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久遠の神話

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第二十五話 使い捨ての駒その十二


「おそらくはな」
「そうですね。じゃあ一気に首相になることも」
「念頭に置いているな。この男が若し剣士なら」
 その場合もだ。工藤は考えた。今度は剣士としての考えからだった。
「かなり危険な相手になるな」
「権力志向故にですね」
「権力志向の持ち主は有能であればある程だ」
 それならばだ。どうなるかというのだ。
「その行動は時として手段を選ばなくなる」
「ですね。歴史の教科書とか見ていたら」
「権力の座に就くには他者と争い蹴落とすこともある」
「それが常ではないにしても」
「そうしたことは非常に多くなる。普通の社会よりもだ」
 そうなるからだこそだというのだ。
「そしてその為の力を得られるとすれば」
「それこそですか」
「俺達にも牙を剥きだ」
 そしてだった。その牙で。
「何としても倒そうとしてくる」
「ううん。一番危険な剣士になりますね」
「少なくともこれまでの剣士とは全く違うな」
「広瀬君とか。あと学校の先生ですね」
「高代先生だな。八条学園の」
「あの二人も問題ですけれどね」
「しかしこの男の様な奴が剣士なら。その二人の比ではない」
 広瀬や高代、彼等より遥かにだというのだ。
 このことを高橋に話してだ。工藤はだ。
 高橋に顔を向けてだ。その鋭い目のままで言った。
「その時は。かなり辛い戦いになるだろうな」
「ですね。そういう人間が相手ですと」
「辛い。しかし仕事だからな」
「その時は戦わないといけないですね」
「例えどんな相手でも戦いを止めないといけない」
 これが二人が政府から言われていることだ。尚その政府が今の与党なので事情はいささか以上に複雑だ。だが二人はこのことは今は割り切っていた。
 そのうえでだ。こう言ったのだった。
「二人で止めよう」
「はい、絶対に」
 高橋も工藤の言葉に頷く。そしてだ。
 それからだ。二人である場所に向かった。そこは。
「喫茶店に行くか」
「ですね。コーヒーでも飲みますか」
「コーヒーならだ」
「マジックですか?」
「あの店にするか」
 その店でだ。飲もうかというのだ。
「元々は紅茶の店みたいだがな」
「内装はイギリス的ですからね」
「イギリスの飲み食いするもので数少ない美味いものだ」
 工藤は紅茶をこう褒めた。
「後はともかくとしてな」
「工藤さんイギリスに行かれたことあるんですか」
「高校の時に家族の旅行でな。懸賞に当たってな」
「それは運がいいですね」
「食い物以外では運がよかった」
「つまり食い物は」
「あんな食い物のまずい国はない」
 言い切った。何時よりも強くはっきりと。
「どの店も悪い意味で最高だった」
「つまり最低だったんですね」
「最低という言葉すら生ぬるいな」
「そこまでだったんですか」
「それがイギリスだった」
 イギリスの食い物だったというのだ。
「調味料は塩と酢しかない」
「小学校の家庭科の授業以下ですね」
「小学生に謝る必要があるな、今の言葉は」
「ですから以下と」
「ならいいが。とにかく酷かった」
「塩と酢しかないって」
 高橋もこのことには唖然とする他なかった。それでだ。 
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