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戦国異伝

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第六十四話 焼きものその五


「好きではないからな」
「では真面目に」
「そこは御主と違う」
「ははは、それが勝三郎殿らしい」
 慶次はその池田にも笑って述べた。
「では傾きと真面目で」
「共に茶を飲もうというか」
「それで如何であろう」
「面白いな。それではな」
「頃合いを見てのう」
 こう話してだった。彼等はだ。 
 笑顔で話していた。その彼等を見て信長もだ。
 自然と笑顔になりだ。こう二人に言った。
「それぞれそれでよい」
「わしが真面目で、ですか」
「それがしが傾きですか」
「勝三郎は幼い頃から常に真面目じゃ」
 ただし口煩くはない。そこは平手や柴田とは違う。
「ひたむきに仕事をするそれがよいのじゃ」
「そしてわしはですか」
「傾いておらん御主は確かに考えられん」
 いささか真顔もその笑顔に含ませて話す信長だった。
「茶にしてもな」
「ではこれからも」
「そうじゃ。己の持ち味を生かしていくのじゃ」
 そうした話をしてだった。信長は池田、慶次達と共に岐阜に戻った。するとその彼にだ。滝川がだ。駆け込む様にして来てこう言ってきた。
「大変です、都で遂にです」
「公方様に何かあったのか」
「いえ、三好です」
 将軍ではなくだ。その家にだというのだ。
「ことがありました」
「左様か。三好長慶が遂にか」
「確かに死んだと」
「これまで死んだとか今にも死ぬとか言われていたが」
「今度は確実にです」
 死んだというのだ。その三好長慶がだ。
「死にました」
「ではじゃ」
 彼が死んだことを聞いてだ。信長は言った。
「これで三好は重しが消えた」
「三人衆と松永、それぞれを抑える重しがですな」
「そうじゃ。確かに松永久秀にかなり操られておった」
 晩年の三好長慶についてそのことは否定できなかった。とてもだ。
「しかしそれでもじゃ。三好家の主としてじゃ」
「家の重しにはなっていましたか」
「その通りじゃ。しかしその重しが消えた」
 それによりどうなるかというのだ。
「そうなればじゃ。わかるな」
「三人衆と松永が」
「そしてじゃ」
 さらにだというのだ。
「公方様に対してもじゃ」
「攻めてきますか」
「うむ、来るぞ」
 信長は険しい顔になっていた。そうしてだ。
 その脳裏にだ。都が戦乱により炎に包まれる景色を想像してだ。こう滝川に言うのだった。
「公方様に文を送ったのは正解じゃったな」
「そうですな。では返信が来次第」
「うむ、上洛するぞ」
 まさにそうするとだ。信長は言った。 
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