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久遠の神話

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第一話 水の少年その十五


 上城は朝食を食べ終えて。それからだった。
「じゃあ。今からね」
「歯は磨いていきなさいよ」
「うん、わかってるよ」
 こう母に応えながら席を立ち食器を洗い場に置いてだった。
 そのうえで歯を磨きに行きだった。
「今からね」
「行ってらっしゃい」
「車に気をつけてな」
 両親がこう言って我が子を送る。そしてだ。
 母は夫である相手にもだ。こう告げた。
「あなたもね」
「おっと、そうだな」
「そうよ。食べて歯を磨いてね」
「それで会社に行かないとな」
「そう。それからね」
「歯は磨かないとな」
「そう、まずは歯が大事よ」
 健康管理はそこからだというのだ。
「だからね」
「食べたら絶対に歯を磨くのか」
「食べた後が一番汚いから」
 それを磨いて。それからだというのだ。
「お口の中は奇麗にしないとね」
「そうだな。けれどな」
「けれど?」
「磨き過ぎても駄目だからな」
 それもだとだ。彼は自分の妻に笑いながら話した。
「そこも気をつけないとな」
「勿論よ。それもね」
 それはわかっているというのだ。
「けれどね」
「奇麗にするのは」
「それは忘れないことよ」
 このことはだ。くれぐれもというのだ。
「わかってくれるかしら」
「わかってるさ。じゃあな」
 こうした話をしてであった。
 彼は朝の団欒から学校に向かうのだった。彼の運命はまだ動いてはいなかった。それを知っている者も。今はここにはいなかった。


第一話   完


                2011・7・4 
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