久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十八話 使い捨ての駒その二
「何か違うのよね」
「うん、何か」
また話す彼等だった。そしてだ。
中田を見た。見ればだ。
彼は対峙している壬本に対してだ。右手の剣を向けた。そしてこう言っていた。
「じゃあな」
「死ぬ覚悟はできたかな」
「御前本当にな」
「何かな」
「何でもかんでも軽く考えてな」
そしてだというのだ。
「馬鹿にしてるんだな」
「馬鹿にしてる?何をだっていうんだい?」
「他の人も何事もな」
世の中のあらゆるものをだ。そうしているというのだ。
そしてだ。中田はその彼にだ。こうも言った。
「だから簡単に何かを殺すとか言えるんだよ」
「君は僕の敵じゃないか」
中田の今の言葉にはだ。こう素っ気無く返した壬本だった。
「それならそれもね」
「当然だっていうんだな」
「そうだよ」
「俺を殺すか」
「僕を馬鹿にするのなら」
それならばだというのだ。
「そして邪魔なら」
「本当に他人はどうでもいいんだな」
「他人?」
「そうだよ。俺以外にもな」
中田でなくともだとだ。彼は壬本に言ったのである。
「そうした考えなんだな」
「僕を馬鹿にして。認めないのなら」
言葉は変わらない。見事なまでに。
「皆いらないよ」
「だろうな。御前はそういう奴だよ。じゃあな」
「じゃあって?」
「手加減はしないからな」
中田は覚悟を決めた目で壬本に告げた。
「死なせるつもりはないけれどな」
「君がそう思っていても僕は」
「わかってるさ、殺したいんだよな、俺を」
「君も僕を馬鹿にしたから」
「確かにしたさ」
そのことは否定しなかった。中田は己を偽りはしなかった。
「しかしな。御前そうなるまで何やってきた」
「何って?」
「何やって何言われた。皆にも随分注意されたよな」
「皆僕を認めなかったんだ」
「違うんだよ。皆の御前の出鱈目さに呆れながらも注意してたんだよ」
中田が話すのが真相だった。壬本に関して言えば。
「それで何とかしたかったんだよ」
「僕を」
「そうなんだよ」
そうだというのだ。中田はこの時己の過去、壬本に関することを思い出しながら。
そうしてだ。彼に話したのである。
「だから皆。親御さんも何とかしたくて何度も怒ったんだよ」
「僕は手駒じゃない」
またしてもだ。壬本は否定する言葉で返した。
「動くのは僕なんだ。だから」
「話は聞かないってか」
「動くのは僕なんだ」
まだ言うのだった。
「その僕に言うなんて。そして否定するなんて」
「何につけてもそうした考えだからなんだよ」
「こうした考えだから」
「そうだよ。だから君だって」
「殺すってんだな」
「邪魔なんだよ、皆」
目はさらに血走る。見苦しいまでに。
ページ上へ戻る