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久遠の神話

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第二十七話 愚劣な駒その一


                      久遠の神話
                  第二十七話  愚劣な駒
 工藤と高橋は聡美と会っていた。彼女の方から二人のところに来たのを好都合としてだ。そのうえで自衛隊の地方連絡部の事務所において壬本のことを話したのだ。
 応接用のソファーに向かい合って座り低いテーブルを挟んでいる。そうしながら工藤と高橋は日本の緑のお茶を、聡美はコーヒーを飲んでいる。その中でだ。
 二人の話を聞いてだ。聡美はこう言ったのだった。
「闇、ですか」
「そうだ。闇の力を持つ剣士はだ」
「彼だと思うけれど」
「いえ、闇の剣士はです」
 聡美は目を二度か三度しばたかせてからだ。二人に答えた。
「違うと思います」
「違うのか」
「その彼じゃないんだね」
「小柄で背中が曲がった猿の様な人ですよね」
「そうだ、外見はそんな感じだ」
「そして性格は自己中心的で恨みっぽくて臆病で卑怯かな」
 高橋は会った時に感じた壬本の性格についても聡美に話した。
「歳は二十位でね」
「二十歳ですか」
「おおよそね。そうした男だけれどね」
「やはり。違うと思います」 
 またこう答える聡美だった。
「そうした方ではないと」
「では一体何故剣を持っていた」
「真っ黒い大きな日本刀だったよ」
「それは知っていますが」
 闇の力を司る刀、それはわかるというのだ。
 だがそれでもだ。壬本についてはだ。聡美は首を傾げさせて二人に答えた。
「ですが。闇の剣士はです」
「違うか。では何故だ」
「剣とそこにある力は剣士にしか扱えません」
 聡美はこのことはだ。間違いないというのだ。
「絶対にです」
「しかし何故だ。彼は剣を持っていた」
「そして俺達の前に現れたのかな」
「わかりません。ですがお話を聞く限りでは力を使えていません」
 聡美は二人の話からだ。壬本は剣士だと確信していた。そのうえでの言葉だった。
「剣士なら。最初の段階でより確かに力を使えていますから」
「そうか。ではだ」
「何故そんなものを手にしているかは」
「わからないです」
 首を傾げるばかりだった。聡美も。
「私の知っている限りではです」
「剣士だけが剣を持てる」
「そして力を使えるんだね」
「そうです。本当に剣士でない人が剣を持ってもです」
 どうなるかというのだ。聡美は再び話した。
「手品程度の力でしかないです」
「戦えるものではない」
「はい、とても」
 こう工藤にも話すのだった。
「その程度でしかないです」
「では本物の闇の剣士が何故彼に剣を貸しているかは」
「真意がわかりません。それにです」
「それに?」
「その闇の剣士が誰なのか」
 このことについてもだ。聡美は工藤と高橋に話してきた。
「このことも気になります」
「では君も七人目の。その闇の剣士については」
「知らないんだね」
「はい、申し訳ありませんが」 
 曇った目でだ。聡美は答えた。
「そうなのです」
「そうか。ではだ」
「今は仕方ないね」
「すいません。力になれず」
「いや、いい」
「君の言うことはわかったから」
 それでいいとだ。静かに返す二人だった。 
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