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久遠の神話

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第二十六話 壬本という駒その五


 こうして二人でこの最高の組み合わせを楽しんでからだ。それからだった。
 店を出て二人で進んでいた。その前にだ。
 猿の様な顔に背中の曲がった小さな男が来た。その男はだ。
 二人に対してだ。こう言ってきたのだった。
「剣士ですね」
「またいきなりだな」
 工藤は男のその言葉を受けて呟いた。
「俺達をそう呼んできたということは君は」
「はい、剣士です」
 その通りだとだ。男は答えた。そのうえでだ。
 その手に黒い巨大な日本刀を出してだ。それからだ。
 こうだ。二人に名乗ったのだった。
「壬本調作です」
「壬本君というのか」
「はい、覚える必要はないです」
「何故だ、それは」
「お二人はここで死ぬからです」
 それでだとだ。壬本はその黒い日本刀を右手に持った。それを見てだ。
 高橋は眉をぴくりと動かした。そのうえでだ。工藤にそっと囁いたのだった。
「彼はどうやら」
「そうだな」
「はい、間違いないですね」
 こう囁いたのである。
「どうしますか。それで」
「剣士は剣士だからな」
 壬本を見ながらだ。工藤は答えた。
「俺が闘う」
「そうされますか」
「そうする。君は今回は休んでいてくれ」
「そうしていいですか」
「ああ。ただ、だ」
「彼はどうやら」
 壬本を見ながらだ。高橋は再び工藤に囁いたのだった。
「あまりよくない人間ですね」
「何というか。目がな」
「暗いですね。しかも」
「ああ。あまりいい人生を送っていないな」
「しかもそれが自分に責任があるとは思わないタイプですね」
 壬本の目からだ。高橋は見た。無論工藤も。
「こうしたタイプはかなり」
「何を言っても無駄だしな」
「ええ。言っても絶対にわからないですね」
「なら、だ」
 どうするか。工藤は。
 己の右手に己の剣を出してだ。それから言ったのだった。
「仕方がない」
「実力でやるしかないですね」
「闘えなくなればそれでいい」
 命までは取らない。そういうことだった。
「それでいく」
「では。任せました」
 高橋は微笑んで工藤に述べた。こうしてだった。
 工藤と壬本は対峙した。その中でだ。
 壬本はその巨大な黒い日本刀を構えながらだ。工藤に言ったのである。
「僕が生き残れば」
「剣士の戦いは既に知っているか」
「望むものは何でも手に入る」
「その通りだ。では君が戦う理由はそれか」
「これまでのものを取り戻すんだ」
 その剣を手にだ。壬本は血走った目で言った。
「あいつ等にも。それで」
「恨みもあるか」
「僕を馬鹿にして。追い出したあいつ等を」
「何があったのかは知らない」
 工藤は聞くつもりもなかった。そもそも。そして彼との話をしながらそのうえでだ。己の剣を構えてそのうえでだ。その壬本に対して言ったのである。
「しかし君はだ」
「僕は」
「御世辞にもあまりいい人間じゃないな」
 壬本のその本質をだ。見抜いた上での言葉だった。 
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