戦国異伝
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第六十一話 稲葉山入城その六
「それがしもです」
「新五郎もか」
「はい、禍根は取り除いておきましょう」
「他の者はどう思うか」
ここでだった。さらにだった。
「やはり捕らえ処刑すべきか」
「処刑せずとも出家させれよいかと」
ここで温和な案を述べたのは佐久間大学だった。
「それはどうでしょうか」
「出家か」
「そうさせれば処刑したも同じですし」
俗世を離れるからだ。それでだというのだ。
「ですから」
「そうじゃな。やはり捕らえる」
信長も遂に決断を下した。そして大学の方を見て述べたのである。
「御主の考えでいく」
「有り難うございます」
「やはり禍根は放ってはおけぬ」
信長はさらに言う。
「それはわしだけの問題ではないからな」
「織田家全体につながります」
ここで言ったのは中川である。
「ですから」
「御主等のことでもあるしのう」
それでは尚更だった。結果として信長は結論を下したのだった。
こうして稲葉山城を陥落させた折には龍興を捕らえ出家させることにした。そのうえで稲葉山城に迫る。
その五万を優に超えるまでになった大軍で城を完全に取り囲む。そうしてだった。
信長は稲葉山のその堅城を見上げてだ。家臣達に告げた。
「ではこれよりじゃ」
「はい、では今より」
「城を攻めますか」
「久助」
「はっ」
まずは滝川だった。呼ばれた彼も応える。
「忍の者を用いそのうえでじゃ」
「城をですな」
「そうじゃ。まずは中を壊して回れ」
そうしろというのだ。
「よいな」
「わかりました。それでは」
「何をしても攻め落とせぬ城はない」
信長はこの考えを述べていく。彼にとって絶対のものはないのだ。
「そうせよ」
「では早速」
「あと小六もじゃ」
蜂須賀にも声をかけた。
「御主も同じことをせよ」
「ではその様に」
蜂須賀は自信のある笑みで応える。
「今より」
「さて、最早稲葉山には兵はもうおらん」
そうだというのだ。稲葉山の城にはだ」
「しかも士気も相当落ちておるわ」
「かなり近寄っていますが反撃はありませぬ」
島田が言う。
「弓矢一本来ません」
「そうじゃな。それだけ兵のやる気が落ちておるな」
信長もだ。島田の言葉を受けたうえで述べる。
「では余計にやりやすい」
「忍の者を送り込みそのうえで」
「まずは中より壊し」
「攻める」
こう告げてだった。滝川と蜂須賀に命じてだった。
二人は自らも城の中に忍び込みだ。城のあちこちを壊していく。特に門もだ。
それを受けてだ。織田の兵は城に雪崩れ込む。その彼等を見てだ。
僅かに残った斉藤の者達もだ。次々に降っていく。信長もだ。
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