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戦国異伝

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第六十五話 飛騨からの使者その一


                第六十五話  飛騨からの使者
 信長のところにだ。飛騨から返事が来た。その返事をだ。
 彼は主の間で家臣達を並べて聞いた。そしてその返事はというと。
「ふむ、三木は下るか」
「はい、我が家の家臣に加えて頂きたいと」
「そう申されてきています」
「成程のう。わしが美濃を手中に収めてじゃな」
 そのせいだとだ。信長はすぐに察して述べた。
「すぐそこまできておるからのう、三木から見れば」
「このまま攻められて滅ぼされるよりはですか」
「従い民も家も守る」
「そのことを選んだというのですな」
「民は元々危害を加えるつもりはない」
 それは決してしないという信長だった。
「だが。織田に加わりたいか」
「はい、それでどうされますか」
「この申し出を受け入れられますか」
「どうされますか」
「戦をせずに国が手に入るならじゃ」
 信長は落ち着いた口調で家臣達の問いに答える。
「それに越したことはない」
「ではこの申し出をですか」
「受け入れられますか」
「無論じゃ」
 返事はこれであった。
「そうするとじゃ。飛騨には伝えるのじゃ」
「わかりました、それではすぐに」
「三木殿にもその様に」
「さて、それではじゃ」
 飛騨も手に入ることが決まったことを受けてだ。信長はだ。
 こうもだ。言うのだった。
「飛騨でも政をするか」
「はい、さすればですな」
「三木殿の返事があり次第」
「まずは道じゃ」
 そこからだというのだ。
「美濃から飛騨に道をひくぞ」
「あの飛騨にですか」
「道をですか」
 飛騨は山国だ。そこに道を敷くと聞いてだ。家臣達も思わず声をあげた。
 その彼等にだ。信長は悠然と話すのだった。
「無論じゃ。あの国もあのままではよくはない」
「他の国と同じく一つにつなげる為にですか」
「道をこの美濃からですか」
「敷かれますか」
「うむ、とはいっても人が通れる場所だけじゃ」
 流石にだ。人が通れない様な場所はだというのだった。
「普通にな。山奥は無理じゃな」
「はい、飛騨は険しい山があまりにも多い故」
「流石にそれはです」
「できませぬ」
「だからそうした山は仕方がない」
 それはどうしてもとだ。信長もわかっていた。
「じゃが。主な城までは道を敷くぞ」
「そして道を敷きですか」
「そのうえで」
「米やそういったものはあまり採れぬが木が多い」
 それならばだった。
「木を貰うとしよう」
「そうしてあの国も治める」
「そうされますか」
「他の国と同じくな」
 治める意志は変わらなかった。信長にとっては普遍のものである。
「そうするぞ」
「ではその様に」
「飛騨が手に入りましたら早速」
 こうしてだった。飛騨も信長の手中に納まった。こうして彼はまた一国治めることになったのだった。そうして飛騨に対する政をはじめることになってすぐにだった。
 その飛騨からだ。来客があった。岐阜に来たのだった。
 そのことをだ。信長は蜂須賀から聞いたのだった。丁度馬からの帰りだ。 
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