久遠の神話

「それだけだな」
「ですよね。こんなことってありますかね」
「俺達にはない」
「そして上城君や中田君も」
「他の二人もそうみたいだな」
　広瀬に高代、彼等もだとだ。工藤は察して述べた。
「どうやらな」
「ですよね。俺達六人に。声とあの娘はいいタイミングで教えてくれる感じですが」
「声はともかくあの娘は。そうだな」
　聡美についてだ。工藤はまた言った。
「本当にいいタイミングでな」
「出て来てくれますよね」
「そして俺達に教えてくれるな」
「本当にいいタイミングで出て来ますね」
　高橋はこう言いだ。そしてだ。
　工藤も彼の言葉に頷く。しかしだ。
　二人はここでは気付かなかった。聡美が何故いつもいいタイミングで出て来るのかをだ。
　二人は壬本のことについて考えるあまりだ。こう言ったのである。
「あの彼の前には出ていないか」
「本当にそうなっている感じですね」
「しかし彼が剣士ならだ」
「あの娘が出て来なくとも。声が」
　出て来る筈だとだ。二人で言ってだった。
　そのうえでだ。考えながらだ。工藤は高橋にこう言ったのだった。
「ではだ。彼が剣士でないのならだ」
「何故あの闇の力を手に入れたかですね」
「手に入れたのではなく。この場合は」
「借りているか」
「借りている。では」
「闇を使う。その剣士にか」
「力を与えられているのでしょうか」
　聡美のことには気付かなかった。しかしだ。
　壬本のことについては深く考えてだ。そうしてだった。
　深く考えそれからだ。高橋がこんなことを言ったのだった。
「本物の闇を使う剣士に」
「では彼は」
「闇の剣士の何らかの意図で手駒になっているのでしょうか」
「その可能性はあるな」
「ですね。ならその剣士が誰かですか」
「それが問題になる。闇の剣士か」
　次第にだ。工藤はその闇の剣の使い手について考えていった。そしてだ。
　それからだ。彼はまた言ったのだった。
「人を手駒に使うか」
「あまりいい感じの奴じゃない可能性がありますね」
「ああ、あるな」
「そうした輩も出て来る可能性がありましたが」
「それが闇の剣士か」
「ですかね。ただ」
　ただどうなるか。ここでだ。高橋は壬本のことを振り返りだ。
　そしてだ、こう言ったのである。
「彼は。そう利用されても」
「仕方がないな」
「そうだな。どうしようもない人間だからな」
「この世にいても。どうしようもない様な人間ですね」
「あれではどうしようもない」
　壬本についてはだ。どうしてもだ。二人はこう言うしかなかった。
　そしてそのうえでだ。工藤は壬本をこう評価した。
「彼はどのみち破滅する。完全にな」
「自滅しますね、あれは」
「するな。大変なことをしてな」
「もうとっくにしてるみたいですけれどね」
「では一度破滅しているか」
　工藤は思慮している目で述べた。
「しかしそれでもか」
「本人は気付いていないだけですね」
「破滅しても気付かないならだ」
　もうそれはだ。どうかというのだ。
「真の意味での愚か者だな」
「ですね。彼はまさしくそうした人間ですね」
「若しだ。闇の剣士が彼に剣を貸しているならだ」
「それはやっぱり」
「手駒だ」
　その為にだとだ。工藤は看破して言った。