久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十五話 使い捨ての駒その九
「あの政党はマスコミに甘やかされていただけだ」
「そして正体が社会党である今の与党も」
「同じだ。人も組織も甘やかされてはだ」
「堕落しますね」
「腐敗する」
今の与党をだ。また評したのである。
「あの様にだ」
「労働組合ですか」
「私の企業の組合だが」
「おかしな組合はいませんね」
「そうした輩は危険だからな」
「そうですね。組合こそが危険です」
「労働組合は他の組織に比べて腐敗しやすい」
男は組合をこう看破したのだった。
「だからこそだ」
「おかしな組合は放ってはおけませんか」
「潰すしかない。組合の存在自体は経営者から見ても非常に有益だが」
だがそれでもだというのだ。おかしな組合の存在はだ。
「だが。その状況による」
「そういうことですね。では」
「選挙は野党から出る」
前の与党、そこからだというのだ。
「今の与党は惨敗する。そしてだ」
「そして、ですね」
「その失政と愚行、腐敗を糾弾されていく」
「やはりそうなりますか」
「そうならない筈がない。それに私はそもそも社会主義が嫌いだ」
「では旦那様のお好きなものは」
「競争だ。力こそが正義なのだから」
この論理を出しての言葉だった。
「競争があってこそなのだからな」
「社会主義は競争を否定していますね」
「それでいて裏で足の引っ張り合いをする」
「だからですか」
「私はあの思想を否定する。そして」
「剣士としてもですね」
「全てを手に入れる。最後に生き残るのは私だ」
確固たる自信と共にだ。男は言い切った。
「そしてその為にだ」
「先程の男の様な者もですね」
「手駒として使う。所詮は使い捨てだ」
「そうしていい輩ですね」
「ゴミは使い捨てにするしか使い道がない」
先程の猿の如き男をだ。ゴミとさえ評したのだった。
「ではあの捨て駒を見ていよう」
「果たして剣が剣士以外にも使えるのかどうか」
「使えるのならあの男の他にも手駒として使う」
「しかしそうでなければ」
「私自身が戦う。それだけだ」
「では」
そうした話をしたのだった。男は己の執事とだ。そしてその話をしてからだ。男は席から立ち上がりそのうえで部屋から消えてだ。執事もそれに続いた。
工藤は高橋と共にだ。地方連絡部の事務所から出てだ。町を歩いていた。
その中で一枚のポスターを見てだ。こう言うのだった。
「この人は確か」
「ええ、今度選挙に出る」
「権藤とか言ったな」
「はい、権藤竜司です」
その鼻が高く日本人離れした彫の深い顔を見てだ。高橋は工藤に応えた。
見ればその権藤の顔はにこりもしていない。そしてだ。
その顔を見てだ。高橋は言うのだった。
「男前ですけれどね」
「それでもだな」
「無愛想な感じですね」
「傲慢と言うべきか」
工藤はその権藤のポスターからだ。それを感じ取っていた。
「この男はな」
「そうですね。謙虚とかありませんね」
「選挙ポスターだがな」
それでもだとだ。工藤は言っていく。
「この傲慢さで有権者受けするのか」
「無理じゃないですか?」
「どうだろうな。それは」
「そこはわかりませんか」
「要点は政策だ」
それだというのだ。
ページ上へ戻る