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久遠の神話

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第二十四話 七人目の影その十三


「自分のことしか考えられないで適当な理由を言えば許されると思うからな」
「世の中って自分一人じゃないからですね」
「悩みってのは自分が深刻に思っててもな」
 だがそれでもだというのだ。
「他人にとってはそうじゃない場合が多いんだよ」
「自分だけってことですか」
「他人は違うんだよ」
 このポイントがだ。大事だというのだ。
「悩んでないんだよ。だからな」
「自分の悩みで、ですね」
「他人に迷惑をかけるのは駄目なんだよな」
「それが世の中ですね」
「そう、わかってない馬鹿もいるんだよな」
 困った顔になってだ。中田は上城達に話した。
「自分のことで悩んでて。バイトを辞めるかどうかって悩んでてな」
「それで何かしたんですか、その人」
「学校の大事な行事の責任者だったんだけれどな」
 その仕事をだというのだ。
「完全にすっぽかしたんだよ」
「文化祭か何かのですか?」
「ああ、文化祭の委員だったんだよ」
 それになっていたというのだ。その人物は。
「自分がやるって言ってな。それになってな」
「で、仕事すっぽかしたんですか」
「最後の最後までな。悩んでいたって言って」
 仕事をしなかったというのだ。
「はじまりの一日でクラスの進行を滅茶苦茶にしてくれて再起不能みたいにしてくれてな」
「それってまさか」
「ああ、バイト辞めるってのも嘘だったんだよ」
 そもそもそれも嘘だったというのだ。
「バイト続けてたよ。その滅茶苦茶にしたのから逃げたんだよ」
「随分無責任ですね」
「だろ?例え実際に悩んでてもな」
「それを理由にしてやるべきことをしないのは」
「そう。人間としてやっちゃいけないんだよ」
 こう二人にだ。中田は話す。
「絶対にな」
「ですよね。そうしたことは」
「そいつはそれでクラスから総スカン喰らったよ」
「文化祭の仕事は」
「最後の最後で皆必死にやって何とかしたよ」
 その無責任な責任者を持ちながらもだというのだ。
「いや、本当に大変だったよ」
「そうみたいですね」
「仕事が大変でもな、クラスのな」
「その人はですか」
「他人事だったな。それが余計に皆怒らせてな」
 殺意さえだ。中田は見せて語っている。
「もうそっからクラス全員に無視される様になったよ。本人は自覚なかったし自分が悪いことしたとも全く思っちゃいなかったんだけれどな」
「頭おかしかったんですか?その人」
 樹里は中田のその話にだ。眉を顰めさせて問い返した。
「そこまでして何とも思わなかったんですか」
「ああ、全然な」
「それって有り得ないですから」
「それまでは誠実って思われてたんだよ」
 その無責任な輩もだ。そうだったというのだ。
「穏やかでな。けれど実はな」
「何もできなくて無責任だったんですか」
「責任把握能力もなかったな」
 そこまで至った輩だったというのだ。
「あんまり酷いんで担任の先生も俺達も怒鳴ったよ」
「それでもですか」
「自分は手駒ではない、動くのは自分だとか言ってな」
 中田はさらに忌々しげに話す。
「で、罵られたとか被害者意識丸出しで言ってたな」
「救いようがないですね」
「そうだろ。だからもう誰からも相手にされなくなったんだよ」
 当然の帰結としてだ。そうなったというのだ。 
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