腹を撃った。
「グッ!」
その美しい口から血を吐き出す。かなりのダメージであることがわかる。
「今度は効いた筈だな」
「流石だ・・・・・・だが」
それでもロゼは立っていた。
「私を倒すには・・・・・・まだ不充分だ」
「まだやるというのか!」
「そうだ。ここで退くつもりはない」
「クッ、敵ながら何て執念だ」
「凱隊長!」
だがここでボルフォッグが声をかけてきた。
「どうした!?」
「バルマーの兵士は全て倒しました。これで残っているのは」
「そうか、この女だけか」
「助太刀しましょうか」
「おうよ、一気にやってやろうぜ!」
「いや、それはいい」
だが凱は隊員達のその申し出を断った。
「宜しいのですか?」
「ああ。この決着は俺自身の手で着ける。ロゼ!」
「ムッ!」
「覚悟しろ!貴様はここで俺が倒す!」
「ならば・・・・・・私もこの術の全てを見せよう」
ロゼもまた構えを取った。
「死ね、勇者王!」
「倒れろ、ロゼ!」
二人はまた撃ち合おうとする。だがここでロゼは何かを感じた。
「ムッ!?」
脳裏に何かを。そしてそこに焦眉の急を悟った。
「獅子王凱、この勝負は預けるわ」
「どういうことだ」
「それを言う必要はない。だが貴様との決着は必ず着ける」
「退くというのか」
「一時だけのこと。だが覚えておけ」
ロゼは凛とした声で言い放った。
「御前も地球も必ずバルマーの、マーグ様の軍門に下る。それを忘れるな」
そう言い残して凱の前から消えた。こうしてこの場での戦いは一先は終わった。
「行きましたね」
「ああ」
凱は闇竜の言葉に応えた。
「手強い相手だった」
「凱隊長をあそこまで苦戦させるとは」
「かなり手強い相手よね」
光竜も言った。
「そうだな。だが俺は敗れるわけにはいかない」
しかし凱の気迫は誰にも止められなかった。
「バルマー帝国も。必ず倒す、いいな」
「はあい」
「わかりました、隊長」
この場での戦いは終わった。だがもう一つの戦いは今も続いていた。
通路でタケルとマーグが激しい攻防を繰り広げていた。二人は空中を舞い、その衝撃波を互いに放っていた。
「兄さん、もう止めてくれ!」
タケルは戦いの中兄に叫んだ。
「こんなことをして・・・・・・どうなるっていうんだ!」
「戯言を。まだ言うか」
だがマーグはそれに取り合おうとはしない。
「知れたこと。この基地を破壊することだ」
「まだわからないのか、兄さんは!」
それでもタケルは叫ぶ。必死に兄に訴えかける。
「兄さんは操られているんだ、バルマーに!」
「私の国を侮辱するというのか」
「それが間違いだ!バルマー帝国は兄さんの力を利用しているだけなんだ!それがわからないのか!」
「私はバルマー十二支族ギシン家の者」
マーグはそんなタケルに対して言った。
「それでどうして利用されているというのだ。嘘をつくのは止めろ!」
「嘘なんかじゃない!」
だがタケルはそれでも言う。
「バルマー帝国、そして霊帝は自分のことしか考えていない!それがわからないのか!」
「偉大なるバルマーだけでなくその全てを統べられておられる陛下まで侮辱するとは」
しかしそれでもマーグはそれを聞き入れはしなかった。タケルの言葉そのものが耳にも心にも届いてはいなかったのだ。
「最早容赦はしない。覚悟しろ!」
「うわっ!」
衝撃波が襲った。それはタケルの足元に炸裂した。
そして大きく吹き飛ばされた。タケルは床に叩きつけられた。
「うう・・・・・・」
「覚悟はいいか、地球の戦士よ」
マーグは倒れ込むタケルを見下ろして言う。
「陛下を貶めた罪、その身で償ってもらう」
その腕に衝撃波を宿らせる。だがその時だった。
手裏剣が数枚飛んで来た。そしてマーグを襲う。
「ムッ!」
だがマーグはそれを瞬間移動でかわした。そして離れた場所に姿を現わす。
「何者だ!」
「私か」
強い男の声がした。
「私はシュバルツ=ブルーダー、ネオ=ドイツのガンダムファイターだ」
「シュバルツ=ブルーダー!?」
「そうだ、私のことだ!」
「ウッ!?」
今度は後ろから気配がした。マーグは咄嗟に身を消す。
それで拳をかわした。態勢を整えなおして再び問う。
「只の戦士ではないな」
「私はネオ=ドイツの忍者だ」
「忍者!?」
「そう、地球にはこの様な術もあるのだ」
ここでようやく覆面で顔を覆った軍服の男が姿を現わした。
「明神タケル、ここで死なせるわけにはいかん」
「シュバルツさん・・・・・・」
「さあ立つのだ、タケル」
「はい。けれどどうしてここに」
「そんなことはどうでもいい!」
だが彼はそれには答えなかった。
「それよりも今だ!この男は御前の命を奪おうとしているのだぞ!」
「し、しかし」
「甘いぞタケル!」
そしてまた叫んだ。
「敵と戦う時には躊躇してはならない!それに専念するのだ!」
「しかし俺は兄さんを・・・・・・」
「ならば心だ!」
さらに叫ぶ。
「その心に訴えよ!それが出来なければ死だ!」
「死・・・・・・」
「生か死か、それだけだ。それが嫌ならば戦場から去れ!」
「そうか・・・・・・わかった!」
その言葉にタケルも目覚めた。
「俺は命をかけて兄さんを救い出す!何としても!」
「そうだ、その意気だ!」
「ならば・・・・・・やってやる!」
マーグの超能力が増加した。
「兄さん、だからここは退くわけにはいかない!」
「ムッ!」
「俺は兄さんを助け出す!何があっても!」
「どういうことだ、あの男の力が強まってきている」
マーグはその様子に戦慄さえ感じていた。
「このままでは・・・・・・だが」
しかしマーグもバルマーの将だ。退くわけにはいかなかった。
「地球人に負けるわけにはいかない。私はバルマーの司令官なのだ!」
「敵ながら見事と言っておこう」
シュバルツはそんな彼に対して言った。
「しかしそれだけで戦いは勝てはしない。行くぞ!」
手裏剣を放ってきた。
「これはかわせるか!」
「その程度で!」
マーグはまたもや姿を消した。瞬間移動だ。
「私を撃つことは出来はしない!」
「そうか。ならばこれはどうだ!」
「ムッ!」
シュバルツはまた手裏剣を放ってきた。姿を現わしたマーグを襲う。
「なっ!?」
「これはかわせまい!御前の動きは呼んでいた!」
「クッ、しまった!」
これはかわせなかった。手裏剣が迫って来る。マーグは覚悟を決めるしかなかった。だがその時だった。
突如としてロゼが姿を現わした。そしてマーグの身体を抱き横に跳ぶ。
「ムッ!?」
「ああっ!」
だが遅かった。ロゼはその背に手裏剣を一つ浴びてしまった。思わず声を漏らした。
二人はそのまま床に倒れた。だがロゼのその背にはシュバルツの手裏剣が刺さっていた。
「ロゼ、どうしてここに」
「司令の危機を察しましたので」
ロゼは痛みに耐えながらもそれに答えた。
「けど」
「いえ、この程度の傷なら・・・・・・うっ」
痛みに顔を歪めてしまった。見ればかなり深く突き刺さっていた。
「大丈夫ですから・・・・・・御心配なく」
「いや、そういうわけにはいかない」
だがマーグにはわかっていた。今のロゼがとても戦える状態ではないことに。
「それに・・・・・・他の部下達は」
「残念ながら」
悲しそうに首を横に振った。
「そうなのか。残っているのは私達だけか」
「ここは私が引き受けます。司令はその間に」
「いや、それは駄目だ」
だが彼はそれを受け入れなかった。
「私だけが逃げるわけにはいかない。君を置いて逃げることは出来ない」
「司令・・・・・・」
「ここは退く。だが君も一緒だ」
「わかりました」
「地球の戦士達よ」
ロゼを庇いながら立つ。そしてタケルとシュバルツに対して言った。
「ここは君達の勝利だ。だが決着は必ず着ける」
「兄さん・・・・・・」
「その時にまた会おう。それでは」
ロゼを抱き寄せたまま姿を消した。こうしてオービットでの戦いは終わった。
「タケル!」
遠くから凱の声が聞こえてきた。
「無事か!」
「凱さん」
そして凱達が姿を現わした。
「よかったな、無事だったか」
「はい、シュバルツさんのおかげで」
「私は何もしていない」
だがシュバルツは礼は受け取らなかった。
「ただ。戦いに参加しただけだ。それだけのことだ」
「シュバルツさん・・・・・・」
「そして敵はまだいる。油断するな」
「はい」
「よし、マーグといったな!」
凱はマーグに顔を向けて問う。
「ここで倒す!覚悟しろ!」
「生憎そうも言ってはいられない」
しかし当のマーグはそれを受けようとはしなかった。
「何っ!?」
「悪いがここは退かせてもらう。また会おう」
「クッ、撤退するつもりか」
「申し訳ありません、司令」
ロゼは申し訳なさそうにマーグに対して言う。
「私の失態で。この様なことに」
「いや、ロゼに過失はないよ」
そう言ってロゼを慰める。
「では退こう。私に掴まっているんだ」
「はい・・・・・・」
二人は光に包まれて消えた。そしてオービットから気配が消えた。
「兄さん、また」
「御前とあの敵の司令官は兄弟だったな」
「はい」
またシュバルツの言葉に頷いた。
「この銀河でたった二人の・・・・・・血を分けた兄弟です」
「そうか、たった二人のか」
「兄さんは操られているんだ」
そしてタケルはこう言った。
「きっと救い出す、きっと」
「その心、忘れるな」
シュバルツはここでタケルにこう声をかけた。
「その心があれば必ず思いは適う。心は力だ」
「心は・・・・・・」
「そうだ、それが人を進ませるのだ。だから決して忘れるな」
「はい」
タケルは頷いた。そこへ火麻がやって来た。
「おう、ここにいたか」
「火麻参謀」
「ドイツの兄ちゃんもいるな。まあいい」
「何かあったんですか?」
「あったも何も外じゃ大変なことになってるんだ。すぐに御前達も出てくれ」
「そうか、ポセイダル軍も攻めて来ていたんだ」
「よし、すぐに出る。皆行くぞ」
「了解」
「私も行こう」
「シュバルツさんもですか?」
「そうだ。ポセイダル軍は容易な相手ではない」
彼はそう言って協力を願い出てきた。
「ならば及ばずながら私も戦わせてもらう。それでいいな」
「はい」
「あんたがいれば百人力だ!じゃあ行くぞ!」
「了解!ここを渡すわけにはいきませんからね!」
タケルの声も元気になった。そして出撃に向かう。シュバルツはその後姿を見ていた。
「いいものだな、兄弟というものは」
それは兄弟というものを知っている言葉であった。彼はそこに何かを見ているようであった。
外ではポセイダル軍を中心とするバルマー軍とロンド=ベルが激しい戦いに入っていた。数で押すバルマー軍に対してロンド=ベルは質と戦術で対抗していた。
「オービットの前に陣を敷け!」
ブライトがパイロット達に指示を出す。
「それで敵の攻撃を抑えるんだ!波状攻撃に注意しろ!」
「フフフ、流石だと褒めておこう」
マクトミンはそんなロンド=ベルの戦いを見て楽しそうに笑っていた。
「地球の戦士達。私の相手となるのに実に素晴らしい」
「確かにそうだけど作戦を忘れるんじゃないよ」
そんな彼にネイが言った。
「あたし達の作戦はあの基地の陥落だ。いいね」
「勿論わかっているよ、ネイ=モー=ハン」
「だったら頼むよ。あたしはアントン、ヘッケラーと一緒に突っ込む」
「うむ」
「あんたは後ろでフォローを頼むよ。いいね」
「わかった。では任せてもらおう」
ポセイダル軍は突撃とフォローに分かれて攻撃に入った。ネイのオージェはサイズを手に戦場を駆ける。
「さあ、あたしの前で死にたい奴は何処だい!」
「死にたくはないが相手になってやるさ!」
レッシィのヌーベルディザートがその前にやって来た。
「ネイ=モー=ハン、あんたもしつっこいね!」
「それもこれもギワザ様の為さ!」
ネイは高い声でレッシィにこう返す。
「あたしはギワザ様の為なら命だって捨てるさ!」
「フン、悪い男に惚れたね!」
「ほざくんじゃないよ、小娘」
だがネイはその言葉に気を動転させたりはしない。
「御前みたいなのにあたしとギワザ様のことがわかってたまるものか」
「その前にわかろうとも思わないね。ただ」
「ただ。何だい?聞いてあげるよ」
「裏切られて捨てられないようにするんだね」
「ご忠告痛み入るよ。それじゃあこれは御礼だよ!」
ネイはサイズを大きく振り被った。
「死にな!真っ二つさ!」
「生憎そうそう二つになりたくはないんでね!」
そのサイズをセイバーで受け止める。
「チイッ!」
「どうしたい!?腕が鈍ってるんじゃないのかい!」
「言ってくれるね、この程度は挨拶代わりさ!」
「じゃあ本気ってやつを見せてもらうよ!」
二人の女が激しい戦いに入っていた。そして左翼では別の動きがあった。
「どういうことだ、これは」
左翼を預かるリョクレイはクワサンを見て首を傾げさせていた。
「バイオリレーションの状態が不安定だというのか」
「何故御前は顔がないのだ」
クワサンは一人意味不明なことを呟いていた。
「どうして顔がないのだ」
「まずいかもな」
リョクレイはそんなクワサンを見ながら言う。
「このままでは」
「クワサン殿、心配されることはありません」
だがギャブレーはそんなクワサンには全く気付いていなかった。
「このギャブレット=ギャブレー、必ずやクワサン殿を守りましょう」
「おお、ギャブや」
クワサンはそのギャブレーに顔を向けて微笑んだ。
「頼りにしておるぞ」
「わかりました。是非お任せ下さい」
「うむ」
「まずいな」
能天気なギャブレーと違いリョクレイはやはり深刻な面持ちである。
「このままではクワサンは」
しかし今は戦場にいる。それ以上は考える余裕はなかった。
左翼にもロンド=ベルが迫っていた。その中にはダバもいた。
「オリビー、やはり」
彼はクワサンがそこにいるのを感じていた。
「ここで、何としても」
「ダバ、気持ちはわかるけど」
そんな彼にリリスが言う。
「焦っちゃ駄目だよ」
「わかってる。ここは」
「それに独りよがりになっちゃ駄目よ」
アムもやって来た。
「アム」
「あたし達もいるんだから。頼ってよね」
「そうそう、あたしだっているんだからね」
「アスカ」
見ればエヴァ達もいた。
「天才のあたしがバックアップに来てるんだから。大船に乗った気持ちでいてよね」
「済まない」
「まっ、後ろは任せてってことよ。安心してオリビーのところに行ってよね」
「そうそう、凱さんやタケルさん達も戻って来たし」
オービットからガオガイガーやゴッドマーズも出撃してきていた。
「ここで一気に決めちゃうのもいいからね」
「からかうなよ、アム」
「からかってなんかいないわよ」
アムはここで少し悲しそうな顔になった。
「あたしだってそう思いたいんだから」
「思いたいって」
「あたしもわかったの。クワサンのこと。だからそれ以上は言わないで」
「・・・・・・そうだったのか」
「ほら、さっさと行く。それにまた誰か出て来たから」
「誰か!?」
「ほら」
最後にシュバルツが戦場に現われた。
「まだ地球を諦められないかバルマーの者達!」
彼はオービットベースの頂上に腕組をして立ちバルマーの者達を見据えていた。ガンダムシュピーゲルに乗って。
「うわ、またすっごい登場」
「ちょっと待ってよ、あんたどっから湧いて出て来たのよ!」
普通に驚いているシンジとは違いアスカは激しい拒否反応を見せていた。
「それもそんな登場して!いい加減に常識を守りなさいよ!」
「常識なぞどうでもいい!」
「な・・・・・・!」
絶句したがそれで終わるアスカではなかった。
「何言ってるのよ!そもそもあんたのせいで最近ドイツのイメージが訳のわからないことになってるのよ!責任取りなさい!」
「そういえばドイツに忍者っていない筈だよな」
「私も聞いたことないわ」
アラドとゼオラがアスカの後ろで話をしている。
「とにかく何しに来たのよ!あんた宇宙で戦えるの!?」
「容易いこと」
「そもそも人間なのかな、あの人」
「ムッチャ疑問やな、それは」
シンジもトウジもこればかりは何も言えなかった。
「けれど。素敵な方よ」
レイはそんなシュバルツを見て呟いた。
「私達の為に来てくれているし」
「ねえ、前から思っていたんだけれど」
マリがブルーガーの中で神宮寺と麗に囁く。
「レイちゃんの趣味ってあんな感じの人なのかしら」
「そうかも知れないですね」
「まあそこは十人十色ってやつだな」
「そういうものなんだ」
「僕にも聞いて下さいよ」
「猿丸さんにそんな話しても」
「大先生は恋愛は専門じゃないからな」
「トホホ・・・・・・」
「では行くぞバルマーの戦士達!」
シュバルツはオービットの頂上から姿を消した。そして疾風になった。
「シュツルム=ウント=ドランクゥッ!」
竜巻になり攻撃を仕掛ける。そしてポセイダル軍のヘビーメタル達を薙ぎ倒していく。
「うわあ、相変わらずとんでもなく強いや」
「素敵・・・・・・」
呆然とするシンジに対してレイはまた違った反応を見せていた。
「とにかく今のうちよ」
「おっと、そうか」
アムの言葉にハッと気付く。
「こっから敵を崩しましょう」
「そうですね」
「凱さん達も来とるしな」
「ハアアアアアアアアアアッ!」
凱はポセイダル軍に対して突進する。そしてその腕に武器を持つ。
「ガトリングドライバァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ヘビーメタル達をまとめて倒す。そこに他の勇者達とゴッドマーズが突っ込む。バルマーの左翼はそれで大きく崩れた。
「よし、左翼だ!」
ブライトはそれを見てまた指示を出した。
「左翼から敵を叩け!そしてヘルモーズに迫れ!」
「クッ、ヘルモーズをやらせるわけには!」
リョクレイはそれを見てすぐに動いた。
「やらせるわけにはいかない!ここで防ぐ!」
「おっと、そうはいかないわよ!」
しかしその前にアムのエルガイムが現われた。
「人様の星にまで来て馬鹿やってるんじゃないわよ!覚悟なさい!」
「人のことが言えるのか!」
「あたしはその星の人と一緒に戦ってるのよ!あんた達みたいに侵略してるわけじゃないの!」
「減らず口を!」
「減らず口は女の特権よ!」
「そんな言葉知るものか!
「今あたしが考えた言葉よ!」
二人も戦いに入った。そしてダバはエルガイムマークⅡを部ブローラーに変形させて戦場を駆けていた。
「オリビー、何処だ、何処にいるんだ」
彼はただひたすらクワサンを探していた。前にいる敵はその素早い動きで一撃で倒していく。
「何処にいる、オリビー!」
「ダバ、レーダーに反応よ!」
「ムッ!?」
見れば一つ他のヘビーメタルのそれとは違う反応の機体があった。それはまさか、ダバは本能的に悟った。
「これってひょっとして」
「その可能性はある!そこだな!」
ダバはそのヘビーメタルの場所へ急行する。だがそこにもヘビーメタル達が立ち塞がる。
「どけっ!」
ダバはブローラーからエルガイムマークⅡになった。そしてそのヘビーメタル達を斬り伏せる。
そしてそのヘビーメタルのところにやって来た。そこには一機のカルバリーテンプルがいた。
「ダバ・・・・・・マイロード!?」
「間違いない、オリビーだ」
二人は互いを見てそれぞれこう言った。
「オリビー、まだ俺がわからないのだ」
「どうして、御前は私を苦しめるのだ?」
「俺は苦しめてなんかいない」
ダバはクワサンに対してこう答えた。
「俺はただ御前を助け出したいだけなんだ」
「私を・・・・・助ける!?」
「そうだ、思い出すんだ、オリビー」
そして呼び掛ける。
「俺と御前が一緒にいたあのヤーマンの時を覚えているだろう」
「そんなことは・・・・・・うっ!?」
クワサンは突如として両手で頭を押さえた。
「ど、どういうことなんだ、これは・・・・・・」
「オリビー」
ダバはさらにクワサンに問い掛ける。
「俺のことが。わからないっていうのか!?」
「私は御前なぞ・・・・・・!?」
しかしクワサンはここで何かを感じた。
「待て、この感触は」
「ダバ、若しかしたら」
「ああ。もうすぐで洗脳が解けるかも知れない」
彼は手応えを感じていた。
「オリビー、俺と一緒に来てくれ!お兄ちゃんと一緒に!」
「兄、だと・・・・・・!?」
「そうだ、そう呼んでくれていたじゃないか!だからずっと・・・・・・」
「私には兄なぞ・・・・・・!?」
そしてまた何かを感じた。
「ま、また」
「オリビー!」
ダバは先程より呼び声を強くさせた。
「俺と一緒に!」
「お・・・・・・兄・・・・・・ちゃん・・・・・・」
「そうだ、俺がお兄ちゃんだ。さあ、ここへ」
「そっちへ・・・・・・」
「待て、ダバ=マイロード!」
しかしそこにギャブレーのアシュラテンプルがやって来た。
「!?」
「ギャブレー!」
ギャブレーはダバに斬り掛かる。そしてダバはそれを受け止めた。
「貴様、一体どういうつもりだ!」
「何を言っている!」
「クワサン殿を苦しめるとは・・・・・・。天が許しても私が許さん!」
「俺はオリビーを苦しめてなんかいない!」
「嘘をつけ!」
ギャブレーはダバの話を聞こうとしない。
「現に今苦しめているではないか!」
「違う!苦しめているのはポセイダルだ!」
「何っ!?」
それを聞いたギャブレーの動きが止まった。
「貴様、今何と・・・・・・」
「よく見ろ!オリビーはポセイダルに洗脳されているんだ!御前にもわかるだろう!」
「それは・・・・・・本当のことなのか!?」
「そうよ、よく見て!」
「ゲッ、ミラリィ」
ギャブレーはリリスの声を聞いてギョッとした。
「な、何の用だ!?」
「オリビーをよく見て!貴方にもわかるでしょう!」
「クワサン殿を」
「オリビーはポセイダルの駒になっている!俺はそれを何とかしたいんだ!」
「何とかか」
「そうだ!だからそこをどけ!俺はオリビーを助けなきゃいけないんだ!」
「う、うう・・・・・・」
しかしクワサンはまだ頭を抱えて呻いている。それを見るととても戦えない状態であることがわかる。
「いかんな」
それを見て十三人衆の一人であるワザン=ルーンが呟いた。
「クワサン=オリビーを撤退させよ。このままでは崩壊してしまう」
「はっ」
部下達はそれに従いクワサンを撤退させる。だがダバはそれに追いすがろうとする。
「待て、オリビー!」
「ダバ、私は今からそれを確かめる!」
ギャブレーはその追いすがろうとするダバに対して言う。
「若しそれが嘘であったならば・・・・・・容赦はしない!」
そう言い残して彼も戦場を後にした。クワサンの撤退と共にポセイダル軍も総崩れになっていた。
「これはもう無理だな」
オービットから戻っていたマーグはヘルモーズの艦橋で戦局を見て言った。
「ここは下がらせよう」
そして全軍に撤退を指示する。こうしてバルマーの攻撃はとりあえずは終わったのであった。
「何か呆気無く帰ったわね、今回は」
「どうせまた来るわよ」
アムとレッシィは退くバルマー軍を見ながら話をしていた。
「すぐにね。あのギャブレーもいるし」
「あの食い逃げ男もいい加減しつこいね」
「ダバ・・・・・・」
ダバもそのバルマー軍を呆然と見るしかなかった。どうしようもなかった。
「オリビー、やはり駄目なのか」
ダバはクワサンを救えなかった己を責めていた。しかしそれでどうにもなるものではなかった。
ロンド=ベルはまずはオービットベースに入った。そして補給を受け次の戦いに備えることにした。
「まずはガイゾックの件、お疲れ様でした」
「はい」
皆を代表して大文字が大河の言葉を受けていた。
「ですが、またもや脅威が来ております」
「バルマーが」
「はい、一度は退けましたがまたすぐに来るでしょう。リクレイマーやギガノスも不穏な動きを見せているというのに」
「また大変なことになっております」
「だからこそ、貴方達の力が必要なのです」
「我々の力が」
「そうです、我々も力の限りバックアップします。この苦難を乗り切って頂きたい」
「わかりました。それでは」
「宜しくお願いします」
ロンド=ベルは暫くオービットに留まることになった。だがダバの心は休まってはいなかった。
「ダバは・・・・・・相変わらずかい?」
「うむ」
バーンはトッドの言葉に頷いた。
「部屋に篭もったままだ」
「やっぱりあのクワサンって娘のことが気になるんだな」
「こうした時私はどうしていいかわからぬ」
「おいおい、マジかよ」
「女性と交際したことがないのでな。どうにも」
「そういやそうだったな」
トッドはバーンのその言葉に頷いた。
「あんた、ずっと戦場にいたからな」
「戦場で会う女は同じ戦士だけだ。どうにも話にもならない」
「ショウの奴も鈍感だしな。ここは俺達の出る幕はないか」
「何言ってるのよ、あんた達二人共期待されているのよ」
「本当かい、それは」
二人はキーンの言葉に顔を向けた。
「今度の戦いも。頑張ってね」
「ちぇっ、そっちの方かよ」
「やはりな」
「ついでにジャガイモの皮剥きもね。頼んだわよ」
「へいへい」
「地上人は変わったものを食べるものだな」
「バーンさんよ、手を切らねえように気をつけてな」
「うむ」
「さもないとカレーが赤くなっちまうからな」
「それにしてもダバは深刻ね」
マーベルも彼を気遣っていた。
「このままじゃ。参ってしまうわ」
「だけど俺達に出来ることはない」
「ダバが自分で何とかするしかないのね」
「ああ、酷な様だがな」
ニーは暗い顔でこう述べた。
「それしかない」
「けれどダバなら大丈夫だよね」
チャムが半ば自分に納得させるようにして言った。
「ダバは強いから」
「そうね、彼は強いわ」
マーベルはその言葉に頷いた。
「だから。大丈夫だと思うけれど」
「次だな」
そしてショウが述べた。
「次で乗り越えなくちゃいけない。ダバは」
「次か」
「きついわね、本当に」
彼等にもダバは今はそっとすることだけしか出来なかった。自分達の無力さを感じていてもどうすることも出来なかった。
歯がゆかったがどうしようもない。やり切れない気持ちだった。
ギャブレーはその頃ヘルモーズの中にいた。そしてクワサンについて調べていた。
「若しダバの言ったことが真ならば」
ポセイダルに疑念を抱かずにはいられないだろう。そう思いながら艦内を密かに歩き回り調べていた。
そしてリョクレイが一人通信室に入るのを見た。それをこっそりとつける。そのまま部屋に潜り込みリョクレイの様子を伺うことにした。
「あの男がクワサン殿の監督をしている」
それを知っているからだった。部屋の隅に隠れリョクレイを覗き見ていた。
「ポセイダル様」
「リョクレイ=ロンか」
彼に応えてモニターに銀色の女が姿を現わした。
「クワサン=オリビーのことですが」
「如何した?」
「バイオセンサーに異常が見られます」
「バイオセンサーにか」
「はい。どうやらダバ=マイロードの言葉によりそれが薄れているようです」
「左様か」
「このままでは。戦力、そして監視役として使えなくなりますが」
「まだ戦えるか」
「はっ!?」
「まだ戦えるかと聞いているのだ」
(まさかとは思ったが)
ギャブレーはそれを聞きながら心の中で呟いた。
(ダバ=マイロードの言った通りだったとは)
「はい、まだ大丈夫ですが」
「左様か。ならばよい」
「宜しいのですか?」
「そうだ。マーグ司令にも伝えよ。ポセイダル軍はそろそろポセイダルに下がらせてもらうと」
「宇宙怪獣でしょうか」
「違う。別の存在が我々の銀河に来ようとしている」
「それは何者でしょうか」
「そこまではわからぬ。だがゲストやインスペクターのこともある」
「彼等も」
「今はポセイダルも迂闊な時ではない。そういうことだ」
「わかりました。ではこのことはネイ殿やワザン殿にも報告しておきます」
「頼むぞ」
「お任せあれ。それでは」
通信は切れた。リョクレイは部屋を後にしギャブレーだけがそこに残った。
「クワサン殿は・・・・・・駒だというのか」
先程の二人の話からそれを感じていた。
「その様なこと・・・・・・させぬ」
彼はこの時意を決した。これが彼の運命の分かれ目であった。戦いはまた別の局面を迎えようとしていた。それは何者かに導かれているかの様であった。
第九十五話完
2006・2・23
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