久遠の神話
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第二十四話 七人目の影その十四
「で、バイト先でチンピラ共と仲良くなってそのチンピラ共にたまたま聞いた店の秘密を話してな」
「秘密?」
「まあ詳しいことは知らないけれど店の人間が絶対に言っちゃ駄目なことをチンピラ共に言ってそれを恐喝のネタにしちまったんだよ」
「それってまさか」
「店の女の子が。確か」
詳しくは知らないまでもだ。中田は知ってるだけのことをだ。二人に話しだした。
「自分の学校の先生と付き合ってるとかな。それでその女の子チンピラに強請られて大変なことになったんだよ」
「あの。そんなのチンピラに教えたんですか」
「で、店長がそれ知って怒り狂ってな」
「そいつに問い詰めたんですね」
「そうしたら人として許せないことだからチンピラ共に教えたって言ったんだよ」
その輩はそう答えたというのだ。
「これを背信行為と呼ぶなら呼べとまでタンカ切ってな」
「いや、それはタンカじゃないですか」
「どう聞いても」
「だろ?それで店長が動き回って女の子を守ってチンピラ共を叩きのめして黙らせて」
正義感の強い店長だったらしい。どうやら。
「店長がたまたま元族のヘッドだったから何とかなったんだけれどな」
「で、そいつはどうなったんですか?」
「その無責任男は」
「店長に二度と足腰立たないまでぶちのめされてこれまでやったことを全部親に言われてな」
それでだというのだ。
「バイト首になって家も追い出されて。今はどうしてるかな」
「破滅したんですね、完全に」
「そうなったんですね」
「学校も辞めたよ」
その総スカンを受けた場所からもだというのだ。
「自主退学って形だけれどな」
「で、いなくなったんですか」
「そうなって」
「そうだよ。まあこんな馬鹿は滅多にいないさ」
中田は乾いた笑みで話した。
「常識がないにも程があるさ」
「ですね。本当に」
「そんな人いるんですね」
「壬本張作とか言ったか?」
その名前も思い出して話すのだった。
「いやあ、あんな馬鹿はいないな」
「壬本ですか」
「そうさ。会ったら気をつけてくれよ」
中田は今はくれぐれもといった口調だった。
「本当にどうしようもない奴だからな」
「全く反省しないからですか」
「反省しない奴は進歩しないんだよ」
そうした人間を知っているからこその言葉だった。
「というか反省するだけの知能がないとな」
「知能ですか」
「ああ、それがないとな」
どうなるかというのがだ。中田が今言いたいことだった。
「そいつみたいになってな」
「破滅するんですね」
「そういう奴って破滅しても気付かないんだよ」
「そうなってもなんですか」
「ああ。確かにそいつバイト首になって家を追い出されて学校も辞めたけれどな」
「それでもですか」
「反省しないからな」
そうしてだ。社会的に完全に破滅してもだというのだ。
「何も気付かないんだよ。自分が悪いって思わないんだよ」
「ある意味凄い人ですね」
樹里は話を聞いていってあらためて呆れた顔になった。そしてそのうえでだ。その表情以上に呆れた色の声でだ。こう中田に対して言ったのだった。
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